世界最大のソーシャルメディアであるフェイスブックが、より多くの収益を上げるために、政治的二極化や社会不安を助長する情報の拡散を放置しているという内部告発者の暴露が波紋を呼んでいる。
グーグルなどでも働いていた経歴を持つ情報通信(IT)専門家のフランシス・ホーゲン氏は、2019年から今年5月までフェイスブックに勤務していた。同氏は、友人がSNSのフェイクニュースにはまって極右的な考え方に変わったことに衝撃を受け、フェイスブックの「市民真実チーム」に志願した。そこでは、全世界の選挙関連の政治掲示物がプラットフォームでどのようにフェイクニュースを作り、政治的に悪用されるのかなどを調査する業務を担当した。しかし、フェイスブックが解決策を見出そうとするのではなく、調査結果をどのように収益事業に利用するかを考えているのを見て、フェイスブックの世論操作に関する資料を収集し続けたという。
ホーゲン氏が提供した資料をもとに、最近「ウォール・ストリート・ジャーナル」が「フェイスブック・ファイル」と題する企画報道を行った。3日(現地時間)には米国CBSの時事番組「60ミニッツ」にハウガンさんが出演し、フェイスブックやSNSが私たちの暮らしをどのように変えてきたのかを実名で暴露した。同氏は、フェイスブックは憎悪、暴力、虚偽情報などを含むコンテンツが広がることを故意に放置し、このような行為を隠蔽していると主張した。フェイスブックは、アルゴリズムを安全なものに変えれば、このようなコンテンツを遮断できることを知りながら、利用者がプラットフォームに滞在する時間が減り、広告収益が悪化することを懸念して、それを行っていないとも語った。同氏は、フェイスブックは2020年の米大統領選挙を前にフェイクニュースに対する批判世論が高まったことから、偽情報の拡散を防ぐアルゴリズムを導入したが、選挙が終わると利潤拡大のために再び前のシステムに戻したとし、こうした行為は「民主主義に対する裏切り」だと述べた。
またフェイスブックは、子会社のインスタグラムが10代の少女たちの不安、うつ病、自殺衝動の増加に影響を及ぼすことを把握していたのに、対応するどころか、むしろ13歳以下の児童向けのインスタグラムの開発を進めたという。ホーゲン氏は「フェイスブックでは公共の利益と会社の利益が繰り返し衝突するが、フェイスブックは収益を最大化する選択をしてきた」と述べた。同氏は5日に米上院の聴聞会で証言する予定となっており、さらなる暴露も予告している。
ホーゲン氏の証言は、私たちが普段SNSに対して感じてきた問題の原因を明確に説明してくれる。フェイスブックやユーチューブなどのプラットフォームを基盤として、憎悪や嫌悪を煽る極端な扇動とフェイクニュースが幅を利かせている事態は、他人事ではない。にもかかわらずプラットフォーム大企業は「アルゴリズムの選択」という防御壁の後ろに隠れて責任を回避しつつ、ますます多くの収益を上げている。与野党は先月29日、国会に「言論・メディア制度改善特別委員会」を設置し、言論仲裁法だけでなくユーチューブや一人メディアによるフェイクニュース問題なども扱うことで合意した。SNSでのフェイクニュースと虚偽情報の氾濫は民主主義に対する脅威であるということを明確に認識し、実効性のある対策を早急に立てるべきであろう。