第1四半期の韓国の実質国内総生産(GDP)は、昨年の第1四半期に比べて3.4%(前期比年率では5.3%)も増えた。しかし、統計庁の家計動向調査では、同期間の家計平均実質所得(全国の1人以上世帯基準)は逆に1.6%減少したことが分かった。半導体の輸出急増が牽引した予想外の高成長にも関わらず、暮らしが上向きになるどころか、悪化したのだ。世帯当り月平均消費支出も実質増加率がゼロにとどまり、今後の内需景気の見通しは明るいとは言えない状況だ。政策決定者は、これが国民の直面している現実であることを直視しなければならない。
家計動向調査は毎月約7200世帯を対象に集計する調査で、「全国所得」の相対標本誤差は2.5%。第1四半期の実質所得が2021年のコロナ禍以来3年ぶりに再び減少傾向に転じたのは、軽く見るべきではない。家計名目所得が消費者物価上昇率3.0%を大きく下回る1.4%しか増えていないのだ。家計実質所得は昨年、年間0.7%減少したが、当時は成長率も低かった。ところが、今年第1四半期には驚くべき成長を遂げたにもかかわらず、実質所得の減少幅ははるかに大きくなった。国民が感じる危機感と絶望感はさらに大きいだろう。
実質所得の減少には、平均勤労所得が332万6千ウォン(約38万2千円)から329万1千ウォン(約37万8千円)へと1.1%減少したのが最も大きな影響を及ぼした。物価上昇率を考慮した実質増減率では-3.9%にもなる。雇用労働部の「事業体労働力調査」でも表れたように、1~2月に支給する大企業の特別成果給の大幅な減少が家計勤労所得を減らし、それが家計実質所得の減少につながった。5つの分位のうち4分位と5分位世帯だけが実質所得が減少したことがこれを示している。固定給与も実質増加率が非常に低いが、これを含む実質総額賃金の引上げなしには暮らしが上向きになることは期待できない。
韓国銀行が21日に発表した消費者動向調査結果によると、5月の消費者心理指数は98で、基準値100を下回った。1月から4月までは100を超えたが、再び「悪化」へと傾いたのだ。家計の所得の不振は消費不振を生み、これは内需を悪化させ、景気の好循環を妨げる。家計所得の中心は労働者の賃金だが、物価管理を理由に賃上げを抑えて来た政府は、今年の最低賃金決定を控え「業種別差別適用」を主張し、賃上げ抑制を貫いている。愚かなことだ。第1四半期の高成長がかえって毒になり、政策対応を遅らせるのではないか懸念される。