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[コラム]ウクライナ戦争に対する私の自己検閲

登録:2023-07-06 02:23 修正:2023-07-06 04:38
ノルドストリーム海底パイプライン爆破、ザポリージャ原発をめぐる攻防、ノバカホウカダム爆破事件などについて常識的な疑問を投げかけると、すぐさま「どっちの味方なのか」という質問が返ってくる。それらの事件は何が何でも特定の側の仕業でなければならないと思っているようだ。そのためか、私は今この文を書きながらも、「自分はどっちの味方なのか」という自己検閲に陥ってしまう。
軍事反乱を起こした民間軍事企業「ワグネル」の首長、エフゲニー・プリゴジン氏が先月24日、ロシア南部のロストフナドヌーで車に乗って支持者たちと手握手している/ロイター・聯合ニュース

 ロシアで民間軍事会社「ワグネル」の首長のエフゲニー・プリゴジンが先月24日、武装反乱を起こすと、「プーチン体制の終末の始まり」という分析が相次いだ。ところが、いざ反乱の波紋が収まると、プーチン体制の終末が始まっても、終末そのものは遠い未来の出来事になる公算が高くなった。

 反乱事態は常識とかけ離れていた。プリゴジンとその部隊員たちが占領したというロストフナドヌーのロシア軍南部軍区司令部は和気あいあいとした雰囲気だった。プリゴジンとロシア軍将校、ワグネル部隊員と政府軍兵士が談笑を交わしながら写真を撮っていた。ワグネルの部隊が司令部を「掌握」したのか、それともロシア政府軍が彼らを「包摂」したのか分からないほどだった。反乱が起き、反乱勢力と政府軍が一つになり、首都に向かう反乱勢力が政府軍を攻撃したのか、それとも政府軍によって阻止されたのかも不透明で、最高統治者は反乱勢力を粉砕すると脅しをかけたが、反乱勢力は赦免された。このすべての様相が結局、ロシア体制が緩み、まともに作動しない兆候である可能性もある。西側の基準からすると、一言で言えば「めちゃくちゃ」なのかもしれない。問題は、そのめちゃくちゃな事態について西側がよく分かっていないことにある。

 ウィンストン・チャーチルが以前このようなことを語ったという。「クレムリンの政治陰謀はカーペットの下でのブルドッグの争いに喩えられる。部外者にはただうなり声が聞こえるだけで、骨がその下から飛び出すのを見てようやく勝者がだれなのかが明らかになる」と。西側の立場と観点からすると、ロシアはめちゃくちゃかもしれないが、自分たちには把握しきれないところがあることを認める言葉でもある。プリゴジンの反乱でもうなり声を聞いただけで、いわゆる「希望的観測」に基づいて解釈したのかもしれない。

 反乱が沈静化した後も、西側当局やマスコミはプリゴジンの反乱にロシア軍の実力者であるセルゲイ・スロビキン宇宙航空軍司令官が同調して拘禁されたなど、ロシア軍部の離脱を伝えた。スロビキンはまだ姿を現していないが、娘がマスコミに登場して父親は正常に執務しており、マスコミに登場して自分のことについて語る人ではないと(拘禁説を)否定した。スロビキンが登場しないのは、西側で流布された彼の粛清説をあざ笑うための逆工作である可能性が高くなった。

 解体が避けられないというワグネルがベラルーシに向かったことで、ウクライナ北部に第2戦線が開かれる懸念が高まっている。ワグネルは数日で、ロシアの戦争遂行に反旗を翻した勢力から、再びウクライナを脅かす最大の戦力に変貌している。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ウィリアム・バーンズ米中央情報局(CIA)長官は反乱解消後、ロシアのセルゲイ・ナリシキン対外情報庁(SVR・元KGB海外パート)長官に電話をかけ「米国は介入しなかった。これはロシア内部の問題だ」と強調した。ウクライナ戦争以後、敏感な事案をめぐってロシアと接触してきたバーンズ局長がこのような意見を伝えたのは、今回の事態でプーチンの権力と体制があまり影響を受けなかったという判断だ。

 西側で最も注視するウクライナ戦争への影響も、今のところそれほど大きくない。反乱当日もロシアのウクライナ空襲は続いた。ウクライナの反撃攻勢が勢いづくだろうという希望的観測が現実化する気配もない。むしろロシアが東部戦線では攻勢に切り替えた。

 ウクライナが反撃攻勢を繰り広げるというが、攻勢をかける側は防御する側に比べて通常3対1程度の戦力的優位を占めなければならない。人口と資源、武器で優勢なロシアは、すでに昨年末から現在の戦線を固める作戦に入った。ウクライナ反撃攻勢が始まって1カ月が過ぎたが、ロシアの最前線の防御線を突破したというニュースは聞こえてこない。西側やウクライナは反撃攻勢には時間がかかるという説明を繰り返すだけだ。

 平和協定はおろか休戦協定もなく、現戦線で局地戦を繰り広げてそれが固まる「凍結した戦争」になるのが、現在としては最も可能性が高い。なぜ平和協定や停戦協定の可能性が極めて低く、ただ戦いに疲れて固まってしまう状況が有力かというと、この戦争をめぐり双方が和解できない世界観を保っているのためだ。事件と戦況を自分たちの理想と価値に有利に解釈するプロパガンダがウクライナ戦争を見守る人々の耳と目をとらえている。

 ノルドストリーム海底パイプライン爆破、ザポリージャ原発をめぐる攻防、ノバカホウカダム爆破事件などについて、常識的な疑問を投げかけると、すぐさま「どっちの味方なのか」という質問が返ってくる。それらの事件は何が何でも特定の側の仕業でなければならないと思っているようだ。そのためか、私は今この文を書きながらも、つい「自分はどっちの味方なのか」という自己検閲に陥ってしまう。

//ハンギョレ新聞社
チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1098907.html韓国語原文入力:2023-07-05 19:04
訳H.J

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