ウクライナの奪われた野に、ロシアの「春の大攻勢」が近づいている。24日でロシアの侵攻開始から1年になるが、戦争の終わりは見えない。ロシアはウクライナ戦線に陸軍兵力の97%を投入し、「人海戦術」で消耗戦を繰り広げている。ウクライナも「少しの土地も渡さない」という姿勢で必死に立ち向かう。戦線は血と苦しみに満ちた膠着状態に陥っている。
1950年に朝鮮戦争でソウルを奪還し鴨緑江(アムノッカン)まで進撃した韓国軍と国連軍が、中国軍の参戦で再び押し戻され、その後は双方が休戦ライン付近で高地戦を繰り広げ、数多くの人命が犠牲となった当時と似たような状況だ。戦争を起こした北朝鮮の金日成(キム・イルソン)主席は1952年ごろから戦争を終わらせることを望んでいたが、ソ連のスターリンは戦い続けろとして終戦を「許可」しなかった。スターリンは欧州で米ソの戦争も起こり得ると予想し、米国の軍事力を朝鮮戦争で最大限消耗させることでソ連が有利な位置に立とうとしたのだ。1953年3月5日にスターリンが死亡してようやくソ連の政策は変わり、同年7月27日に休戦協定が結ばれた。
プーチンはウクライナを「属国化」することで「ロシア帝国の偉大な復興」を開始するという野心を抱いて侵攻を敢行したが、ウクライナ人の決死の抗戦、そして西側の軍事支援に押されて予想外に苦戦している。しかしウクライナが人口で3倍、経済規模で9倍の核大国ロシアに軍事的に完勝することも、現実的には難しい。結局のところ、朝鮮戦争のようにウクライナの地が分断され、休戦または終戦で終わるというシナリオが有力だ。朝鮮戦争を振り返ってみると、それさえも到達するには非常に困難な過程を経なければならない。
朝鮮戦争で交渉の鍵を握っていたのがスターリンなら、今回重要な鍵を握っているのは中国の習近平国家主席だ。習近平主席や中国の戦略家たちは、米国にウクライナで最大限の力を使わせるとともに、ロシアを中国に深く依存させることを戦略的目標としていることだろう。この1年間、中国は米国の勢力を弱めるためのロシアとの協力戦線を維持しつつも、中国企業が制裁に抵触して西側の市場を失わないよう、細心の注意を払って両面作戦を展開してきた。ロシアの原油と資源を安く購入して利益を得る一方、ロシアが制裁に耐えられるようにした。スターリンが欧州で繰り広げられる米ソ戦争に備えたように、習近平も台湾海峡で米中対決が繰り広げられることを念頭に置いて一手また一手と布石を打っている。中国外交の司令塔である王毅共産党政治局委員が近くロシアを訪問し、習近平主席のロシア訪問などについて話し合う。ロシアに対し唯一実質的な影響力を持つ中国は、どう動くだろうか。米中覇権競争、台湾問題、東アジアの未来秩序と密接に絡んだ大国間の複雑な駆け引きが展開されている。
ウクライナ戦争がどのように終わるかは、国際秩序の未来にも重要な意味合いを持つものとなる。結局のところ米・中・ロという大国間の取引と妥協が最終決定権を持つため、ウクライナもある時点では「苦しい選択」を迫られることになるだろう。そこにおいて少なくとも韓国の「進歩派」の立場からは、ウクライナ人の抵抗を過小評価し、「ロシアと早く妥協せよ」という主張ばかりを前面に押し出してはならない。大国の一方主義が貫徹されないよう、ウクライナ人の主権と自決権が最大限尊重されるよう連帯しなければならない。大国が膨張の論理を振りかざすたびに「衝突の断層」において苦しんできた朝鮮半島も、結局は似たような境遇だからだ。先月末に成均中国研究所が主催したウクライナと朝鮮半島についての討論会で、成均館大学のチャ・テソ教授は「現実主義論理に従うと、米国は衝突が起きた時、どこまで守り、どこはあきらめるのかを選択することになる。『21世紀のアチソン・ライン(米国の国務長官アチソンが1950年1月に宣言した防衛ライン。アリューシャン、日本、沖縄、フィリピンを結ぶ線とし、朝鮮半島や台湾は防衛ライン外に置かれた)』はどこに引かれるのか、朝鮮半島、台湾、ウクライナなど大国勢力の境界地帯にいる人々にとっては非常に恐ろしく、重要な問題となる」と述べた。
世界は諸帝国の衝突と弱肉強食の時代へと向かうのかの岐路に立たされている。経済的にも、中国・ロシアと米国が両者とも陣営化と保護主義へと動くことで、輸出主導型である韓国経済の危機は深まっている。北朝鮮は韓米合同演習を前に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射して威嚇している。すべての変数が韓国にとって不利な方向へと動いている。中央大学のペク・スンウク教授は、季刊誌「動向と展望」最新号で、韓国社会は「三重の危機」に直面していると指摘する。1つ目は、韓国の経済と政治はうまく維持され続け、戦争は発生しない、という固定観念を揺るがす秩序の変化。2つ目は、この危機に対処する能力を示せない韓国政治の危機。3つ目は、変化をきちんと分析する思想の不在だ。休戦70年にして迫る複合危機の嵐を前にして、レッテル貼りと憎悪に陥った政治、相手陣営を敵視し分裂した社会ばかりが目に付く。
パク・ミンヒ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )