中国からの渡航者への世界各国の防疫強化措置に対し、「相応措置」を取ると公言してきた中国が、韓国と日本を相手に報復に乗り出した。韓国は中国に対する短期ビザ発給を制限した唯一の国であることから「最初のターゲット」になり、日本も同じ措置の対象になったものとみられる。他の国民に対する入国許可を意味する「ビザ」は相互主義が強く適用される分野だ。
中国が10日に取った韓国に対する短期ビザ発給停止は、韓国が取った措置とほぼ同じだ。韓国政府は先月30日、中国からの渡航者に対して新型コロナウイルス感染症検査の義務化などの防疫強化措置を発表し、1月末まで外交、公務、必須企業、人道的理由などを除いた短期ビザ発給を中断すると明らかにした。韓国が取ったビザ発給停止決定は、世界各国が相次いで取った中国からの渡航者に対する入国規制の中で、モロッコの「中国人全面入国禁止」の次に強い措置だった。米国や日本、欧州などは中国からの渡航者に対する規制を強化したが、新型コロナ検査を義務付ける措置のみで、ビザ発給停止には踏み切らなかった。
中国の新型コロナ感染拡大に驚いた世界各国が相次いで防疫強化措置を講じたことを受け、中国政府は3日から外交部の記者会見で「相応の措置」を取るという立場を初めて示した。それから1週間後、自分たちの覚悟を示すのに最適な国として隣国の韓国と日本を選んだわけだ。モロッコは韓日よりはるかに強い中国人入国禁止措置を取ったが、往来の規模が小さく、象徴性に劣ると判断したものとみられる。一方、韓国と日本は中国との間で年間数百万人が行き来するほど往来の規模が大きく、「見せしめ効果」が大きいと判断したもようだ。
興味深いのは日本への対応だ。韓国に対しては駐韓中国大使館を通じてビザ発給停止の事実を公開したが、日本に対しては公式発表を行っていない。韓国と違って、日本は中国に対するビザ発給を中断しなかったためとみられる。
中国は前日、異例にも韓国の防疫強化措置への懸念を示すなど、報復措置を事実上予告した。新しく就任した中国の秦剛外交部長(外相)は9日午後、パク・チン外交部長官と就任のあいさつを兼ねた電話会談を行い、韓国の防疫強化措置に対する懸念を示した。
ただし、中国はこの措置が報復ではなく、相互主義原則の適用であることを強調するなど、軋轢の拡大を避けようとする姿勢を見せた。中国当局はビザ発給停止の期限について「中国に対する韓国の差別的入国制限措置の取り消し状況によって調整されるだろう」と明らかにした。中国外交部の汪文斌報道官は10日、韓日に対するビザ発給停止の背景を尋ねる質問に「いくつかの国は科学的事実と自国の感染症発生状況に目を向けず、依然として中国を狙った差別的な入国制限措置に固執している」とし、「中国はこれに対して決然と反対しており、対等な措置を取った」と強調した。
しかし、中国の対応は新型コロナ発生初期の2020年に比べて不合理な面がある。中国は2020年3月の新型コロナ感染拡大初期、韓国を含むすべての外国人に対する全面入国禁止措置を取った。当時、韓国は中国からの渡航者に対し特別な防疫措置を取らず、入国禁止も自制していた。このため、今回の措置が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領就任後に続いた韓国の米国重視外交に対して警鐘を鳴らしたものではないかという懸念の声もあがっている。
韓国政府は慎重な立場を示している。外交部当局者は「中国が取った措置の意味を解釈する段階ではない」とし、「韓国だけを狙ったものなのか、あるいは欧州なども対象にしているのかは、まだ確認されていない」と述べた。