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[コラム]そっくりな尹錫悦の100日とトランプの100日

登録:2022-08-18 03:37 修正:2022-08-18 11:31
17日午前、ソウル市銅雀区のある飲食店のテレビ。尹錫悦大統領就任100日記者会見が放送されている/聯合ニュース

 よく知られているように「大統領就任100日」が重要になったのは米国のフランクリン・ルーズベルト大統領の時代からだ。1933年3月4日、大恐慌の渦中に就任したルーズベルトは、議会に特別会期を要請し、100日あまりの間にニューディール政策の基礎となる73の法律を可決させた。失業者を救済する機関が設立され(連邦緊急救済庁法)、ニューディールの象徴のように考えられているテネシー川開発事業法もこの時に作られた。

 ルーズベルトはまた、国民の情熱を最大限に引き出し、国政運営の動力とした。就任わずか8日にして、国民に直接訴えるラジオ演説、いわゆる「炉辺談話(Fireside chats)」を始めた。米国の成人の半数以上がこの演説を聞いた。空前絶後のルーズベルトの大統領4選記録は、就任100日目に礎が築かれたと言っても過言ではない。

 ルーズベルトの驚くべき成功は、その後のすべての大統領のモデルになった。国民の期待と熱気が充満し、マスコミは敵対的でなく、大統領の議会への影響力が他のどの時期よりも高い政権初期は、核心アジェンダの実現に最適な時期だったからだ。しかし「就任100日」を不満に思った大統領がいなかったわけではない。2017年4月28日に就任100日を迎えたドナルド・トランプ大統領は「就任100日は誤った基準だ。しかし我々ほど100日間に仕事ができた者は過去にはいなかった」と語った。

 トランプは自身が歴代で最高の100日を過ごしたと自画自賛したものの、「ニューヨーク・タイムズ」は数々の項目でトランプの100日は「最悪」だったと評価した。主要法案の成立には進展がなく、政府の高位職任命は最近のどの政権よりも遅れ、外交政策は不明確で、就任直後から「ロシア・スキャンダル」という政治的リスクにさらされている、というのがそのような評価の理由だった。これに加えてトランプは、就任から100日の間に、法律に拘束されない大統領令を32件も下した。ムスリムの米国への入国禁止のように激しい批判を呼び起こしたり、違憲の可能性がある内容が多かった。

 就任100日を迎えた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領にこのような指標をそのまま当てはめても、評価に違いはないだろう。まず、経済が危機にあるにもかかわらず、それを打開する大統領の政策の裏付けとなる重要な法律はほとんど成立していない。その責任を、国会で多数の議席を占める民主党に転嫁することはできない。大統領室や国民の力も政策立法に特に関心を示してこなかったからだ。この3カ月間に政権与党がやったことと言えば、党代表を追い出すための内部権力闘争だけだ。「内部に銃を向けている」という大統領の露骨な表現以外に、特に国民の記憶に残るものはない。

 最重要省庁である教育部と保健福祉部の長官がまだ空席であることも、過去の政権ではみられなかったものだ。歴代のすべての政権が初の内閣人選で2、3人の首相候補または長官候補の脱落を経験したが、今のように5人の長官または長官級候補が相次いで辞め、最重要省庁が空席のまま発足100日を迎えるのは異例だ。外交統一政策はどうか。米国からの圧迫と中国からの脅し、日本の冷淡な態度と北朝鮮の激しい攻勢の中で、どうすることもできない四面楚歌の境遇に追い込まれている。尹大統領に「ロシア・スキャンダル」はないものの、一夜にして大統領室を移すほど巫俗の影響力が強いという疑念は、後々まで政治的リスクを増大させるだろう。

 韓国に大統領令はないが、政府施行令で国会の立法を無力化することはできる。行政安全部が長官の施行令で警察局を新設したことや、ハン・ドンフン法務部長官が検察庁法施行令を改正して検察の捜査権を復活させたことは、トランプの大統領令強行と特に違いはない。就任100日を迎えたトランプの国政支持率は40%(ギャラップ調ベ)だった。尹錫悦大統領の支持率は、これよりはるかに低い28%(韓国放送-韓国リサーチ調べ)だ。違わないのは、「世論調査は信じない」(トランプ)、「世論調査に一喜一憂しない」(尹)という両大統領の精神勝利だ。

 尹大統領は17日の記者会見で、過去100日間の成果と業績を強調しただけで、省察と変化の意志は示さなかった。「前政権の誤った経済政策を廃棄し、経済基調を正常化し、常識を復元し、自由・人権・法治という普遍的価値を守り抜いた」という彼の話を聞いていると「我々ほど仕事ができた者は過去にはいなかった」と語ったトランプの傲慢と独善を見ているようだ。その結果がどのようなものだったかは、私たちの誰もがよく知っている。

//ハンギョレ新聞社

パク・チャンス|大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1055090.html韓国語原文入力:2022-08-17 16:06
訳D.K

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