ホルムズ海峡の主導権をめぐる米国とイランの衝突が全面戦争の危機へと発展するなか、海峡を沿岸8カ国が共同で管理する体制を構築し、紛争の再発を防ごうという提案が出された。
ニューヨーク・タイムズは19日(現地時間)、英国のシンクタンク「ボース・アンド・バザール財団(Bourse & Bazaar Foundation)」が、ホルムズ海峡の紛争解決に向け、ペルシャ湾を沿岸8カ国の共同領土とみなし、そこを航行するタンカーに、環境管理を名目に少額の費用を負担させようと提案したと報じた。イラン、オマーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、カタール、イラクの8カ国が共同で機構を設立し、収益を生み出す相互依存体制を作ろうというものだ。
この提案は、沿岸諸国が設立した共同機構が、ホルムズ海峡を通過する超大型タンカーやLNG運搬船など600隻あまりに対し、貨物の価値の0.1%に相当する費用を負担させ、環境汚染の浄化に充てることを骨子としている。現在、オランダのロッテルダム港はタンカーに対し、1トンあたり0.08ドルの「持続可能性費用」を負担させており、今回の提案もこれと同様の割合で費用を算定した。これにより、年間約6000万ドル(約98億円)の収益が発生する。これは、毎年海峡を通過する6000億ドル(約98兆円)相当の石油・ガスの1万分の1の水準で、輸出国や船会社にとっては低水準の負担だ。
この構想は、第2次世界大戦後、フランスが敗戦国である西ドイツやイタリアなどとともに共同で石炭・鉄鋼を生産する体制を築いた1951年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立条約を参考にした。戦争当事国を経済的に結びつけ、戦争を起こす動機を減らし、平和を維持すべき理由を生み出そうというアイデアだった。欧州石炭鉄鋼共同体はその後、欧州連合(EU)へとつながった。
海峡の共同管理構想は、現在のペルシャ湾周辺の情勢が、第2次世界大戦後の欧州に似た危険な状況にあることに着目したものだ。現在のイランは、ホルムズ海峡の支配権が自国にあると主張しており、ペルシャ湾海峡庁(PGSA)を設立して航路を指定し、通過する船舶にサービス料を支払うよう要求している。これに対し米国側は「航行の自由」を掲げ、イランの主張は容認できないとしており、平行線をたどっている。イランと海峡を二分するオマーンは、もう一つの地政学的な要所であるマラッカ海峡において、環境浄化や海賊掃討を名目に自発的な基金を運営しているように、ホルムズ海峡にも同様の基金を導入しようと提案したことがある。
イラン側からも、ボース・アンド・バザール財団の提案を肯定的に受け止めているというシグナルが発せられた。イラン国営のIRNA通信は11日、財団が発表した8カ国による沿岸管理構想の主張を取り上げた文章の全文をペルシャ語に翻訳して報道した。IRNA通信は、革命防衛隊などの軍部ではなく、米国との交渉を進める政府が運営するメディアだ。
ただし専門家らは、現在の最大の問題は、米国の戦略と目標が不明確だという点だと指摘している。ライアン・クロッカー元米国大使は「現時点で最も否定的な要因は、米国の立場が不確実だということだ」とし、「湾岸諸国は一方的であれ共同であれ、何らかの措置を取る前に、長期的な米国による保障を必須とする」とニューヨーク・タイムズに述べた。