米国のエネルギー・通信企業エンロンは、2001年に約1500億円の利益を膨らませる方式で会計帳簿を操作して摘発された。この粉飾会計スキャンダルは、今も会計操作と言えば最初に言及されるほど、米国の先端企業の信頼を崩した一大事件として記録されている。
この事件の記録を詳しく見れば、貪欲に目が眩んだ最高経営陣が会計法人の黙認の下に、一般人には難しい“会計”という専門領域の陰でどれほど大胆に帳簿を操作したかに茫然となる。彼らは、会計規定上で特別目的機構(SPE)の持分率を97%以下にさえ維持すれば連結財務諸表の作成対象から除外されるという弱点を利用した。この関連会社を利用して、資金を借入れておきながら借入金を連結財務諸表から漏らす方式で利益を膨らませたが、その関連会社が何と数百に達した。
この会社の経営陣の傍若無人ぶりを示すエピソードを一つ挙げる。2001年4月、機関投資家とのカンファレンスコールが開かれた。ある証券アナリストが「エンロンは、貸借対照表が実際の収益と一致しない唯一の会社だ」と指摘した。これに対して代表理事のジェフリー・スキリングが立ち上がった。「うん、良い意見を出してくださってありがとう…このまぬけな奴め」。スキリングは、このような公開的な悪口を通じて、複雑な会計方式を理解できない奴、と面と向かって非難して困難な状況をまぬがれようとしたとみられる。
エンロン・スキャンダルが白日の下にさらされた決定的契機は、内部情報提供だった。副社長シェロン・ウトキンズはその年の8月、最高経営者ケネス・レイ会長に匿名で会計処理の問題点を要約した6枚の手紙を送った。しかし、経営陣が真実を覆い隠そうとするとウトキンズは、その手紙をマスコミに公開した。結局、エンロンはその年の10月に会計操作を自白した。
サムスンバイオロジックスの粉飾会計事件を、エンロンと直接比較することはできない。しかし、会計操作の規模(4500億円)とその大胆性では、エンロンに決してヒケをとらない。また多くの粉飾会計事件で、最高経営層の利害関係、会計法人の黙認という特性が露見するが、今回の事件も例外ではない。
サムスンバイオ側は、問題の会計処理について「国際会計基準に基づいて厳格に評価しなければならないという外部監査法人の立場を尊重し、またグローバル企業として会計の透明性向上という次元でこれを受け入れた」と明らかにした。会計法人の要請に従ったという説明だ。しかし、最近公開されたサムスンバイオの内部文書によれば、今回の事件はサムスン物産と第一毛織の合併時に第一毛織の株価適正性確保のためであることが明らかになった。すなわち、イ・ジェヨン副会長の経営権継承のために進行された合併案件と密接な関連を持っているわけだ。内部文書にはまた、国内4大会計法人の名前が登場するが、彼らの黙認は“サムスン帝国”の力によらずしては説明しがたい。
それでは、今回の件は果たしてどのような結末になるだろうか。再びエンロンに戻ってみよう。エンロンと会計法人アーサー・アンダーソンは、1年後の2002年にすべて破産した。エンロンのレイ会長は、24年刑を宣告されたが服役開始前に心臓まひで亡くなり、スキリング代表は14年間服役し今年8月に解放された。米国の資本主義はジャングルのように見えるが、それでも作動しているのはこうした峻厳な断罪がなされるためだ。米国政府は当時、サーベンスオックスレー法を制定し、会計監督強化の転換点とした。
不幸にも、韓国では起亜自動車(粉飾規模3兆ウォン)、SKグローバル(1兆5千億ウォン)、大宇グループ(22兆9千億ウォン)、大宇造船海洋(5兆ウォン)など、多くの粉飾会計事件を体験したのに、未だ教訓を得られずにいる。ここには処罰の強度の低さも一役買っている。企業会計は、資本主義経済の最も基礎となる単位だ。これが偽装されるならば、信頼は形成されず経済システム自体が不十分になる。今回の事件が、韓国の資本主義が再誕生する転換点になるように、一罰百戒と制度改善に乗り出さなければならないだろう。