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[朴露子の韓国・内と外]韓米同盟、本当に問題はないのか

登録:2021-06-01 20:39 修正:2021-06-02 00:20
同盟の上位パートナーである米国が北東アジアでの現状維持を望んでいる限りは、韓米同盟は下位パートナーである韓国の安保を保障すると言えるが、米国が地位の上がった中国に対する牽制など現状維持以外の目的を宣言した瞬間、下位パートナーである韓国の立場は自然と困難になる。
イラストレーション キム・デジュン//ハンギョレ新聞社

 30年前の1991年、私が初めて韓国に来た時は、「米軍撤収」を叫ぶ学生デモ隊を何度もこの目で見た。その時代にはかなりありふれたスローガンだった。あの時、そのスローガンを叫んだ自称「愛国愛族」学生たちは、今はどこで何をしているのだろうか。おそらく、そのうちの一部はこんにち大統領府で韓米同盟を強化すべく外交日程を管理したり、今回の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の訪米の成果について「韓米同盟の新紀元」のような論調のマスコミ記事を様々な新聞社で書いているだろう。今回の大統領の訪米は、多くの成果があったのは事実だが、それを報道する記事を見ると韓米同盟の本質的な問題点に対する熟考がみられない。はたして、今や確固たる韓米同盟強化論者になった往年の「運動圏」(主に80年代以降、民主化運動をはじめ各種の社会運動に携わった人々)たちは、多少なりとも過去の自分たちの主張を再確認し、その主張の論拠が今も有効なのか考えてみる用意はあるのだろうか。

 30年前に「運動圏学生」たちの怒りを買ったのは、韓米同盟の顕著な非対称性だった。国家主権は主要な近代的価値の一つだが、韓米同盟は韓国の国家主権に対する相当な侵害と思われるほど不公平に見えた。実際、1994年以前まで戦時作戦統制権はもちろん、韓国軍の平時作戦統制権まで米軍の手に掌握されていた。現在は多少緩和されたが、韓米同盟の本質的な不平等は変わっていない。例えば、韓国の対北朝鮮政策については韓国国民が選出した大統領がいちいち米国と調整しなければならないが、米国は対中国や対ロシア政策について韓国政府の意見は聞くふりすらせず、また、する必要も感じていない。韓国政府は2003年12月に盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権がイラク派兵を裁可した後、米国が要求した韓国軍の海外派兵を事実上一度も断ったことがない。2003年当時、文在寅氏は盧武鉉政権の民情首席としてイラク派兵に反対したと言われているが、その文在寅氏は昨年大統領としてホルムズ海峡派兵に賛同した。いや、賛同するしかなかったという表現がふさわしいだろう。韓米同盟の本質的な構造上、そうした状況で米国に「ノー」と言うことは実質的に不可能に近いということだ。

 ある人は、鉄や石のように堅固な安保のためならば、不公平な同盟と主権の制限を容認するのも致し方ないのではないかと反問することもあるだろう。もちろん主権を絶対視する必要はないが、主権の制限の状況は長期的には相当なリスクを内包する。同盟の上位パートナーである米国が北東アジアでの現状維持を望んでいる限りは、韓米同盟は下位パートナーである韓国の安保を保障すると言えるが、米国が浮上する中国に対する牽制など現状維持以外の目的を宣言した瞬間、下位パートナーである韓国の立場は自然と困難になる。数日前、韓米両国が首脳会談の共同声明で台湾問題に初めて言及したことに対して、中国が強力に反発したことが、この事実を雄弁に語っている。中国や韓国の一部で台湾問題は中国の内政問題に該当するだろうが、米国の立場では、中国牽制戦略の一環として台湾単独政府の持続を保障することを望む。この問題では韓国と米国の立場はそれぞれ違うが、対北朝鮮関係の進展に米国の同意を引き出したい韓国政府としては、やむを得ず北東アジア地域全体に関係する問題で否応なく米国の視点をそのまま共有しなければならないというのが、現在の韓米同盟の構造だ。今後、米中対立が現在より尖鋭化した場合、このような同盟の構造において、はたして韓国はどんな外交・貿易次元の不都合さと危険を甘受しなければならないのか。

 30年前に「運動圏」と対立した保守側は、韓米同盟の最も重要な存立根拠として「北朝鮮の脅威」を挙げていた。北朝鮮の核とミサイルのために今もたびたび繰り返される主張だが、一方では、北朝鮮の名目国内総生産(推算約35兆3千億ウォン)が韓国の今年の国防予算(52兆8401億ウォン)の70%にしかならないということも良く知られていることだ。2021年現在、韓国の軍事力は世界6位と評価されるが、北朝鮮は28位だ。つまり、主に対米防衛用である核とミサイルを考慮しても、「対北朝鮮抑制力」という次元で現在のような米軍の韓国内駐留まで含む韓米同盟が絶対に必要だという主張は、いかんせん“無理な主張”に聞こえる。それでは、若かりし時代に「米軍撤収」を叫んでデモに繰り出したこんにちの韓国の自由主義的政治家たちが、韓米同盟強化路線を採択する真の理由は何だろうか?

 多くの分析家たちは、かつて中国中心の朝貢体制に編入されていたが抜け出した国家や、中国系の人口が多い中国の周辺国家が、中国の「浮上」に備える次元で最近、軍事部門を含む対米協力に力を入れているとみている。一時は米国の侵略で荒廃したベトナムも、10年前からは米国との軍事協力を始めており、2016年以後は米国から武器を購入できるようになった。シンガポールも2015年から米国と拡大した軍事協力協定書を締結し、米軍偵察機がシンガポール軍事飛行場を利用したり、米国軍艦が停泊することなどを容認している。伝統的に米国でなく英国に依存してきたマレーシアも最近、米国の先端兵器を大量購入するなど、中国の浮上に備えて一種の“保険”に加入する姿を見せている。すなわち、韓国だけでなく領域内の一部の他の国家も、中華主義または中国の地域的ヘゲモニー復活の可能性を意識して、米国により積極的に接近する姿を見せている。ところが韓国とは違い、シンガポール、マレーシア、ベトナムは米国と中国という二つの超強大国の“間”をはるかに効率的に航海し、両側から実益を取ることができる。東南アジアのこの3つの国は、米国との軍事関係を補強する一方、中国との軍事関係も維持している。排他的「同盟」である韓米関係の現実からは想像できない形態だ。

 一つだけ誤解しないでいただきたい。私は現時点で韓米同盟の“解体”のようなことが現実的に可能だとは思っていない。韓国軍などの米軍との癒着程度も簡単に切ることができないくらいきわめて強固であり、世論調査のたびに90%以上の韓国人が韓米同盟支持を表明しているのも現実だ。この現実を直視して、韓米同盟の問題点も合わせて真剣に考慮してみる必要がある。米中間のあつれきに韓国まで不必要にまきこまれる可能性もある。また、現在のような韓米同盟構造の中で、南北間の信頼構築と相互軍縮、引いてはゆるい国家間の連合のような形態の統一の道がはたして開かれるのか、疑問を感じざるをえない。いくら韓米同盟強化論が主流だとしても、この同盟に対する問題意識を放棄してはならない。

//ハンギョレ新聞社
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大学教授・韓国学(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/997591.html韓国語原文入力:2021-06-01 17:29
訳J.S

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