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[コラム]ブルカの復活はタリバンだけの問題ではない

登録:2021-09-09 07:18 修正:2021-09-12 20:54
アフガニスタン女性の人権の問題を、タリバンと都市で社会活動をする女性の間の関係だけを基準に論じているのではないだろうか。教育と社会活動を夢見ることもできない70%のアフガニスタン女性を助けようとするならば、タリバンにだけ女性の人権を促すことはできないだろう。
7日(現地時間)、タリバンが再び権力を握ったアフガニスタンの首都カブールで、私立大学に通う女性が男性とカーテンで分けられ授業を受けている。タリバンは第1次政権(1996~2001)の時とは異なり、女性の教育は許すが男性と分離した教室を使わなければならず、目だけを出せるニカブを着用しなければならないと明言した。しかし、この日の女性たちは顔全体を出すヒジャブをかぶったまま授業を受けていた=カブール/AFP・聯合ニュース

 アフガニスタンにおける女性の人権は、タリバン登場の前に問題になった。

 1978年に樹立した社会主義政権は、非識字者打破のための女性への義務公教育、新婦持参金の廃止、婚姻の自由を宣布する一方、土地改革などを発表した。当時の人口の90%以上が住む非都市地域の封建的な部族社会の秩序を解体しようとした。特に、土地改革と女性の権利の拡大は、封建的な部族秩序の既得権者と部族民のすべてに激しく抵抗され、蜂起につながった。

 米国とパキスタンはただちに蜂起に介入し、社会主義政権が危うくなると、ソ連も軍事介入した。アフガニスタンで43年間も続いた戦争の原因の一つには、女性の権利拡大があったわけだ。国際社会は、蜂起がソ連に反対する排外闘争であり、イスラム世界のジハード(聖戦)として展開することにだけ関心を持ったが、女性の人権や土地改革には初めから注目しなかった。

 それでも、1992年まで続いた社会主義政権で、女性の進出が飛躍的に増えた。タリバンがカブールに入城した1996年には、医者の40%、公務員の60%、教師の70%が女性だった。問題は、このような女性進出が、社会主義政権の統治力が及んだカブールなどの大都市に限定されていたということだ。

 アフガニスタンは以前から、中央権力が直接及ぶ首都カブールと、封建的な部族社会の権力秩序が作動する非都市地域で二つに分かれていた。戦争は都市と非都市の分離と格差をさらに広げた。社会主義政権下の大都市では、現代化の恩恵を享受し女性の進出も活発になったが、ムジャヒディン運動が掌握した非都市地域では、戦争に苦しめられ、封建的秩序が温存された。2001年の米国のアフガニスタン侵攻後も、そのような都市と非都市の分離と格差は広がった。米国は数千億ドルの開発支援を投入したが、それはそのまま、彼らの統治力が及ぶ大都市とその周辺地域だけに向けられた。

 しかし、戦争の被害を受ける非都市地域の住民にとっては、ソ連や米国が掲げる名分や改革はむしろ憎悪の対象になった。過去43年間、非都市地域の女性には、ソ連軍の攻撃用ヘリMi-24Dの機銃掃射、軍閥の性的暴行・拉致・人身売買・通行料徴収、米軍のドローン攻撃から、自分と親や子どもが生きのびることが重要だった。学校もなく、家の外に出れば安全が脅かされる彼らには、教育と社会活動は大した意味はなかった。むしろ、タリバンの登場は、彼らには戦争の無秩序を清算し、それなりに調和がとれた伝統的秩序の回復として受け入れられた。

 タリバンが登場した時点では、サウジアラビアでも女性の状況は戦争を除けばアフガニスタンと同様だった。タリバンの創立者のムラー・オマル師は、サウジアラビアが自分たちの理想郷だといった。当時の米国にも他の西側諸国にも、サウジアラビアの女性問題を取りあげる声はなかった。しかし、アフガニスタンに対してはこれを戦争の名分にまでした。

 2001年10月、米国のアフガニスタン侵攻直後、民主党のキャロライン・マロニー下院議員は初めてブルカを着て議会で発言した。彼女はブルカを着ると息をするのも大変だと述べ、「この戦争は遂行しなければならない戦争」だと叫んだ。米国のムスリム女性活動家のラーナ・アブデルハミド氏は、8月16日付のツイッターに、マロニー議員の当時の写真を載せてこう書いた。「私が9歳の時、ある女性議員がブルカをかぶりアフガニスタン侵攻を正当化する発言をするのを見た。私はムスリム女性として、私のアイデンティティが米国の戦争を正当化する武器になり得ることを知った。20年がたち、私たちは何を成し遂げたというのだろうか」

 戦争は社会を切断する。タリバン統治下では、カブールの700人ほどの女性ジャーナリストのうち100人ほどが職場に出勤し、政府樹立の際には女性は閣僚級より下の職級で起用され、女性には男女分離の大学教育が許され、女性がデモをすると強制鎮圧され、強制鎮圧に関与したタリバン隊員が逮捕されるというニュースが流れてきた。これについて、タリバンは今もなお抑圧的だともいわれ、変わったともいわれる。

 確かなのは、アフガニスタンで封建的な秩序のもとで暮らす70%の非都市女性には、そのような論争は特に意味はないということだ。タリバンが再び権力を握ったことによって、都市部で活動していた女性が恐怖と懸念を感じるのは当然だ。しかし、アフガニスタン女性の人権問題を、タリバンと都市で社会活動をする女性の間の関係だけを基準にして論ずるのは、マロニー下院議員が犯した過ちを繰り返すことになりうる。教育と社会活動を夢見ることもできない非都市地域の女性にとって最も切実な戦争の完全な終息と再建、彼女たちを実質的に助けることのできる方法は、タリバンに女性の人権を促すだけで可能な問題ではないだろう。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1010946.html韓国語原文入力:2021-09-09 02:33
訳M.S

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