米国のトランプ大統領はイランによる米兵殺害への報復を誓い、攻勢を続けているが、「10日間の停戦」と「大規模な軍事作戦」との間で揺れているという。ホルムズ海峡を通じた原油輸送量が戦前に比べ90%減少しているうえ、親イランのイエメンのフーシ派までもがサウジアラビアの船舶による紅海の通航の封鎖を宣言したことで、中東の2大原油輸出ルートが同時にまひする恐れが強まっている。
トランプ大統領は20日(現地時間)、ソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルで「イランは米兵を1人殺すたびに何倍もの代償を支払うことになる」と述べつつ、軍の指導部に指示を下したと明かした。米国の高官もニュースサイト「アクシオス」に、トランプ大統領は覚書(MOU)違反やホルムズ海峡での船舶に対する攻撃、最近の米兵の死に対する責任をイランに問うことに注力しているとして、「破壊的な攻撃は大統領が別の決定を下すまで続くだろう」と語った。
実際、米軍によるイラン空爆はこの日で10日連続となった。米中央軍は、イラン軍の指揮所、防空・沿岸監視施設、海上戦力、ミサイルやドローンの発射場などを攻撃したと発表。イランもバーレーンとクウェートの米軍関連施設への攻撃で応じた。
この過程で米軍の被害も続出している。米国防総省によると、7日以降の負傷者はほぼ100人にのぼるという。ワシントン・ポストは、国防総省の人命被害データベースが数週間にわたりまともに更新されていないこと、今回の発表を反映すると実際の累計負傷者数は500人を超える可能性があることを報じた。
状況が悪化する中、トランプ大統領が「10日間の停戦」か「大規模な共同軍事作戦」かいずれかを近く決定するとの見方も示されている。アクシオスは当局者の話を引用し、「トランプ大統領はまだ決定を下していないが、この先数日がどちらに向かうかの分岐点になるだろう」と伝えた。あるイスラエルの情報筋は、イスラエル軍も高度な警戒態勢を維持しており、数日以内の全面的な共同作戦の拡大の可能性に備えていると語った。
「10日間の停戦案」はカタール、エジプト、パキスタンなどの仲裁国が提案したもの。停戦案は、停戦と同時に米国はイラン沿岸の北側の航路に対する封鎖を解除し、イランはオマーン沿岸の南側の航路に対する攻撃を中止するというもの。ホルムズ海峡の2つの航路をいずれも開放することが骨子となっている。
10日間の停戦期間中には、海峡の長期的な通航・管理体制について協議が行われる。折衷案の1つは、イランは船舶の通航そのものに一律の通行料を課さない代わりに、海上の安全や環境保護などの具体的なサービスを提供し、これらについて限定的な手数料を受け取るというもの。インドネシア、マレーシア、シンガポールがマラッカ海峡で特定のサービスに料金を課している方式が参考事例とされている。手数料を国際海事機関の関与する共同基金に組み入れて管理するとする方策も提案されている。
ホルムズ海峡は現在、事実上機能が停止している。戦前は一日平均1500万バレルにのぼったホルムズ海峡の原油輸送量は、近ごろは一日150万バレル程度となっており、90%も減少。船舶追跡会社「ケプラー」によると、17日から19日にかけてホルムズ海峡を通過した船舶は、一日平均10隻にとどまっている。
フーシ派がサウジアラビアの船舶に対する海上封鎖を宣言したことで、危機は紅海にも広がっている。サウジはホルムズ海峡の通航に支障が生じて以降、パイプラインで原油を紅海沿岸まで送り、バブ・エル・マンデブ海峡を通じて輸出してきた。フーシ派は、サウジ側がイエメンのサヌア国際空港を空爆してイランの航空機の着陸を妨害したと主張し、紅海とアデン湾を往来するサウジ船舶の通航を遮断すると表明した。バブ・エル・マンデブ海峡が全面的に閉鎖されれば、さらに世界の原油供給の約7%に支障が出る可能性がある。
対してサウジは、船舶保護のためあらゆる措置を講じることを表明。サウジが主導するアラブ連合軍の報道官を務めるトゥルキ・アル・マリキ少将はこの日の声明で、「合同司令部はバブ・エル・マンデブ海峡を通過する商船を保護するため、国際人道法と国連海洋法条約(UNCLOS)に合致するあらゆる断固かつ決然たる措置を取っている」と述べた。同氏は「海峡を通過する船舶に対するフーシ派のあらゆる威嚇は国際法に明らかに違反する行為であり、海賊行為に当たるため、迅速かつ断固として対応する」と述べた。