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[寄稿]韓国と日本、良き隣人を探す旅に出よう

登録:2024-04-03 08:13 修正:2024-04-03 17:42
キム・ヤンヒ|大邱大学経済金融学部教授
尹錫悦大統領と日本の岸田文雄首相が昨年11月16日(現地時間)米国サンフランシスコのホテルで開かれた韓日首脳会談で握手して記念撮影をしている/聯合ニュース

 昨年3月23日、日本はフッ化水素、フッ化ポリイミド、フォトレジストの3品目の韓国向け輸出を特別一般包括許可の対象とする通達の改正を発表した。韓国も同日、日本に対する輸出規制を解除する改正案を発表し、世界貿易機関(WTO)への提訴も取り下げた。4月28日には日本も韓国と類似の措置を取る改正案を発表した。それから約1年が経過した。勝者は誰だろうか。

 輸出規制3品目のうち、HSコードによる把握が容易な半導体用フッ化水素の日本からの輸入量の推移を調べてみると、輸出統制改正案が発表された昨年3月には、すでに前年比99.7%にまで急増していた。総輸入に占める日本の割合は、2018年の46%から2021年には6.5%にまで落ちた後、2023年には輸入規制撤回により25.2%まで上がった。では、日本の勝利だったのだろうか。そうではない。2023年のフッ化水素の総輸入量は、輸出規制以前の2018年に比べ52%に減少した。韓国が歯を食いしばって推進した国産化の力だ。日本のシェアの座を奪った国は、他でもない中国だ。中国のシェアは2018年の48.4%から2021年には73.3%とピークに達し、輸出規制が解除された2023年に64.4%に低下しても、いまだに1位だ。日本が安全保障の不信を理由に、米国の同盟国である韓国に対し、相互依存性を武器にして脅した結果が、滑稽なことに中国に漁夫の利を与えることになった。もちろん、そのうちの一部は日本の子会社だから大丈夫だと自らを慰めていることだろう。日本も経済的圧力を行使したという黒歴史は、日本が中国を非難するたびにはね返ってくることになるだろう。

 では、韓国が勝者なのだろうか。そうではない。韓国がフッ化水素の国産化に成功したといっても、いまだに高純度の製品は日本から買っているため、2019年以降も輸入減少は輸入単価の上昇を招いた。輸入量が最低を記録した2022年の輸入単価は最悪だった。輸出規制撤回の両面性も見逃してはならない。これは、該当する品目の国内需要企業にとっては供給先の多角化に貢献するが、今まさに国産化に乗りだした企業にとっては冷水を浴びせられることになるからだ。前者と後者が描く悲喜の双曲線を適当に考えてはならない。残りの2品目は、対日依存度がほとんど変わっていない状況で、輸出規制の原状復帰が韓国の技術革新を阻害するのではないかと懸念される。だからこそ、韓国は2019年以前に戻ってはならない。日本の輸出規制を、その後のコロナの狂風と米中戦略競争の激化に備えた予防注射として位置づけるとき、はじめて日本の輸出規制強化は「偽装された祝福」として迫ってくる。

 韓日両国は、いつまで敗者ばかりを量産しなければならないのか。両国は今なお相互不信の沼であえいでいる。しかし、少し視線の方向を変えてみよう。両国は三重に同病相憐の境遇にあるといえる。グローバルレベルでは、米中戦略競争と気候危機に直面している。不運なことに、地域には良き隣人がいない。北米の隣国同士はインフレ抑制法(IRA)の恩恵を分かちあい、欧州連合(EU)は炭素国境調整措置を作り、既存のグローバル・サプライチェーンを地域に戻そうとしているこの時代に、韓日は正反対に中国と築いたサプライチェーンを壊さねばならなくなっている。国内では人口減少と経済活力低下に苦しんでいる。そんな状況でも、韓日両国は各自でこの高波を乗り越えなければならないのか。

 ただし、絶望ばかりではない。両国の企業は1990年代から、各自の強みを土台に第三国で資源開発や発電設備建設などの共同事業を通じて協力を体感しているということは、意外とあまり知られていない。それが2022年までに合計129件に達しており、そのうち43%がアジアに集中している。アジアでの協力事業は、両国の企業の利益だけでなく、地域の発展とつながりの強化、グローバルレベルでの経済安全保障の強化と気候危機の対応にも貢献する共生プロジェクトだ。両国はこの事業を相互の信頼回復の呼び水とすることができる。

 最近、北朝鮮と日本の国交正常化の議論が浮上している。まだ時期尚早だが、いずれは実現するだろう。そのとき、現在第三国で行っているように、日本企業の資本力と技術力が、そして韓国企業のスピード感と商業化の手腕に加え、南北経済協力の経験による北朝鮮内での共同協力が、地域の平和と繁栄をはやめる火種になる日を想像してみる。これを欧州統合の基点になった欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の東北アジア版として再現させるのは、途方もない夢なのだろうか。第2、第3のECSCを発掘して育てることは、空虚な妄想にすぎないのだろうか。

 韓国と日本には、協力しあうインセンティブも力量も十分にある。世紀的な転換期に、両国から互いに良き隣人となり、共に勝者になる旅に出よう。時間はあまり残されていない。

//ハンギョレ新聞社

キム・ヤンヒ|大邱大学経済金融学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1134959.html韓国語原文入力:2024-04-02 19:09
訳M.S

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