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[寄稿]中国からの渡航者に対する入国制限の経済学

登録:2023-01-18 06:56 修正:2023-01-18 08:26
チャン・ヨンウク|対外経済政策研究院副研究委員
中国からの渡航者全員に対して新型コロナウイルス感染症のPCR検査を行う防疫強化対策が始まった2日、仁川国際空港第1ターミナル入国場で中国からの渡航者たちが入国を待っている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 回りに回って再び中国だ。昨年末、いわゆる「ゼロコロナ」政策が突然終わり、14億人口の大国が新型コロナウイルス感染症に無防備になった。まるで2020年2月が再現されたかのように、米国や日本、イタリアなどが先を争って中国からの渡航者に対する検疫を強化した。韓国はその中でも最も強い入国制限を導入した。今年1月初めから入国前後の全数検査および短期滞在感染者への施設隔離の義務付け、短期ビザ発給を制限した。中国も直ちに報復措置に乗り出した。中国外交部は1月10日から韓国人に対する中国行き短期ビザ発給を全面停止し、「(韓国の)中国を狙った差別的入国制限に相応する措置だ」だと主張した。

 中国の反発は入国制限がもたらす様々な費用の一つに過ぎない。中国からの渡航者に対する検疫の拡大に伴い、すでに撤去していた検査および隔離施設を再構築し、人員を再配置しなければならなかった。短期ビザ発給が制限されたことで、やっと回復し始めた観光・宿泊業に冷水を浴びせ、移住労働者に依存していた事業所の人材難解消も遠退いた。実際、2019年末252万人だった国内滞在外国人は、2021年末196万人に減少した。就業ビザであるE-9(非専門就職)とH-2(訪問就職)所持者も2019年それぞれ26万人と20万人から、2022年5月には21万人、10万人に減少し、外国人材の供給不足が深刻な状態だ。

 いずれにせよ、中国から渡航者の入国を制限して得られる利益が十分に大きければ、防疫強化措置も正当化される。中国製ワクチンのオミクロン変異に対する予防効果はそれほど高くなく、最近まで流行を抑えていたため、感染を経験した人も多くなかった。中国政府が防疫を緩和したことで、感染が爆発的に拡大したことを受け、中国からのウイルスの拡散を遮断するため、検疫強化の必要性が高くなった。もし中国で「危険な変異株」、すなわち既存免疫を回避し重症度が高まった新しい変異が登場すれば、2020年2月に舞い戻りかねない状況だ。最悪のシナリオが現実化した場合、入国制限の便益は前述したすべての費用を上回る。

 実際の入国制限の効果を考えてみよう。1月2日から15日まで入国した中国人短期滞在者3855人のうち580人が陽性判定を受けた。累積陽性率約15%で、この中には無症状感染者もかなりいる。長期滞在外国人と内国人入国者まで合わせた場合、陽性率は約11%で、2週間の間中国からの渡航者2万人余りに適用すると、およそ2200人の感染が確認されたわけだ。

 ところが、同期間、国内で発生した感染者数は約70万人だ。中国から入ってきた感染者2千人余りは、国内発生感染者の0.3%に過ぎない。全数検査をしなかったため、このうち一部を見逃したとしても、地域社会の流行状況に大きな負担になったとは考えにくい。ビザ発給に制限を加えず入国者が増えた場合も同じだ。新型コロナの流行直前の2020年1月の第1週と第2週の中国からの短期入国者は約17万人だった。陽性率11%をそのまま適用すると、予想感染者数は約1万9千人になる。少ない数ではないが、依然として国内発生感染者の2.7%に過ぎず、入国制限に伴うすべての費用を払ってまで防ぐべき水準ではない。

 「危険な変異株」発生の可能性も今のところあまり高くない。疾病管理庁の発表によると、中国から流入した検体のほとんどが韓国で流行しているBA.5(オミクロン株の亜種)と同じだ。他の国でも中国からの渡航者を通じて危険な変異が流入したという報告はまだない。事前注意の原則に従って事前に備えるのは良いが、現在の危険水準で変異の監視は入国前の検査と有症状入国者に対する検査強化程度で十分だ。短期ビザ発給制限カードまで取り出したのは、不確実性を考慮しても費用対効果は大きくなかった。

 今回が最後ではないという点も念頭に置かなければならない。中国には14億人の人口がいるが、中国を除いたほかの地域には66億人の人口がいる。そして、彼らの間で新型コロナが制限なく回っている。感染とワクチン接種で獲得した免疫は周期的に増加と減少を繰り返すだろうし、危険な変異はどの国でも起こりうる。その度に怯えて国境を塞ぐわけにはいかない。油断は禁物だが、感染を防ぐためにあらゆる措置を実行に移すわけにはいかないということが新型コロナ時代に得た教訓ではないか。さらに精巧な費用と便益の分析と、それにともなう政策施行が求められる。

//ハンギョレ新聞社
チャン・ヨンウク|対外経済政策研究院副研究委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1076099.html韓国語原文入力:2023-01-18 02:07
訳H.J

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