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[寄稿]「地球上最も危険な地域」台湾の機会とリスク

登録:2022-08-01 07:06 修正:2022-08-01 08:01
王信賢|台湾国立政治大学東亜研究所所長
昨年10月10日、ある市民が台湾の台北で開かれた建国記念日の行事で台湾の国旗を掲げている/AP・聯合ニュース

 東アジアの3大火薬庫と呼ばれている朝鮮半島・南シナ海・台湾海峡のうち、最近は台湾海峡に全世界の関心が集中している。昨年4月、英国の週刊誌「エコノミスト」は、カバーストーリーとして「地球上で最も危険な地域」というテーマで台湾を扱い、日本は過去2年間の防衛白書で「台湾情勢の安定は日本の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとっても重要」だという点を強調した。先日死去した日本の安倍晋三元首相は「台湾有事は日本有事」だと述べ、米国のジョー・バイデン大統領も、台湾防衛に何回も言及した。欧州連合(EU)議会も、台湾海峡の平和の重要性を強調した。2月にロシアがウクライナを侵攻した後、台湾問題はよりいっそう激しくなり、「今日はウクライナ、明日は台湾」というテーマが、国内外のメディアや台湾内の政治攻防の主要な話題になった。

 この問題に関する私の見解は、次のとおりだ。まず、2016年の台湾総統選挙で「中国に反対する」民進党が勝利した後、両岸関係は凍りついた。2020年1月に民進党が再度勝利し、コロナ禍まで発生すると、中国当局は台湾に対して「西側について図体を膨らませている。伝染病を口実に独立を企てている」と批判した。中国共産党の指導者の台湾関連の談話は依然として「平和統一」を中心としてはいるが、ここ数年間、人民解放軍の軍用機と軍艦がたびたび台湾を旋回し、軍用機は海峡の中心線を飛行している。中国の軍用機が台湾南西部の防空識別圏(ADIZ)を日常的に行き来するのは、中国内部から出続けている「台湾武力統一」の主張とかみ合って、両岸関係をよりいっそう緊張させている。

 次に、中国の観点でみる場合、台湾海峡問題はすでに単純な中国と台湾間の問題ではなく、中国の国家発展戦略と米中戦略の一部であり、中国の総体的な国家の安全保障とも関わっている。中国の習近平国家主席は就任後、「二つの100年」計画を打ち出した。一つ目の100年は2021年の中国共産党「創党」100年で、二つ目の100年は2049年の中華人民共和国「建国」100年だ。その目標は、中国を社会主義の現代化強国として建設し、中華民族の偉大な復興を完成することだ。特に台湾問題は、中国共産党が二つ目の「建国」100年を完成する主要な指標となった。習主席は「台湾は民族復興における地位と役割を真剣に考慮しなければならない。台湾問題は、民族的な脆弱性と混乱で始まり、民族復興として必ず解決されるだろう」と述べた。中国共産党は、台湾問題を国家発展戦略の一環として規定しており、そこから手を引くことは事実上不可能だ。

 米国と中国は、2018年3月から経済・貿易、技術、戦略などで全面的な競争を繰り広げており、さらに「ワクチン外交」でも競争している。台湾問題は、米中の戦略競争で重要な点であり前哨基地でもあるため、中国は台湾問題を米中関係の「最優先課題」と考えている。中国共産党の台湾政策が「外部からの干渉に反対」を繰り返し強調するのもそのためだ。先日のバイデン大統領と習主席の電話会談の内容の大部分は台湾海峡の緊張に関するものであったし、米国のナンシー・ペロシ下院議長の今回のアジア歴訪に台湾が含まれるかどうかについても、米中の主要な争点になっている。

 台湾は強大国間の最も重要な安全保障問題になり、台湾海峡は「地球上で最も危険な地域」と呼ばれている。これは、台湾にとって最良の状況だが、同時に最大のリスクでもある。台湾は薄氷の上を歩くように注意し、慎重でなければならない。米中競争の構図において台湾問題は、主権、安全保障、発展など中国の重要な利益に関わっている。台湾問題は最も容易に触れられる敏感な神経であり、国際社会の注目度は非常に高い。一方で、強大国の競争のもとで争われるあらゆる問題は、各国の利益のために容易に交換可能なチップでもある。小国として常に捨てられることがありうるという「同盟のジレンマ」が、台湾が直面する最大のリスクだ。

//ハンギョレ新聞社

王信賢|台湾国立政治大学東亜研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1053001.html韓国語原文入力:2022-08-01 02:35
訳M.S

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