12日間(8月1~12日)の日程で計画された「2023セマングム世界スカウトジャンボリー」が全世界青少年のキャンプ・フェスティバルから韓流体験に急激に性格が変わったまま終わりを迎えている。猛暑が予想されていたにもかかわらず、準備不足と運営の未熟さが露呈し、英国と米国の隊員が早期撤退に踏み切った中、台風予報まで重なり、結局残った156カ国の3万7000人余りの隊員を全員撤退させ、全国8カ市道に移動させた。自治体別の代替プログラムに続き、11日夕方、ソウルのワールドカップ競技場におけるKポップ公演で「ジャンボリーのフィナーレを感動的に飾る」(文化体育観光部)という。与党の「国民の力」では、K-POP公演に一部メンバーが軍服務中の「防弾少年団(BTS)」を投入するよう国防部が協力すべきという主張まで出た。同党のソン・イルジョン議員は、「国家が困難な時、崩れ落ちた国格を回復する上で大きな役割を果たせるのはBTSだけ」だと述べた。
大手芸能事務所の関係者にこのような状況について尋ねたところ、「危機状況だとして英国政府がエルトン・ジョンを呼び出すのか?欧米からすると、専制主義的な発想だ」と強く反発した。豪雨や猛暑に備える屋根のない上岩(サンアム)競技場での2時間にわたる公演をわずか3日間の準備期間を経て行おうとする「果敢性」と、「国格の回復」という名目ならアーティストをいつでも呼び出せるという発想に彼は驚きを隠せなかった。「こうして墜落した国家の威信を挽回できるというのは近視眼的な考えだ。むしろ国格を落とす行為だ」。
韓国を訪れた青少年たちに「ずさん」と「悪夢」の記憶以上のものを持ち帰らせるためにも、私たちが持っている力を活用して有終の美を飾ることは必要だ。K-POP公演に快く出演するアーティストもいるだろう。しかし、政府が起こした問題を解決するため、民間の資源が多く投入される状況は決して望ましくない。セマングムからの撤退と8カ市道への分散収容という政府のコンティンジェンシープラン(非常計画)は宿舎と代替プログラムの準備のための「総動員令」の結果だ。企業、大学、宗教界が研修院、寮などを隊員たちの宿舎に提供し、文化・芸術体験や観光など各種プログラムを用意した。
この過程で中央政府と地方自治体の公務員たちが汗水流して奔走しているのは言うまでもない。ある公務員は「コロナに対応する時のように、今も企業、大学に電話をかけている」と語った。民間が積極的に参加しているが、これは「危機の国を救った金の指輪精神」(パク・テチュル国民の力政策委議長)で武装したためでもなく、「韓国の危機対応能力を全世界に示す」(キム・ヒョンスク女性家族部長官)ためでもない。今回の事態を見ながら、市民がそれぞれプライドを傷つけられたためとみる方が妥当だろう。
今起きている総動員事態は、政府と自治体、政界が基本的なことさえ守っていれば防げたはずだ。セマングムがジャンボリー開催地に確定したのは2017年8月だ。この6年間の準備期間中に事業費1171億ウォン(約128億円)が投じられた。8月の猛暑と台風が突然やってきたわけでもない。日陰のない干拓地で数万人が参加する大会を進行する際、何を考慮すべきだったかも明らかだ。政府が理解しにくい過ちを犯し、市民は「K底力」という美名のもと、本来なら不要な手間と心配を抱え込んだ。政府と政界が迷惑をかけているわけだ。
政界は今回の事態初期から「相手のせい」攻防を繰り広げてきた。ジャンボリー基盤施設の準備は前政権に、準備と運営は現政権に責任がある。しかし、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の発足から1年が過ぎた時点で、「野党が政府を攻撃すること」と「与党が前政権を責めること」のうち、どちらがより醜いのかも自明だ。ところが、政治家だけはそれを知らないのか、責任転嫁に余念がない。政治が市民にとって「力」ではなく「荷物」になっている。
今回も民間の力に支えられ、何とか今回の事態を乗り切れるだろう。だが、今回の経験が政府と政治の失敗を民間の負担に転嫁し、それを「金の指輪精神」「危機対応能力」に仕立てあげる慣行を作るのではないか懸念される。行事が終わり「追及の時間」が訪れたら、責任の所在をめぐる攻防だけではなく、政権を問わず政府と政治の失敗で今回のような迷惑をかけないよう、再発防止策を模索しなければならない。