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[コラム]ペロシ米下院議長の「危険な」訪問

登録:2022-08-03 07:39 修正:2022-08-03 09:01
Jaewoogy.com//ハンギョレ新聞社

 1995年6月、台湾の李登輝総統が、母校のコーネル大学での演説を理由に米国を訪問した。クリントン政権は、中国との関係を考慮して李総統にビザを発給しないようにしたが、米国上下院がビザ発給を要求する決議を賛成396票・反対0票で通過させ、政権を圧迫した。李総統が米国を訪問して帰った後、中国人民解放軍は7月から台湾に近い海域にミサイルを発射し、海兵隊の上陸訓練を実施するなど、大規模な軍事的報復に乗りだした。クリントン政権はこれに対応し、空母ニミッツとインディペンデントが率いる巨大空母戦団を台湾海峡に派遣した。ベトナム戦争以来、米国が東アジアに配備した最大規模の兵力だった。1996年3月の台湾総統選挙を控え、中国軍は、核弾頭搭載が可能な弾道ミサイルを台湾に近い海域に発射するなど、“北風”で脅した。台湾世論に逆風が吹いた。李総統は圧倒的得票で勝利した。1997年には米国のニュート・ギングリッチ下院議長が台湾を訪問し、李登輝総統と対面した。

 「第3次台湾海峡危機」と呼ばれるこの状況は、米中関係の重要な分水嶺だった。1955年と1958年には、中国軍が台湾の金門島に大規模な爆撃を浴びせて始まった第1次・2次台湾海峡危機があった。ところが、米国と中国は1979年の国交正常化以降、ソ連に対抗する準同盟状態で緊密になり、1989年の中国軍による天安門デモ武力鎮圧と1991年のソ連崩壊によって遠ざかり始め、1995~96年の台湾海峡危機で不信が深まった。中国の指導部と軍は、米国の圧倒的な軍事力を前に最終的には退いたが、切歯腐心し、米国に比べ劣勢な海軍力を補う準備を始めた。世界最大規模の潜水艦艦隊の建設、機雷蓄積、米国空母を脅かせる対艦弾道ミサイルの開発に拍車をかけた。台湾海峡に米国の軍事力が接近できないよう、潜水艦とミサイルと機雷で“万里の長城”を築いた。

 27年が経過した現在、東アジアにおける中国の軍事力は米国を超えたという分析が少なくない。強力な軍事力をもとに台湾との統一を実現し、「中華民族の偉大な復興」を成し遂げるという約束は、中国の習近平国家主席の統治の正当性の核心であり、数カ月後に開かれる中国共産党第20回党大会で習主席が長期政権の道に進む重要な名分だ。

 このように敏感な時期に、米国の権力序列第3位のペロシ下院議長が台湾を訪問するかどうかについては確答しないまま、先月30日(現地時間)、アジアに向けて出発した。下院議員になったばかりの1991年の北京訪問当時、天安門広場で天安門事件の犠牲者を称える横断幕を持ってデモを行ったペロシ議長は、「台湾支持」という政治的遺産を残そうとしている。訪問の可能性がいっそう高まったようにみえる。

 ペロシ議長が実際に台湾を訪問する場合、台湾問題について「火遊びをすれば、必ず火に焼けて死ぬ」と警告した習近平主席と中国軍の対応は激烈だろう。中国軍は「第3次台湾海峡」危機の際に米国から受けた雪辱を晴らす好機と感じる可能性もある。台湾海峡における中国の軍事的脅威は、以前とは別次元で展開されるだろう。後日の歴史が現在を「全員が愚かな戦争に向かい歩いていった時期」だったと記録するのではないか、心配になる。

パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1052951.html韓国語原文入力:2022-07-31 18:49
訳M.S

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