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韓国保守野党「国民の力」は極右化で自滅するのか?【寄稿】

登録:2026-03-19 01:22 修正:2026-03-19 12:17
シン・ジヌク|中央大学社会学科教授
国民の力のチャン・ドンヒョク代表が今年1月17日、ソウル汝矣島の党本部で行われた緊急記者会見で、党の刷新案などを発表している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 近ごろの韓国政治では、第一野党のさらなる極右化、支持率の低下による少数派化という2つの過程が同時に進んでいる。このすう勢が極右政党の自滅へと帰結するのか、それとも脅威となる反民主政党が力を発揮し続けるのかが、韓国の民主主義と国の未来にとって重大な変数となるだろう。

 第一野党「国民の力」は1987年以降の40年の歴史で、民主主義と憲政に最も大きな脅威となってきた政党だ。この党の政治家たちは戒厳解除や国会による弾劾訴追を組織的に拒否しただけでなく、裁判所や憲法裁判所などの憲法機関に対する暴力すら公然と扇動した。憲法裁判所による弾劾決定後も戒厳擁護、内乱否定、弾劾不服、不正選挙陰謀論の立場に固執してきた。

 党内の権力構造においても、ますます純度の高い極右政党になってきている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)弾劾後の過程をみよ。党の大統領候補を選ぶ予備選では、チョン・グァンフン牧師の同志キム・ムンス(前雇用労働部長官)が、戒厳反対、弾劾賛成の立場をとるハン・ドンフン(前代表)を破った。大統領選後の党代表選挙ではキム・ムンスすらも、ハン・ドンフン派とユン・アゲインをいずれも受け入れるとの姿勢を示した結果、超強硬派のチャン・ドンヒョクに敗れた。チョン・ハンギル、コ・ソングクら極右として知られる人物らが次々と入党し、ハン・ドンフン派は大勢除名された。

 このように極端化した第一野党をどうすべきか。提起され続けている代案は解散論だ。民主主義を守るには、親衛クーデターのような実体的脅威に同調する政治団体は禁じられて当然だというのだ。2014年の統合進歩党の解散の例と比較すれば、国民の力のこのかんの内乱同調と極端な扇動は、恐るべき脅威であることは明らかだ。

 しかし、いくつかの難点がある。政党は民主主義の要だが、「国民の力」は有権者の20~30%の支持を得ており、先の大統領選挙では同党の候補が41%の票を得ている。いずれにせよ、同党にはかなりの正当性の基盤があるのであり、それを憲法的権威で否定するのは容易ではない。また、これほどの支持層を持つ政党を禁止して地下化、暴力化されると、極度に政治が不安定化する可能性がある。逆に解散請求が却下されれば正当性が強まり、支持率が上昇する可能性がある。

 このような複雑さがあるため、1952年と1956年に極右党と共産党を解散させたドイツでも、その後の解散例はない。最近では、憲法擁護庁が第一野党「ドイツのための選択肢」を明らかな反憲法的極右政党と判断したにもかかわらず、政党解散請求については今も論戦中だ。ここでのジレンマは、極右政党のこのようなかなり高い支持率が党解散を難しくしている主な理由であると同時に、まさにその「かなりの高支持率」こそがその政党を真に危険にする要因でもあるということだ。

 このジレンマから抜け出す解決策は結局のところ、極右政治の支持基盤を弱めることだ。社会の基本的価値に対する攻撃に法的、道徳的に強く対応することで、権力を握ることが不可能な勢力へと彼らを縮小、弱体化させるのだ。ドイツ語の「防火壁(Brandmauer)」、フランス語の「防疫線(cordon sanitaire)」、英語の「レッドライン(red line)」のような隠喩は、いずれもそのような抑制と封鎖を含意する言葉だ。

 韓国では12・3以降、幸いにも憲法裁判所の決定、政権交代、裁判所での裁判、李在明(イ・ジェミョン)政権による国政の安定へと至る過程で、極右政治の拡大抑止がある程度実現している。韓国ギャラップの最新の調査では、李在明大統領の職務遂行に対する支持率は66%で就任後最高を記録しており、政党支持率も共に民主党が47%、国民の力が20%と広がっている。全国指標調査では、国民の力の支持率は17%にまで落ちており、大邱(テグ)・慶尚北道でも民主党に対して劣勢だった。

 国民の力のこの危機はどこへ向かうのだろうか。最善のシナリオは保守の刷新であろう。民主的規範と多くの国民の常識に忠実な保守勢力が党の主導権を握り、党を変革する道だ。そうなれば民主党にも健全な競争者が生まれるし、相互協力とけん制の関係が発展する可能性もある。しかし、そのような変化のための現実的な基盤はあるのだろうか。例えば、先日、国民の力の国会議員が戒厳について謝罪し、尹錫悦復帰への反対、憲法の価値の尊重を誓ったことは、変化の始まりと言えるのだろうか。そうは思えない。

 今の国民の力の問題は、外に示す路線ではなく、党を満たしている勢力だ。党の中心には保守政治家ではなく利権集団、ニューレフトのイデオローグ、極右ユーチューバー、ユン・アゲインの扇動者、内乱の加担者者たちがいる。さらに、そのような党の指導部の扇動政治と党員や支持層の極右志向が互いに強め合うメカニズムができあがっている。党員を陰謀論や憎悪扇動で汚染したのは政治家たちであり、そうした政治家を指導部に選んだのは党員だ。

 このように極右に握られ、閉鎖回路に閉じ込められた国民の力は、自滅の道を歩むのだろうか。そう断言することはできない。極右化は孤立に帰結するという通念は誤りだ。多くの人は、極右でなくても様々な動機から極右政治を支持しうる。国民の力がその反民主的な本質を変えずに、これから先、李在明政権や民主党の失策と慢心の隙をついて勢力を回復する可能性はいくらでもある。トランプ政権による関税圧力や派兵要求、韓国国内の極右勢力に対する支持など、国際環境も大きな変数だ。

 朴槿恵(パク・クネ)弾劾後を振り返り、教訓を得るべきだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の職務遂行に対する支持率は就任2年目までは75%にのぼり、民主党の支持率も50%を超えていた。自由韓国党は10%に過ぎなかった。誰もが保守の壊滅を語った。しかし、政権3年目に入って差は縮まり、4年目には逆転して尹錫悦政権へと至った。国民の力は極右と絶縁したから大統領選に勝ったのか。そうではない。彼らは不動産の暴騰、雇用難といった社会問題に対する不満を極端化するとともに、女性ヘイト、世代ヘイト、進歩ヘイトなどのあらゆるヘイト政治を総動員して政権を握った。弾劾の川を渡るのに長い時間はかからなかった。

 だから、短期的な支持率を見て、まるで歴史の終えんでも訪れたかのように慢心してはならない。常に緊張感を持ち、最大多数の民主同盟を守らなければならない。極右政治を抑制する最良の方法は、彼らがいかに無能なうそつき扇動者であるかを照らし出して見せる有能な民主政治だ。世界のどこであろうと、極右政権は彼らの邪悪さと民主政治の無能さの合作だ。経済、福祉、治安、安全保障などの社会の核心課題を解決する意志と力量を民主政治が確立した時にこそ、人々の不安と不満を糧とする極右政治は力を失うのだ。

シン・ジヌク|中央大学社会学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1249823.html韓国語原文入力:2026-03-18 05:00
訳D.K

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