本文に移動

[寄稿]休戦70周年と韓米合同演習

登録:2023-03-20 06:31 修正:2023-03-20 09:05
キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授 

朝鮮半島が再び激戦の空間になりつつある。米国が韓日歴史問題の早期解決を急いだ理由は、在韓米軍と在日米軍を有機的に連携することで、北東アジアの軍事秩序を再編するためだ。韓米同盟の目的が変わり、朝鮮半島は歴史的な転換の岐路に立たされている。
陸軍第3工兵旅団と米第2師団・韓米連合師団隷下の工兵大隊が6日から17日まで京畿道漣川郡の訓練場で実施中の合同渡河訓練で、装備と車両が浮橋で川を渡っている=韓国陸軍提供//ハンギョレ新聞社

 休戦70年を迎える今年の春は「春らしくない」。韓米合同演習は毎年春と秋、朝鮮半島情勢を危うくしてきたが、今年は例年を上回る勢いだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の理念、在韓米軍の実戦訓練の需要、そして米国の中国を狙った軍事秩序の再編の必要性が相まって、過去とは比べものにならないほど演習の規模とレベルが変わった。北朝鮮も演習期間を戦略兵器の高度化の機会と捉え、朝鮮半島の緊張感を高めている。

 これまで春季の韓米合同演習の規模と北朝鮮の対応は、その年の朝鮮半島情勢を左右する大きな要因となってきた。朝鮮戦争後、毎年の合同演習を中止したのは2回だけだ。2回とも情勢を変え、「平和の春」につながった。盧泰愚(ノ・テウ)政権時代の1991年末、世界的な脱冷戦状況の中、韓米両国が「チームスピリット演習」の中止を決めたことをきっかけに、南北は南北基本合意書に合意し、朝鮮半島非核化共同宣言を採択することができた。

 2018年の平和の春も、2017年に「五輪休戦」を名分に合同演習を中止したからこそ可能だった。北朝鮮の路線転換、平昌(ピョンチャン)五輪の開催成功に向けた環境づくり、そしてドナルド・トランプ大統領の「軍事演習」に対する否定的認識が重なり、26年ぶりの合同演習の中止が実現した。合同演習を中止したことを機に、平和の春が訪れ、3回の南北首脳会談と歴史的な朝米首脳会談につながった。

 一方、合同演習の再開は情勢の悪化をもたらした。1992年秋、米国政府はディック・チェイニー国防長官の主導のもと、翌年「チームスピリット演習」を実施すると発表した。当時駐韓米国大使だったドナルド・グレッグ氏はこの決定を「大使を務める期間中に米国が犯した最悪の過ち」だと自身の回顧録に記した。北朝鮮は直ちに「準戦時体制」を宣言し、1993年3月に核拡散防条約(NPT)を脱退した。それが北朝鮮核問題の始まりだった。

 2019年8月の韓米合同演習の再開決定も同様だ。当時、ジョン・ボルトン安保補佐官はマイク・ポンペオ国務長官に働きかけ、韓米合同演習の再開が避けられないとトランプ大統領を説得した。トランプ大統領は当時「防衛費分担金を上げる機会」だと判断して同意したが、その後、北朝鮮が抗議し情勢が悪化すると、ホワイトハウスの会議で演習の強行を後悔すると述べた。2019年2月のハノイ朝米首脳会談の決裂以後、情勢を再び改善できる最後の火種はその時消えた。そして北朝鮮は事実上の核保有に向けて突き進み、南北関係は回復不可能な段階に入った。

 軍隊を保有するなら、訓練は欠かせない。しかし、訓練の規模と強度、それが朝鮮半島情勢に及ぼす影響については慎重なアプローチが必要だ。1954年の最初の韓米合同演習が「フォーカスレンズ指揮所演習」だったことを思い出す必要がある。合同演習の目的は戦時作戦計画を韓米連合軍が熟達することにあり、だからこそ通常「コンピューターシミュレーションに基づく指揮所演習」が行われる。韓米両国の合同演習が分野別に年中随時実施されていることも考慮する必要がある。合同演習期間中の大規模な野外機動訓練の「情勢悪化コスト」と「軍事訓練効果」を慎重に検討しなければならない。

 今の韓米合同演習は過去とは異なる。規模が変わり、防衛訓練から反撃訓練の方へと比重が高まっており、大規模な野外機動訓練と共に様々な戦略兵器も参加する。訓練期間中、韓米両国は北朝鮮の核兵器に対応できる拡大抑止の具体的な作動も実験する。緊張が高まれば偶発的な衝突の可能性も当然生じる。それも通常の軍備ではなく、事実上の核武装状態での衝突だ。

 もちろん合同演習の影響は朝鮮半島だけに限らない。中国をけん制するための韓米日軍事協力につながり、それに対抗する朝中ロ3カ国の合同演習を呼び、次第に北東アジアは「軍事陣営化」に進むだろう。朝鮮半島は地政学的に緩衝国家であり、海洋勢力と大陸勢力がぶつかるたびに悲劇の歴史を経験してきた。朝鮮半島が再び激戦の空間になりつつある。米国が韓日歴史問題の早期解決を急いだ理由は、在韓米軍と在日米軍を有機的に連携することで、北東アジアの軍事秩序を再編するためだ。韓米同盟の目的が変わり、朝鮮半島は歴史的転換の岐路に立たされている。

 今年は休戦協定を結んでから70周年となる年だ。終戦ではなく、「戦争の一時的中断」である休戦状態で暮らしていた70年間、戦争につながる危機は少なくなかった。しかし、そのたびに南北米のうち「誰かは」自制力を発揮した。朝鮮半島が不安に包まれる春に、「誰か一人でも」この70年の歴史から教訓を得ることを切に願うばかりだ。

キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1084243.html韓国語原文入力:2023-03-2002:08
訳H.J

関連記事