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[コラム]逮捕同意案以降のイ・ジェミョン民主党代表の黙示録

登録:2023-03-01 06:53 修正:2023-03-01 09:21
共に民主党のイ・ジェミョン代表が27日午後、国会本会議場でハン・ドンフン法務部長官がイ・ジェミョン代表の逮捕同意要請理由説明をしている間、しばらく天井を眺めている=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 共に民主党のイ・ジェミョン代表に対する逮捕同意案は国会で否決された。賛成票が反対票より多かったが、可決定足数に及ばず国会の塀を越えることができなかった。しかし、誰も予想できなかった賛否票の分布が深く長い余韻を残している。

 結果には何よりも「政治家イ・ジェミョン」に対する民主党議員の冷静な判断が反映されていた。組織の引き締めに長い時間をかけ、総力を挙げた世論戦を展開したにもかかわらず、多数の離反票を防ぐことができなかった。政治家の言葉が信頼と共感を得るためには「聞く人に対する尊重」と「話す人の人格性」が欠かせない(パク・サンフン著『政治的言葉の力』)だが、イ代表はそれからあまりにもかけ離れてしまった。拘束令状を「司法殺人」と呼び、検察をやくざと強盗にたとえた荒々しい物言いが果たしてどれくらい説得力を持ったのかは疑問だ。国会議員不逮捕特権を「廃止すべきだ」という回答(57%)が「維持」(27%)よりはるかに多く、「拘束捜査すべきだ」という回答(49%)が反対(41%)を上回る世論の流れ(24日、韓国ギャラップ)がおそらく表決の結果にも反映されただろう。

 イ代表に言わせれば、売り言葉に買い言葉かもしれない。「地方自治権力を私有化した『市政壟断事件』」、「国民の信頼を著しく損ねた『ネロナムブル(韓国語で「自分がすればロマンス、他人がするのは不倫」の頭文字を取った造語で、ダブルスタンダードの意味)』、『アシタビ(我是他非:自分は正しく、他人は間違っているという意味の造語)』の典型」のような拘束令状の一部表現は適切ではなかったと、法曹人たちも指摘する。求刑にふさわしい言葉という意味だ。例えば、粛軍クーデターや光州事件の主犯である全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領に死刑を求刑した論告文には「国民主権主義に真っ向から挑戦」、「反国家的かつ反歴史的犯行」のような極めて強い表現と断定的評価が多数含まれている。しかし、拘束令状は違った。具体的な容疑事実を並べた後、「○○した者として逃走および証拠隠滅の恐れがある者」と簡潔に終わる。今回は、裁判をする前に論告を前面に出した格好になった。

 「『ネロナムブル』は法律上拘束の理由ではない。拘束令状は判事の前で被疑者に逃走および証拠隠滅の懸念がある事を立証することが最も重要な内容だ。そのため、もともと法律要件に合わせて冷静に言葉を選ぶ。(以前は)感情をあらわにする日常用語は法廷に持ち込まなかった。指揮部が事前に排除すべきだった」(高検長出身の弁護士)。だからといって、イ代表の荒々しい言葉が正当化されるわけではない。

 逮捕同意案は否決されたが、イ代表の実存的な困難さはこれからだ。検察は近いうちに彼を起訴するだろう。大庄洞(テチャンドン)と慰礼(ウィレ)再開発、城南(ソンナム)FCの3件についてだ。拘束令状に含まれていなかったチョン・ジンサン氏など側近を通じた収賄容疑は「背任の動機」に該当するため、起訴段階で含まれる可能性が高い。裁判が集中審理で行われた場合、イ代表も自ら記録を把握し、ほぼ毎週裁判所に出て被告人席に座っていなければならない。在宅起訴の状態で無罪を争う被告人であるため、裁判がいつ終わるかは誰にも分からない。

 このような裁判には費用もかかる。イ代表は「京畿道知事時代、2年間裁判に苦しめられた」として「打たれ強さ」を自慢したことがあるが、今回の事件はその時とは全く異なる。「2つの特捜部がほぼ1年間行った再捜査であるため、記録が数万ページ以上あるだろう。1件だけでも有罪になれば、政治生命が終わる内容だが、追加起訴まで予告されている。まともに対応するためには、判事出身のシニア弁護士からジュニアまで少なくとも5~6人以上で弁護団を作り全面的に取り組まなければならない。弁論費用は一般人の想像を超える水準にならざるを得ない。防御権の行使は弁護士費用に比例する」(大手法律事務所のパートナー弁護士)

 さらに、捜査中の事件が3件(柏ヒョン洞・亭子洞・対北朝鮮送金)もある。これらの事件も結局は裁判にかけられる可能性が高い。これに先立ち、虚偽事実の流布で起訴された公職選挙法違反事件の裁判が3日から始まる。イ代表の心的苦痛や時間と費用の負担はますます大きくなるだろう。

 政治的には民主党議員たちの忍耐がカギだ。イ代表は昨年8月、反対意見を押し切って「起訴時の当直停止」規定(党憲第80条)を自分に有利に改定した。しかし、イ代表の裁判と捜査が民主党に対する関心を圧倒し、党の支持率が引き続き与党(国民の力)との差を広げ、右肩下がりになれば、事情はいくらでも変わりかねない。来年4月の総選挙に近づくにつれ、議員たちにも利害打算が強く働くだろう。要するに「イ・ジェミョンを党の『顔』にして2024年の総選挙で勝てるか」という質問を避けては通れなくなる。今回の離反票は予告編に当たる。

 イ・ジェミョンの黙示録は始まったばかりだ。

//ハンギョレ新聞社
カン・ヒチョル論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1081624.html韓国語原文入力:2023-03-01 02:37
訳H.J

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