尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の就任100日目の記者会見について、内容はひとまず脇に置いて、形式的側面を読者とともに考えてみたい。
まず、今回の会見で最も異常だったのは、50分の会見の20分を「100日間の成果」という資料を読むことに割いたということだ。「宣伝が行き届いていないため、国民が知らない」という大統領の口惜しさがうかがえた。当初は「40分」とされていた記者会見では、質疑応答の時間をできるだけ減らそうと努めているように見えた。国政の成果は報道資料で代替し、1時間以内の記者会見ではこのような「キリングタイム」は控えてほしい。
第2に、報道官による質問する記者の選択問題。李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)両大統領の時代は、質問者と順番があらかじめ決まっていた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領時代に無作為指名に変更された。今回はこれを報道官による指名に変えた。報道官は記者の所属メディアと性向をよく知っているため、大統領が記者を指名するのに比べて予期せぬ突発事態の防止に有利になる。記者が自ら「うるさい質問」と前置きしてイ・ジュンソク前代表について問うと、その後、カン・インソン報道官は「今度は別の方向に行ってみましょうか」と述べ、その後の質問者として釜山日報、読売新聞を指名し、「釜山エキスポ誘致」、「韓日関係」などへと話題をそらすことができた。この日の席の配置は新聞通信(全国紙)、地方紙、放送、外国メディアなどが区画で分けられていた。今後も記者会見の質疑応答時間が20分程度であれば、いくらでもテンポ調節が可能だ。
第3に、12回の質問の機会のうち3回が外国メディアに割り当てられた。現在、大統領室記者団登録の中央報道機関は49社だ。非プール(pool)団所属社まで含めた出入りの国内報道機関は128社だ。一方、米国のホワイトハウス記者団所属の報道機関も49社だ。ホワイトハウスの記者会見で外国メディアが質問の機会を得ることはほとんどない。ホワイトハウスの記者会見が概ね国内問題に集中しているということもあるが、多くない質問権を今回のように25%も外国メディアに割り当てれば、記者の強い抗議が相次ぐだろう。その代わり、国務省の記者会見場は外国メディアの記者たちが占有している。外国メディアの質問は、たいてい外交安保やその国の事案に集中する。外国メディアに質問権を与えれば、自然に敏感な国内問題を避けることができるし、グローバルな印象も与える。この日の会見では、12の質問のうち4つが外交安保問題で、最も多かった。
どのように調整すべきだろうか。まず、質疑応答時間を最低でも1時間以上は認めるべきだ。100日記者会見では、国民が知りたいような敏感な質問は事実上2つにとどまった。「時間の関係上」50分(質疑応答30分)しか行われなかったが、その日大統領の公開日程は記者会見の他にはなかった。
次に、質問者数を減らしてでも「更問い」(follow-up question)を認めるべきだ。「国民の力のイ・ジュンソク前代表との確執」問題について尹大統領は、「国民生活の安定に邁進しているため、他の政治家がどのような発言をしたのかを当たる暇はない。政治家の政治的発言に対して論評や立場を示したことはない」と答えた。ならば、「公開の立場表明ではなかったものの、クォン・ソンドン院内代表に対して、イ前代表のことを暗に『内部で銃を撃っている代表』と述べているが、どんな点を『内部で銃撃』と考えているのか」などの踏み込んだ質問が。ところが、あの日の次の質問は別の記者による「2030釜山(プサン)エキスポ誘致計画」だった。記者会見の目的は質問の機会を公平に分け合うことではない。
三つ目に、記者会見の回数を増やすべきだ。以前の大統領たちも記者会見らしい記者会見は毎年の新年会見程度であり、それさえも避けていたのは事実だ。朴槿恵大統領は記者懇談会をもって100日記者会見に代えた。記者会見については、公式・非公式会見を頻繁に行った金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)両大統領をピークとして、以降は後退した。李明博-朴槿恵‐文在寅大統領時代の記者会見は年中行事だった。
米国のジョー・バイデン大統領は記者会見を避けているとして米国メディアから批判を受けた。バイデン大統領の就任初年の記者会見の回数は9回だ。同じ期間のドナルド・トランプ氏の22回、バラク・オバマ氏の27回に比べて少ないというのだ。バイデン氏は記者会見を避ける代わりに、囲み取材(ドアステッピング)を好む。更問いは受けなくて済むし、困った質問には黙って通り過ぎればよいからだ。バイデンの就任初年の囲み取材は216回だった。AP通信の1月10日の報道によると、これについてホワイトハウス担当記者団の代表を務めるCBSのスティーブン・ポートノイ記者は「公的関心事についての大統領の考えを知るには非常に不十分だ。(囲み取材ではない)公式記者会見が多ければ多いほど、大衆は大統領の見解をきちんと知ることができる」と述べている。
最後に、メディアのインタビューに応じるべきだ。金泳三(キム・ヨンサム)時代から盧武鉉時代までは、個別メディアとのインタビューがよくあった。しかし李明博時代からは、メディアの過当競争を口実として外国メディアのインタビューに応じるだけで、国内メディアのインタビューは避けている。この流れは朴槿恵時代や文在寅時代も同じだ。文大統領が韓国放送(KBS)、JTBCなどと行っただけだ。尹大統領は候補時代、多くのインタビューを行っているが、本紙とは応じていない。大統領在職期間中に、保守メディアのみとでもよいから、国内メディアとのインタビューを再開してほしい。自国の大統領のインタビューを、ライバル会社ですらなく、他国の新聞で外国語で読むのは悲しいことだ。
尹錫悦大統領がトランプのようにしてくれたらと思う。トランプは在任期間中、月平均2回の記者会見を行った。ジム・アコスタ記者(CNN)と会見場で口論になったが、不快な質問をすることを承知の上で彼を質問者に指名した。自分の好みに合うフォックスニュースの政治トークショーによく出たが、トランプを厳しく攻撃するニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストともインタビューに応じた。大統領だからだ。
クォン・テホ|ジャーナリズム責務室長・論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )