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[朴露子の韓国・内と外]2020年、欧米圏ヘゲモニー時代の終末と韓国

登録:2020-12-10 09:40 修正:2020-12-10 11:15
2040~50年代ごろにはほぼ250年続いた欧米圏の覇権は終焉を迎えるだろう。もはや2010年代が終わりを迎え、欧米圏ヘゲモニーの終末もいよいよ視野に入ってきた。アジア時代の世界的な主要国の一つとして浮上している韓国は、米国の新自由主義モデルから完全に抜け出し、環境にやさしい福祉国家として進まない限り、自国民に幸福をもたらすことも、外の世界に模範を示すこともできないだろう。
イラストレーション=キム・デジュン//ハンギョレ新聞社

 2020年も暮れに近づいている。これで2010年代が終わりを迎えることになる。もっと広い目で見れば、コロナ騒ぎのさなかで、いくつかの他の「終末」が今後の世界史的な流れを決定づけるだろう

 まず、1945年以降に戦後修正資本主義が生んだ「中産階級社会」は、新自由主義の危機の中で破綻を迎えた。この破綻が最も可視化したのは、新自由主義を世界的に先導してきた米国だ。一方で、最上位1%の米国人の税控除前の所得が全体の所得に占める割合は現在19~20%ほどになる。この割合は1960年代までをとっても10%にすぎなかったが、今のようになったのは両極化が激しかった1910~20年代の水準に回帰したことを意味する。しかしもう一方では、ますます多くの最下位層の米国人が「飢餓」状態に陥っている。1930年代初めの大恐慌時代のようにだ。信じられないことだが、テキサス州のヒューストンでは現在、児童の4人に1人がしばしば金がないために飢えに苦しんでいるほどだ。米国全体では総人口の約8分の1が少なくとも断続的に飢餓にさらされている。資本主義世界の宗主国である米国は、再び戦前の時代のように、別天地に住む富裕層と、減り続ける中間階層、そしていつ飢餓状態に陥るか分からないまま不安に怯える、増え続ける中下層および下層に分かれた状態だ。

 二つ目に、戦後の「中産階級社会」とともに、欧米圏の世界的ヘゲモニーもいよいよ本格的な終末を迎え始める。「中産階級社会」は1945年以降に生まれたが、欧米圏のヘゲモニーは18世紀末、奴隷貿易と奴隷労働を搾取するサトウキビ農場の経営などで蓄積された資本を源泉にし、英国が工業化を初めて成し遂げたことから始まった。しかし、現在「工業」に限ってみても、世界の製造業の総生産でアジアが占める割合(約52%)は欧州全体と北米を合わせた欧米圏(40%)をはるかに上回る。現在の英国の工業生産量は、韓国の製造業生産量の60%程度にすぎない。アジアはいまや18世紀半ば以来改めて世界の「生産」の中心となっている。いま米国のような欧米圏の代表走者が、かろうじて今も世界的な優秀性を保有する分野といえば、金融や軍事、もともと軍事と結びついて成長した一部の情報技術、学術、そして芸能ぐらいだ。しかし、学術をとってしても、すでに2年前に中国の学者が世界的な科学・技術分野の学術誌論文の20%を占めているのに対し、米国の学者は16%に過ぎなかった。芸能で言っても、私が知っている多くのロシアやノルウェーの若者たちは、いまの米国のポップスよりも韓国のK-POPのほうにずっと親しんでいる。軍事的優位は米国の保有する「最終カード」だが、このカードの有効期限も約20~30年以内に切れる可能性もある。海軍軍艦の保有隻数から見れば、中国海軍はすでに米海軍を上回っている。総じて言えば、おそらく2040~50年代ごろにはほぼ250年続いた欧米圏の覇権は終焉を迎えるだろう。もはや2010年代が終わりを迎え、欧米圏ヘゲモニーの終末もいよいよ視野に入ってきた。

 三つ目に、アジアの開発が欧米圏の独占権を崩壊させると同時に、気候危機が深刻化する過程で「開発」自体が反省の俎上に載せられている。もしも世界の平均気温が2100年までに3度ほど上昇すれば、中国の上海は恐らく巨大な浸水の危険に直面し、その地域に居住する住民1700万人が気候難民となる確率が高い。中国がいまの計画どおり2049年頃に世界最強の大国になるとしても、気候の惨事は歴史的成就をほぼ無意味にするだろう。差し迫った気候の惨劇は、世界の進歩派のパラダイムをこの10~20年間で劇的に変えた。歴史的に20世紀の進歩派は「開発」への執着を保守派と同じく共有してきた。分断時代の朝鮮半島をとっても、重工業中心の産業化はむしろ北朝鮮の方が韓国よりもはるかに早く実現した。ところが、もはや進歩派は低開発地域の開発、そして産業化の果実をより平等に分配するとともに、地球的生産総量の制限、すなわち世界的規模の「脱成長」を叫ぶほかない。これまで開発の機会を奪われてきた地域には、その機会が与えられる権利があるが、すでに産業化された地域では、気候変動など生態系の問題を意識して生産総量を凍結するか下方修正し、その結果をより同等に分けなければならない。すでに高度に産業化され、脱成長の理念が適用されるべき地域の一つが韓国だ。

 韓国の新自由主義への転換は、米国より17年遅れて実現した。米国と違い、製造業の空洞化現象もまだ明確には現れていない。そのため運よく米国のような規模の社会的破綻を免れることができている。だからといって安心できるわけではない。米国ほど飢餓にさらされている人口の割合は高くはないが、コロナ禍以前も韓国の高校生のうち約8%はしばしば食事を欠く欠食青少年だった。いまやコロナにまで襲われたことで、脆弱階層の状況はさらに悪化している。欧米圏の覇権が弱まりつつあるこの時代に、アジアの他の新興産業社会とともに韓国も世界の新たな中心として浮上したが、この国際的地位の大々的な向上だけで多くの韓国人たちが自然と幸せになるわけでは決してない。富裕層や中位層・上位層が余裕資金をより多く持つようになったために、住宅価格も天井知らずに上がり続けている。そして大きく上昇した国際的地位とは対照的に、製造業大国である韓国は、気候対策に関する国際的義務をきちんと果たしていない。誤って大統領の地位に上ってしまった詐欺師の李明博(イ・ミョンバク)氏が、12年前から「低炭素グリーン成長」を約束していたが、現実は正反対だ。韓国の温室効果ガス排出量は増え続け、今や世界7位だ。1人当たりの排出量は、似たような産業構造を持つ日本やドイツよりむしろ高い。昨年、ジャーマンウォッチ、ニュークライメイト研究所、気候行動ネットワークなどが発表した「気候危機対応指数(CCPI)2020」によると、韓国は主な61の産業国のうち58位(26.75)で、ほぼすべての面で失敗している国である米国(18.60)くらい低い。

 アジア時代の世界的な主要国の一つとして浮上している韓国は、米国の新自由主義モデルから完全に抜け出し、環境にやさしい福祉国家として進まない限り、自国民に幸福をもたらすことも、外の世界に模範を示すこともできないだろう。一つの時代が終末を迎える今、韓国式生態型福祉国家モデルへの転換の長期的ビジョンを深刻に考えなければならない時に来ている。

//ハンギョレ新聞社

朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) |ノルウェー、オスロ国立大学教授・韓国学 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/973291.html韓国語原文入力:2020-12-09 02:38
訳C.M

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