ウクライナが南部戦線でロシアの防衛線を初めて突破したことを明らかにし、今後の戦況に及ぼす影響が注目される。一方、ロシアは南部ではウクライナの前進を撃退したと主張し、東部戦線で着実な前進を見せた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2日、「誰が何と言おうと、我々は前進している。これが最も重要だ」と述べた。これに先立ち、ハンナ・マリャル国防次官は1日、ウクライナの現地メディアに対し、軍がザポリージャ戦線でロシアの第1防衛線を突破したと主張した。ジョン・カービー米国家安全保障会議(NSC)戦略広報調整官も同日、ウクライナ軍が72時間にわたり「南部戦線で目を引く進展」を成し遂げたとし、この主張を後押しした。
ウクライナ国防省は先月28日、ウクライナ軍がザポリージャ南の要衝地であるロボティネを奪還したと明らかにした。ウクライナ軍はその後、ロボティネの東側に位置する小さな集落ベルボベに攻勢をかけているという。軍事専門家たちは、ウクライナ軍の次の目標はロボティネから南西に20キロメートルほど離れた交通の要衝地トクマクとみている。この都市は南部最大都市メリトポリやアゾフ海の主要港町ベルジャンシクと幹線道路でつながっている。また、ベルボベを手中に入れれば黒海沿岸のマリウポリやベルジャンシクへの通路が得られる。
最大の関心事は、昨年9月に戦線が膠着した後、ロシアがウクライナ南部地域に幾重にも構築した防衛線を、ウクライナ軍が突破できるかどうかだ。ウクライナ軍の現場指揮官はロシアの最も堅固な国家防衛線を突破したと主張している一方、西欧ではまだ楽観するのは早いとみている。
ウクライナの反転攻勢を指揮するオレクサンドル・タルナウスキー司令官は2日、英紙「オブザーバー」とのインタビューで「我々は今、第1および第2防衛線の間にいる」とし、ウクライナ軍がロシア軍の第1防衛線を突破することで進軍が早まるとの見込みを述べた。同司令官は、ロシアは第1防衛線の構築に時間と資源の60%を費やし、第2・第3防衛線にはそれぞれ20%を使ったとして、このように主張した。
英国王立合同軍事研究所(RUSI)の地上戦シニア研究員ジャック・ワトリング氏は、ロシアの典型的な三重防衛線のうち第2防衛線がメインの防衛線だとし、「塹壕、コンクリート補強発射台、戦車阻止物、砲撃共助のための地上ケーブル、さらに多くの地雷」が残っていると指摘した。マリャル次官も2日、「ウクライナ軍は(第1)防衛線突破後、他方でより強力に要塞化された位置に到達している」と認めた。ロシア国防部は2日、南部戦線でウクライナ軍の前進を4回にわたって撃退したと述べた。
英国防省は2日の情報報告で、ロシアが東部では攻勢に出ていると指摘した。ロシアが東部ハルキウ州のクピャンスクで攻勢を繰り広げて前進し、ウクライナ軍を東部と南部戦線から分離させようとしているという。だがロシアも、南部ではウクライナ軍の攻勢を防ぎ、東部では攻勢を繰り広げることで、逆に兵力が分離するリスクを抱えていると付け加えた。