今月11日は、イスラム主義国際武装組織アルカイダが起こした9・11同時多発テロから20年目の日だった。米国のジョー・バイデン米大統領は同日、国家統合を強調し、韓国、英国、フランスなどの首脳は犠牲者を追悼し、テロ撲滅を誓った。先月末、米軍がアフガニスタンから撤退し、中東での「20年戦争」が幕を下ろし始めたため、同日の追悼行事には国際社会の注目が集まった。アフガニスタンからの撤退は米国の世界戦略の変化を端的に示しており、国際秩序の変化を綿密に分析して、激変期を切り抜ける韓国の安保戦略を模索しなければならない。
「世界は2001年9月11日以前と以後に分けられる」と言われるほど、同時多発テロは朝鮮半島と国際社会に大きな影響を及ぼした。「テロとの戦い」に乗り出した米国は2002年1月、北朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と見なした。当時、米国のラムズフェルド国防長官は、具体的な証拠もなく、北朝鮮がアルカイダに生物化学兵器を提供した可能性にも言及した。米国が対北朝鮮強硬策に固執したことで、南北関係と朝米関係が困難に直面する場面もしばしばあった。
米国が、イラクとアフガニスタンで20年間行なった「テロとの戦い」は失敗した。タリバンはアフガニスタンで再び政権を獲得し、アルカイダとイスラム国(IS)も健在だ。米国は戦争のために大規模な国債を発行して莫大な借金を抱えており、国内の不平等が深まった。世界各地でムスリムをテロ・暴力勢力と見る認識が高まり、ムスリムを嫌悪する雰囲気が強まった。
米国はアフガニスタンから撤退することで、中国とロシアを牽制するとともに、国内経済再建に力を集中するという意向を明らかにした。今年1月のバイデン政権発足後も、米国は攻勢的なインド太平洋戦略を展開している。米中の対立が激化し、国際社会の懸念が高まっている。こうした状況で、今月10日、バイデン大統領と中国の習近平国家主席が電話会談を行い、両国関係の対立の管理が必要だということで共感したことは注目に値する。両国は「米中の競争が衝突につながるのではないか」という世界の懸念を重く受け止めてほしい。
米中競争だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大による危機、気候変動への対応なども相まって、国際秩序が急変している。韓国政府当局は、バイデン政権の戦略変化が朝鮮半島に及ぼす影響を徹底的に分析し、具体的な対策づくりに取り組まなければならない。政界も、大統領選挙の局面で国内の懸案ばかりに没頭せず、国家安保戦略の公論化に力を入れなければならない。