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[特派員コラム]「馬鹿」呼ばわりされる米国の大学生たち

登録:2024-05-24 00:14 修正:2024-05-24 09:12
イ・ボニョン|ワシントン特派員
今月4日、米国ミシガン大学の卒業式で、ある卒業生がパレスチナの旗を広げている=アナーバー/AP・聯合ニュース

 米国には中央情報局(CIA)の「過去事件3点セット」がある。その3つとは、1953年にイラン、1954年にグアテマラ、1973年にチリで民主的に選出された政権を転覆させるクーデターを操って成功させたこと。米国の対外政策の代表的な汚点であり、それこそ教科書的な事例だ。

 外交・安保官僚や専門家たちの講演では、名門大学の学生たちがこれらについて質問をしばしば投げかける。自由と民主主義の守護者だという米国のこのような行動をどう説明するのか、というわけだ。私はそのような場面に少し冷笑する気持ちを抱いてもいた。「今は正義感に満ちあふれているだろうが、あなたたちの中から、今日の経験を糧として将来あの演壇の上に立って巧みに回答する人がいずれ出てくるだろう」と思ったからだ。

 ガザ地区での虐殺に反対するデモを見て、そのような考えは改めた。まず、学生たちの抵抗は、不正義を暴き出したり、正したりするのにわずかながら貢献するということに、改めて気付いたからだ。全国的な抵抗だから米国政府が動揺している。

 もう一つの気付きは、彼らを非難する既成世代、特にジョー・バイデン大統領を見て得た。すなわち、若かりし頃に正義感にあふれていた人は誰もが老いても正義感あふれる人であると断言することは難しいが、若い時に日和見主義的だった人は日和見主義的であり続けるだろうということだ。バイデンはシラキュース大学のロースクールに通っていた時、ベトナム戦争に反対して総長室を占拠した学生たちについて、友人たちと「あの馬鹿な奴らを見てみろよ」と陰口をたたいたと自叙伝に書いている。テント座り込みの学生たちを世間知らず扱いする今のバイデンは、かつてもそうだったのだ。

 11月の大統領選挙で再び対決するバイデンとドナルド・トランプは、若い頃はスポーツが得意だったというが、健康問題を理由としてベトナム戦争の徴集を免れたという共通点がある。同世代の米国人たちがジャングルで倒れていっている時に無関心だった者たちに、パレスチナ人の死への「共感」を求めるのは無理なのかもしれない。バイデンは、米国が提供した重さ1トン近い大型爆弾が多くの民間人を殺しているにもかかわらず、戦争勃発後から7カ月もたってようやく、その爆弾の供給を保留した。米軍が橋や軍事施設の破壊用と規定したこのような爆弾は、ガザ地区の民間人居住地をコンクリートの粉へと変えた。トランプはさらにひどく、政治的に窮地に追い込まれたバイデンがこの爆弾の供給を保留したことに対し、「バイデンはイスラエルを捨てた」と述べた。2016年に民主党候補としてトランプと対決したヒラリー・クリントンまでもが、デモ隊の学生たちは「中東の歴史を知らない」と述べて、「非難する大人」の隊列に加わった。

 もし、このような人々ではなく、やはり大統領候補だったジョン・ケリー気候変動問題大統領特使のような人物が今回の危機を扱う位置にいたとしたら、どうなっていただろうか。2004年の民主党の大統領候補で、バラク・オバマ政権でヒラリー・クリントンの後を受けて国務長官を務めた彼は、ベトナム戦争で海軍中尉として軍務につき、勲章をいくつも得ている。しかし退役後は参戦軍人の反戦運動を率いた。1971年の議会公聴会では、政治指導者たちの欲望と無責任が米軍を良民を虐殺する怪物にしたという有名な演説をおこなった。今は変わってしまったのか、それとも自分とは関係ないと思っているのか、彼のことはあまり聞かない。

 結論は、誰もが正義感にあふれていればなおよいが、それが若い時だけであったとしても、その社会と人類にとっては幸いだということだ。馬鹿、浅はか、無知呼ばわりされ、不利益を受けながらも、殺すなと叫ぶ学生たちの方が、彼らを非難する老獪(ろうかい)な者たちよりはるかにましな人間である。

//ハンギョレ新聞社

イ・ボニョン|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1141836.html韓国語原文入力:2024-05-23 19:17
訳D.K

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