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[特派員コラム]尹政権の「差し出す対日外交」を揺ぎないものに?

登録:2023-10-20 06:27 修正:2023-10-20 08:13
尹錫悦大統領と日本の岸田文雄首相が今年3月、東京・銀座の老舗洋食店で、生ビールで乾杯している/聯合ニュース

 1998年10月8日、東京で金大中(キム・デジュン:1924~2009)大統領と日本の小渕恵三首相(1937~2000)が韓日関係の流れを変えた「21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ(韓日共同声明)」を発表した。小渕首相の「植民支配に対する痛切な反省と心からのお詫び」を含め、5分野の協力原則が盛り込まれたこの宣言が発表されてから、今年で25年になった。

 これまで韓日関係は多くの浮き沈みを経験した。昨年5月の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、韓日関係は再びターニングポイントを迎えた。尹錫悦大統領が今年3月、日帝強制動員被害者の賠償判決と関連し、被告人の日本企業ではなく韓国の日帝強制動員被害者支援財団が賠償金を肩代わりする一方的譲歩案を強行したことで、悪化一路を辿っていた両国関係が緩和された。だが、一部被害者は反発した。片方の「一方的な譲歩」だけでは、実質的な関係改善を期待するのは難しい。

 それを意識したかのように、パク・チン外交部長官も譲歩案を発表する際、「コップに水が半分以上入った。日本の誠意ある呼応によって、そのコップがさらに満たされることを期待する」と述べた。

 それから7カ月が過ぎた今、我々はどんな状況にあるのか。日本は変わっていない。強制動員被害者があれほど望んでいた日本製鉄や三菱重工業など被告企業の謝罪や賠償のための基金参加は、いまだ実現していない。さらに日本政府は、2015年に端島(軍艦島)など朝鮮人強制動員が行われた近代産業施設の世界遺産登録当時に約束した内容を、8年たっても守っていない。朝鮮人強制労働を認め、犠牲者を記憶に留めるとして、東京に産業遺産情報センターを作ったが、「朝鮮人差別はなかった」などむしろ歴史を歪曲する内容が加えられた。

 今年9月1日、100年を迎えた関東大震災問題でも、日本政府は「朝鮮人虐殺」の真相究明どころか、虐殺そのものも認めていない。毎年議論になっている日本の小中高の歴史教科書には、日本軍「慰安婦」の強制性と強制動員被害内容がほとんど消えた。

 かなり前から日本国内の雰囲気は、植民地支配など過去を反省するより、「先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」という2015年の「安倍談話」と近くなっている。そして尹大統領の決断により、その「謝罪を続ける宿命」から解き放たれたと思っている。日本で尹大統領の好感度が高いのもそのためだ。

 「金大中-小渕宣言(韓日共同宣言)」25周年を迎え、先日日本経済新聞に掲載された社説に目が止まった。同紙は尹大統領の決断を高く評価しながらも、「支持率が30%台にとどまり関係改善を進める基盤が弱い。トップが代わっても後戻りしない日韓関係への歩みが大事になってくる」と指摘した。さらに「重層的体制づくりに拍車をかけるべきだ」とし、「日韓、日米間協力の枠組みを制度化するのは適切だ。その精神となる理念と協力すべき分野を明示した共通ビジョンが必要になる。有識者でつくる日韓フォーラムが国際秩序の変化を踏まえ、バージョンアップした共同宣言の発表を提言したのは一考に値する」と提言した。コップの半分を満たすどころか、尹政権の「差し出す対日外交」を揺ぎないものにする何かを求める声があがるとは、ため息が出る。

//ハンギョレ新聞社
キム・ソヨン|東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1112866.html韓国語原文入力:2023-10-20 02:37
訳H.J

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