尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は16日、日本の岸田文雄首相との首脳会談で「GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の完全正常化」を宣言した。強制動員被害者らに対し日本企業に代わり韓国政府傘下の財団が賠償金を支払う政府案を発表したわずか10日後に迅速に進められた今回の訪日では、日本の強制動員への謝罪はなかった。岸田首相は「歴代内閣の歴史認識の継承」に軽く言及しただけだ。
尹大統領は会談後の記者会見で、韓日関係の悪化について、2018年の韓国大法院(最高裁)の判決に原因があるとして、日本企業に求償権を請求しないと約束する“免罪符”を乱発した。韓国の財団が被害者に賠償金を支払った後、日本企業に「求償権が行使される場合、再度すべての問題を元の位置に戻すことになるため、求償権の行使は考えていない」と断言した。その一方で、尹大統領がこの日、「金大中-小渕宣言(韓日パートナシップ宣言)の発展的継承」に言及したことは理解しがたい。この宣言には日本の「痛切な反省と心からのおわび」が含まれていることを考えてみたことはあったのか。
両首脳は、韓米日の安全保障協力強化には非常に積極的だった。尹大統領は「さきほどの(韓日)首脳会談で、我々のGSOMIAの完全正常化を宣言した」として、「北朝鮮の核とミサイル発射と飛翔経路に関する情報を、両国が共有して対応できるようにしなければならない」と明言した。この日の会談前、北朝鮮は東海(トンヘ)に向け「火星17型」と推定される大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し武力示威を行った。両首脳はこれを繰り返し糾弾し、「共助をよりいっそう強化」するとして声を合わせた。韓国が強制動員「第三者弁済案」を出す前から、韓米と韓米日は軍事協力を強化してきた。今回の首脳会談を契機に、中国をけん制しようとする米国のインド太平洋戦略において、韓日の軍事協力が急進展されることを予告したのだ。
日本がこの日、相応措置であるかのように出した措置には曖昧な点が多い。日本政府は2019年に実施した半導体の主要な材料3品目の韓国への輸出規制をこの日解除したが、完全な原状復旧でなく、手続き緩和とみなさなければならない。現時点では、韓国をグループA(輸出管理優遇措置対象国リスト、旧「ホワイト国」)に再度加えてはいない。にもかかわらず、韓国政府は、世界貿易機関(WTO)への提訴を先に取り下げるというきわめて性急な譲歩をした。韓国と日本の二大経済団体はこの日、それぞれ10億ウォン(約1億円)ずつ拠出し「韓日・日韓未来パートナーシップ基金」を創設すると発表したが、強制動員加害企業が自発的な寄付さえ拒否している状況を隠すための急ごしらえの措置であることは明らかだ。
両首脳はこの日、12年ぶりに韓日「シャトル外交」を復活することにしたとして、両国関係の「新たな出発」を強調した。そのスタートラインとして、日本は過去の歴史に対する謝罪の責任から抜けだし、GSOMIA復活など具体的な成果を確保した。日本の外交的圧勝だ。この日、尹大統領は「韓国の国益は日本の国益とウィンウィン」だと断言した。この言葉に同意する韓国人は多くないだろう。