大韓医師協会(医協)が医学部の定員拡大を阻止するとして「医療の大災害」をちらつかせている。特権を守るために患者の苦しみを人質に取るなど、度を越している。このような利己的な集団行動は、医学部の増員を望む国民の大多数の世論に勝つことはできないだろう。
医協傘下の「医学部定員増員阻止非常対策委員会(非対委)」は18日、「政府が医学部生と専攻医の自由意思にもとづく行動に違憲的なレッテルを貼って処罰しようとするならば、医療の大災害を招くだろう」と述べた。この発言はこの日、ハン・ドクス首相が国民向け談話で「医療改革はもはや遅らせることのできない時代的課題」だとして、専攻医に対して「どうか医療現場と患者から離れないでほしい」と訴えた直後に発表された声明でのものだ。医協は、医学部の増員が「キューバ式の社会主義医療システムを作ろうというもの」だという無理やりな主張を展開したかと思えば、「医師を悪魔化して魔女狩りをする政府の態度」などと述べ、激しく非難した。
医協非対委は前日にも「たった1人の医師に対してであっても、免許に関して不利益が加えられれば、医師に対する正面からの挑戦とみなす」とし、「持ちこたえることの困難な行動に突入」すると脅している。政府の厳正対応方針に対抗して、患者とその家族を人質にするという宣戦布告ではないか。医協のチュ・スホ元会長は地方医療の空白について「地方に足りないのは医師ではなく民度だ」という、国民を見下す暴言すらためらわない。特権意識に満ちた医師たちの傲慢な態度に怒る国民的世論に全く気付いていない態度だ。
ソウルの主要病院の専攻医が19日までに全員辞表を提出し、20日から勤務を中止することを決めたことで、重症患者の手術の延期のような医療混乱も非常に憂慮されている。医学部の増員に絶対的な支持を送る世論とかけ離れた行動だ。韓国ギャラップが16日に結果を公開した調査では、医学部増員賛成は76%を占め、「否定的な面の方が多い」という回答(16%)を圧倒した。昨年末の保健医療労組の調査でも、賛成意見は89.3%に達した。
日本、ドイツ、英国などの主要国も、人口の高齢化に伴って医学部定員を増やし続けている。しかし、医師が集団行動でそれを邪魔している国は韓国だけだ。1998年以降、医学部の定員は1人も増えておらず、その間に高齢化と地方・必須医療の空白で非常に多くの人々が苦しみ、一部は命を失った。医師たちの利己主義に屈して韓国社会の切迫した課題を先送りするようなことが、これ以上繰り返されてはならない。