「韓国は悪い国ですか」
今月の初めに中国を旅行中、ある飲食店で会った8歳くらいの中国人の少女が唐突に尋ねた。飲食店の店主の孫娘と思われる少女は、退屈なのか飲食店の席に座った記者に近づき、「どこから来たの」「何しに来たの」と尋ねた。「北京から来た韓国人だ」という返事に少女は「韓国は悪い国なの」と問い直した。「韓国はいい国で、中国と仲がいい」と答えた後、「誰が韓国は悪い国と言ったの」と尋ねた。少女はこの質問には答えず、「米国と日本は悪い国でしょ。中国を困らせているでしょ」と答えた。
なにげない少女との対話を軽く流せなかったのは、先月、中国で愛国主義教育法が制定されたためだ。来年1月1日から施行されるこの法律は、中央政府と地方政府、各種学校、社会団体、企業はもちろん、家庭での愛国教育の責任を明示している。「未成年者の両親や保護者は、祖国愛を家庭教育に結びつけ、学校の愛国教育に協力しなければならない」(第17条)という内容だ。実現の可能性は疑わしいが、社会全体的に愛国教育によりいっそう気を遣い強調する雰囲気が醸成されることは明らかだと思われる。
国民に「愛国」を教育することはすべての国家が行っていることであり、韓国も米国も日本も例外ではない。しかし、愛国教育を最初から法律で定めて強調するのは次元が違う。自然な教育ではなく強圧的な教育が行われる可能性があり、場合によっては、自国愛で終わらず、他国あるいは外国人を理由なしに排斥し憎悪することにつながりかねない。8歳の少女が隣国をいい国、悪い国とまず区別するように。
欧州列強や米国、日本などに侵略された中国の歴史をみれば、愛国主義を強調することはある程度は理解できる。しかし、今の中国は違う。米国に次ぐ世界第2位の経済・軍事大国に浮上し、国際社会に及ぼす影響力も米国が恐れるほど急激に大きくなった。そうした国家が国民に愛国主義を強調する場合、自分の国家を愛し誇りに思うことでは終わらず、自分たちの側ではないと思う国を敵対視して攻撃することにつながりかねない。すでに中国には、改革開放後に生まれ、自国の文化を過度に愛し、米国などの西側を敵意もってみる若者は少なくない。中国に隣りあう韓国としては、愛国主義で結束した中国人を相手にしなければならない困難な状況に直面しかねない。
愛国を強調することは中国の発展にも障害になりうる。世界が一つにつながる国際化の時代に偏狭な愛国主義にとらわれれば、それは中国がより自由に発展する国になることを妨げるだろう。
米国のジョー・バイデン大統領との会談のため、14日に米国サンフランシスコを訪問した中国の習近平国家主席は、米国と肩を並べることになった中国の力と魅力を全世界に示すため、並々ならぬ努力をした。中国が強いだけでなく安全かつ信頼にあふれ魅力的な国にみえるよう、相互尊重、平和共存、協力共生など肯定的な単語を列挙した。しかし、中国内部では、家庭にまで愛国を教育させる愛国主義教育法が制定され、外国人の活動半径を狭める方向に反スパイ法が改正されている。中国の表と裏がますます変わっている。
チェ・ヒョンジュン|北京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )