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[ニュース分析]韓米、安全保障を超えた包括的な「グローバル同盟」へ

登録:2021-05-24 05:57 修正:2021-05-24 08:16
韓米首脳、両国関係を「グローバル同盟」に格上げ 
バイデン政権、韓国の役割と自主性を高める一方 
中国牽制においてより多くの役割を担うよう求める 
米国による“やむを得ない”選択への圧力、さらに増える可能性も
文在寅大統領が今月22日午後(現地時間)、米アトランタのSKイノベーションの電気車バッテリー工場を訪問し、紹介映像を視聴した後、挨拶の言葉を述べている=アトランタ/聯合ニュース

  21日午後(現地時間)、米ワシントンで行われた韓米首脳会談後に発表された共同声明は、70年間続いた韓米関係が、これまでとは全く異なる“新しい時代”に入ったことを知らせる里程標として歴史に記録される見通しだ。両国首脳は韓米関係が「地域および世界秩序の要(linchipin)」であり、その「重要性は朝鮮半島をはるかに超える」とし、韓米同盟が名実共にこれまでとは異なる“グローバル同盟”に格上げされたことを宣言した。これは今後韓国が担うべき役割と責任が、朝鮮半島と北朝鮮核問題という地域的制約を受けるものから、事実上の“中国牽制”を意味する民主主義・人権などの価値の実現▽国際的なルールの順守▽先端産業分野における協力など、広範囲な領域に拡大したことを意味する。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のジョー・バイデン大統領は同日の首脳会談の直後に公開した共同声明には、「韓米同盟は両国をめぐる国際情勢の変化に合わせて進化してきた。我々は地域および世界秩序の要であり、両国国民の平和と繁栄が続くようにするパートナーシップを追求している。バイデン大統領は両国間パートナーシップの“新たな1ページ”を開くため、文大統領をワシントンに迎えたことを光栄に思う」と書かれていた。

 両首脳が韓米関係が「新たな1ページ」に入ったと明らかにしたように、協力分野も以前より大幅に増えた。声明は韓米が伝統的課題である北朝鮮の核問題など朝鮮半島の問題だけでなく、南シナ海や台湾などインド太平洋地域の主要懸案や気候変動、新型コロナなどのグローバル課題、第6世代通信(6G)や半導体など先端産業における協力、人権と民主的価値の増進などでも力を合わせると明らかにした。同盟の地位の変化を反映し、言及する内容が多くなったためか、今回の共同声明は以前のもの(2017年6月30日)の倍近く長くなった。これを象徴するかのように、バイデン大統領は拡大会談を始める前の冒頭発言で、「(文大統領と)単独会談をしている時、あまりにも様々な問題について長く議論したため、スタッフから話が長すぎるというメモが何回も届いた」と述べた。

 文大統領は今回の首脳会談に続き、6月11~13日には英国のコーンウェルで開かれる主要7カ国(G7)首脳会議にも出席する。同会議が将来、韓国やオーストラリア、インドなどを包括する民主主義10カ国(D10)に成長するかどうかは明らかでないが、今後、韓国は高まった国際的地位に見合う自由民主主義世界の重要国として、以前とは異なる様々な責任と義務を求められるものとみられる。大統領府高官はこうした変化を「韓米同盟において一新紀元となるだろう」と表現した。

 韓米同盟のこうした変化は、ますます激しくなる米中対決の中、朝鮮半島という空間が占める独特な地政学的位置や半導体・バッテリーなど先端産業で韓国が占める地位などが反映された結果とみられる。しかし、なぜ“今この時期”にこうした変化が起きたのかを考えると、米中の戦略競争が影を落としている様子がはっきりと浮かび上がる。

文在寅大統領と米国のジョー・バイデン大統領が21日午後(現地時間)、ワシントンのホワイトハウスで首脳会談後に共同記者会見を行っている/聯合ニュース

 当初、今回の会談を控え、韓米両国ではバイデン政権が韓国を中国牽制のための協力体「クアッド」に参加するよう圧力をかけるとみられていた。だが、バイデン政権の選択はこのような見通しとは微妙に違っていた。韓国を無理に中国包囲戦線に引き入れる代わりに、同盟自体の地位を強化し、自主性を持たせることで、韓国自らが様々な地域的・世界的な負担を負うよう求めたのだ。

 韓国は今回の共同声明で、「国際秩序を乱し、不安定にさせ、または脅かすすべての行為に反対し、包容的かつ自由で開かれたインド太平洋地域を維持」するという決意を明らかにした。中国を鋭く批判した4月16日の米日共同声明と違い、中国を名指しすることはなかったものの、米国の中国牽制のために韓国が“重い”腰を上げたといえる。これにより、これまで事実上“対岸の火事”だった南シナ海や台湾など、極めて敏感な懸案に対し、高まった地位に見合う責任を果たすことを求められる立場に置かれることになった。韓国はさらに「韓米日3カ国協力の根本的重要性」と「クアッドなど開放的で透明で包容的な地域多国間主義の重要性」を受け入れ、米国が追求するインド太平洋戦略に歩調を合わせるという明確なメッセージも送った。文大統領は会談後の記者会見で、米国の中国牽制の要求に向けた圧力が強かったのではないかという趣旨の質問に対し、「幸いにも、そのような圧力はなかった」と答えたが、冷静に見て、これは半分だけ合っていると言わざるを得ない。

 また注目すべきなのは、米国が今回の会談で特に注目を集めていた北朝鮮政策などをめぐり、韓国が長い間求めてきた“独自性”を大幅に受け入れた点だ。バイデン大統領は「朝鮮半島の完全な非核化」に対する金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の誓約を含めた6・12シンガポール共同宣言だけでなく、「南北が共同繁栄と自主統一の未来を繰り上げる」ことを目指す4・27板門店宣言も受け入れた。また、「南北の対話や関与、協力に対する支持を表明」し、前任のドナルド・トランプ政権が最後まで認めなかった南北関係の自主性をある程度認めた。そのほかに、1979年に作られた韓米ミサイル指針を大胆に破棄し、韓国に対してミサイル射程と弾道重量の制限をなくす画期的な決定も下した。韓国自ら能力を養い、中国を牽制するよう道を開いたのだ。

 韓米同盟が今回の会談を通じて、米日同盟に匹敵する包括的同盟に成長したことで、両国関係も質的な変化を迎えるものとみられる。共同声明によると、炭素排出などの重要懸案で韓国の責任が強化された。これから中国と関連した様々な懸案において、より責任を持って米国と歩調を合わせるべきという圧迫にさらされる可能性がある。南北関係に進展がみられないのを“米国のせい”にすることもできなくなった。先月の米日首脳会談後、日本では共同声明で台湾問題に言及したことについて、「ルビコン川を渡った」(竹内行夫・元外務事務次官のインタビュー、朝日新聞4月18日付)と評された。文大統領の今回の会談も、韓国が“自らのルビコン川”を渡った決定的瞬間として歴史に記録されるかもしれない。

キル・ユンヒョン記者、ワシントン共同取材団(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/996276.html韓国語原文入力:2021-05-23 19:28
訳H.J

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