日本政府は先月13日、福島第一原発の敷地内のタンクに保管中の放射性物質に汚染された水を海に放出することを決めたと発表した。日本国内はもちろん、周辺国を含む国際社会の大きな憂慮と反対世論にもかかわらず、汚染水の海洋放出を公式化したのだ。
明らかに誤った政策であり、直ちに撤回されなければならない決定だ。特に、原爆投下と被爆のおぞましい結果を直に経験している日本が、誰よりも核と放射能に対する警戒心を持たねばならないにもかかわらず、このような決断を下したということには慨嘆に堪えない。韓国政府がこの問題に対して生ぬるい態度を見せる中、市民団体や学生、そして水産業の従事者が大規模な集会を開き、日本政府の汚染水放出決定を糾弾しているのは、せめてもの幸いだ。
放出前に複数回の浄化過程を経たとしても、汚染水の安全性に疑問が呈されている中で、国境のない海に汚染水を放出すれば、海洋生態系の破壊と環境汚染という結果をもたらすということは火を見るよりも明らかだ。原子力を用いた核発電が世界の電力の15%を占める中、核原子炉にかかわる放射能流出事故はいつ、どこででも起こりうる。日本の汚染水放出が認められれば、これに類似する事案の悪い先例を国際社会に残すことになるだろう。
米国と国際原子力機関(IAEA)が福島第一原発の汚染水の海洋放出決定を公に支持したことで、露骨に日本の決定を肯定する形勢が展開されている。米国も、偽善の極致を示す態度は非難されて当然だ。米国食品医薬品局(FDA)は、放射性物質による汚染を理由として、2011年3月から現在まで、福島とその近隣で生産される水産物の輸入を禁止している。
特に、就任初日のパリ条約への再加入表明や先月の世界気候サミットの主導など、環境問題に取り組む政策基調を示していたバイデン政権は、放射性物質が世界の海に拡散する汚染水の放出に賛成し、支持するというダブルスタンダードを示したことで、日本と共犯になるという事態を自ら招いている。
中国をけん制・封鎖するうえで日本の協力がいつにも増して重要になっているため日本を支持しているように見えるが、人類の普遍的価値である環境保護を政治の道具として用いているという非難は避けられないだろう。米国のグローバル・リーダーシップの回復を強調したバイデン政権のこのようなダブルスタンダードは、国際社会における米国のリーダーシップと道徳性に大きな傷を残すことになるだろう。
日本の福島第一原発の汚染水放出決定に対応して韓国政府は、南北協力を通じてこの問題を国際社会に問題提起すべきだ。最近、南北間での対話や協力がほとんどないのは事実だが、今回の事案が南北対話の再開と協力の機会となることを望む。ちょうど北朝鮮も労働新聞を通じて「日本の原発汚染水放出計画は反人倫的妄動」として撤回を求めているため、南北協力が難しくはなさそうだ。韓国と北朝鮮が海洋汚染について共同研究を行うとともに、南北の政府が協力して日本の行動を糾弾し、放出決定が撤回されるよう南北共同の勧告または決議を作成して、声を一つにして国際社会に訴える。そのような外交的努力が必要だ。
パク・ハンシク|米ジョージア大学名誉教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )