韓国与党の共に民主党と野党の国民の力は8月31日、言論仲裁法関連の「8人協議体」を構成し、改正案を論議した後、秋夕(旧暦8月15日の節句、新暦では今年9月21日)の連休直後の今月27日に本会議に上程することで合意した。言論仲裁法改正案の処理をめぐり、極端な対立へとエスカレートした与野党が、合意処理のための時間を稼いだことは幸いだ。さらに、政界の外に範囲を広げ、協議の枠組みを設けることにしたのも歓迎すべきことだ。しかし、争点の事案を扱う場として、8人協議体の人的構成と活動期間が十分なのかは疑問だ。また、国会内に特別委員会形式の社会的協議機関を構成すべきという市民社会の要求を受けいれられない事情は見当たらない。そのため、与野党のさらなる議論が必要だ。
この日の合意は、両党が名分を失わず、国会が破局に向かうことに伴う負担を避けるための政治的計算によるものという側面も少なからずある。共に民主党は「巨大与党の独走」とする世論の逆風を懸念せざるを得なかったのだろう。言論改革運動陣営まで「懲罰的損害賠償制」などの一部の条項の悪用の可能性をみて強行処理に反対した状況であり、このまま強行を続けると、来年の大統領選挙で有権者が離れかねないという危機感が作用したものとみられる。国民の力もまた、言論改革の必要性に対する国民の要求が厳然としてある現実を無視したまま、代案もなしに反対だけを続けることはできなかったのだろう。今後、8人協議体の構成と運営をめぐり、再び政治的な利害ばかりに没頭するのであれば、世論の強い逆風を浴びるであろうことを、両党ともに念頭に置いてほしい。
共に民主党と国民の力はこの日の合意が、言論仲裁法の議論を経ながら、言論改革が時代の課題に浮上した状況から出てきた事実であることを明確に認識しなければならない。言論改革運動陣営は、両党が作った狭い枠組みの中から制限された声を出すしかない条件のもとでも、言論改革の必要性だけでなく、大きな図を提示しようとする努力を続けてきた。公営放送の支配構造の改革、ポータルサイトのニュースサービス規制、「フェイクニュース」の生産と流通の強力なプラットフォームとして浮上したユーチューブなどのSNSの問題など、メディアの信頼回復と責務強化のための改革の懸案が山積している。これらは全て立法により後押ししなければならない課題だ。
合意案に従うのであれば、8人協議体は、両党からの議員2人ずつと、各自が推薦したメディア業界および専門家が2人ずつの合計8人で構成される。両党のこれまでの利害をそのまま代弁し拡大再生産する可能性が濃厚な構図だ。このような人的構成では、言論仲裁法の争点となっている条項についての合意すら容易ではないと思われる。相変わらず今の局面を両党の政治的な対決構図に縮小し見ていることを示す傍証でもある。現実政治の利害関係にとらわれない、言論改革についての専門性を備えた人物を、メディア業界団体の合意で推薦して参加させるのは特に難しいことではないだろう。メディア業界団体は、独自に社会的合意機関を設置する方針だという。国会の協議体の中に取り込めない理由はない。むしろ効率的だろう。
困難を経て設けられた協議体を、言論仲裁法改正案のいくつかの条項についてだけ活動させて終わらせるのが合理的だと見なすのも難しい。ひとまず決まった期限までの言論仲裁法改正案についての集中的な熟議を経て、言論の自由を侵害する懸念を遮断しながらも、悪意のある報道による市民の被害を救済できる精巧な制度を講じることになるが、これを機に言論改革についての主要な課題を決めて、十分な時間を設けて社会的な合意を導きだせる協議体を発足させることも、技術的に何の問題もないと思われる。時代的な課題として浮上した言論改革を成し遂げるのにどちらがふさわしいかは、いうまでもない。
メディアの責任も重い。メディアが信頼ではなく嘲弄の対象になっている間は姿も見せなかったのが、今になってメディア規制に反対の声を高めるのは、誰が見ても信用できない。せっかく迎えた言論改革の局面で中心的な役割を果たそうとするのであれば、自己改革に対する覚悟をさらに固めなければならない。