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「時間は我々の味方」…戦争引き延ばすロシア、頼みの綱は「エネルギー」

登録:2022-07-15 06:44 修正:2022-07-15 11:09
ロシア、ドイツにガス供給中止…長期化への懸念も 
ロシア、冬に備える欧州のガス備蓄の封鎖に乗り出す 
エネルギー戦争でロシアの反撃が今は優勢 
西欧諸国の革新の機会vs中ロのユーラシア経済ブロック
先月24日、 BRICS経済フォーラムにオンラインで出席中のロシアのウラジーミル・プーチン大統領/EPA・聯合ニュース
チョン・ウィギルの世界万事//ハンギョレ新聞社

 ウクライナ戦争が長期化の兆しを見せ、勝敗の舞台がウクライナ戦場から西側諸国とロシアのエネルギー戦争に移っている。

 ロシア国営エネルギー企業のガスプロムは13日(現地時間)、自国とドイツをつなぐパイプライン「ノルトストリーム1」に使われるガスタービンの供給問題を取り上げ、パイプラインの安定的な運営を保障できないと発表した。シーメンスは定期点検のためにガスタービンをカナダに送ったが、カナダ政府はロシアに対する制裁措置に従ってタービンの返還を拒否したものの、先週末にこのタービンを例外的に返還すると明らかにした。

 ガスプロムはツイッターを通じて公開した声明で「このような状況では決定的に重要な施設であるポルトバヤ圧縮機ステーションの安定的な運営に関する状況の展開について、客観的な結論を出すことはできない」と付け加えた。これに先立ち、ロシアは11日、ノルトストリーム1のパイプラインの運営を一時中止する理由として、21日までに予定された年次補修作業を挙げたが、欧州ではガス供給が再開されるかどうか、確信できずにいる。ガスプロムの13日の声明で欧州の不安はさらに大きくなった。ロシアのウクライナ侵攻以後、ロシアからのガス供給の中止あるいは縮小を経験した欧州諸国は12カ国にのぼる。

 昨年のロシアの対外収入をみると、石油やガスなどのエネルギー輸出が60%を閉めている。4月まで欧州諸国はウクライナに10億ユーロ(約1380億円)を支援したが、ロシアにエネルギー輸入代金として350億ユーロ(約4兆8340億円)を支払った。西側諸国がロシアにウクライナ戦争資金を提供しているわけだ。

ドイツ北部ルブミンにあるノルトストリーム1のパイプライン/ロイター・聯合ニュース

 西側諸国は2月24日のロシアのウクライナ侵攻を前後してロシア産エネルギーに対する制裁を断行してきた。今年2月22日、ドイツはロシアと自国をつなぐ新しいパイプライン事業であるノルトストリーム2プロジェクトの中止を発表した。ロシアのウクライナ侵攻後は、欧州連合(EU)が2030年前までにロシアのエネルギーから完全に独立するという計画を立て、その一環として今年末までにロシアからのガスの輸入を3分の2減らすと発表した。米国はロシア産化石燃料の輸入を禁止した。

 ロシアはエネルギーを武器に反撃に出ている。ロシアは3月23日、西側の対ロシア制裁に参加した「非友好国」に対し、ガス輸入代金をルーブル貨で支払うよう求めた。ロシアは4月26日、ルーブルでの支払いを断ったブルガリアとポーランドに対し、ガス供給を中止し、本格的なエネルギー戦争に乗り出した。6月中旬に入ってからはドイツへのガス供給量を急激に減らし、今月はドイツへとつながるノルトストリーム1のパイプラインを閉鎖する措置まで取った。

 これまではロシアの反撃が効果を得ている状況だ。2020年基準でガス輸入の約40%をロシアに依存している欧州では、ガス価格が昨年に比べて5倍暴騰したうえ、欧州はロシア産ガスに完全に代わる輸入先をまだ見つけていない。

ウクライナ戦争前のEUの輸入ガスのうちロシア産の割合//ハンギョレ新聞社

 産業も大きな衝撃を受けている。天然ガスを主な原料としている化学、肥料、鉄鋼業分野の欧州の企業は競争力を失っている。欧州では肥料を作る材料であるアンモニアの70%をガスで作る。英国最大の肥料会社「CFインダスティリズ・ホールディングス」は先月工場の閉鎖を発表したと、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。

 カーネギー国際平和研究所は最近の報告書で、ガス統制が欧州にとっては致命的だが、ロシアが払う代償は比較的少ないと分析した。ガスは石油に比べてロシアの対外収入源に占める割合が低い。2021年にガスと関連した税収は国家予算の10%だった一方、石油は30%を超えた。

 ロシアが欧州にガス販売を完全に中止すれば、損失は400億ドルにのぼると推定される。ガス販売は中止ではなく削減される可能性が高いが、この場合はガス価格の高騰でロシアに入る代金はあまり変わらないとみられる。

 最近、ロシアがガスの輸出統制を強化する理由は、欧州諸国が冬に備えてガスを備蓄することを防ぐためだと、カーネギー研究所は指摘した。欧州でガスの需要が最も高い時は10月から3月までで、毎月平均2700億立方メートルを消費する。現在、EUのガス貯蔵量は1千億立方メートルであり、200億立方メートル以下に下がってはならない。

 4月から9月の間にガス供給が縮小されれば、欧州諸国のガス貯蔵量が減り、冬場に深刻なガス不足問題に直面する恐れがある。ロシアは現在、EUに1日1億5千万立方メートルを供給している。1年前に比べると3分の1にすぎない。

 欧州はノルウェーのガスと液化天然ガス(LNG)の輸入を増やし、不足分を補ってきた。米国の液化天然ガス輸出は6月8日、フリーポート液化天然ガス工場が事故で閉鎖され、支障をきたしている。この事態は3カ月間続くものとみられるが、米国の輸出量の17%である一日6千万立方メートルが減った。米国は今年、欧州に150億立方メートルを供給するという約束の履行が難しくなった。最近ではストライキでノルウェーのガス田が閉鎖される事態も起きた。

 西欧は中東のカタールなどから代替輸入を確保しようとしているが、それもうまく行っていない状況だ。ドイツと英国は今年5月からカタールと液化天然ガスの輸入拡大を交渉しているが、妥結には数カ月かかる見通しだ。

 米国の主導でロシアの石油価格上限制が6月28日に主要7カ国(G7)首脳会議で合意されたが、施行までどれくらいかかるかはまだ分からない。ロシアが上限制に対抗して石油供給を減らせば、むしろ石油価格が高騰する恐れもある。ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領は11日、ロシア産軽油を安く輸入するロシアとの交渉がほぼ妥結したと発表し、対ロシア制裁の効果はさらに弱まっている。

 ロシアは2009年と2014年にパイプラインの通行料やガス価格をめぐってウクライナと周辺諸国へのガス供給を中止し、ウクライナに屈服させた。1970年代のオイルショックの時は、西側諸国と間接的な戦争を繰り広げた。オイルショックで米国など西側諸国の産業は製造業から知識産業に移行する革新が起きたが、旧ソ連は原油高に酔って国内経済の革新を度外視し、第3世界に進出を拡大した。そして原油価格が下落後、解体の道へと進んだ。

 今回のエネルギー戦争でロシアが中国と手を組んで米国に対抗するユーラシア経済ブロックを作る結果につながるか、それとも1970年代のようにロシアが化石燃料の捕虜になるかは現在進行中だ。

チョン・ウィギル、シン・ギソプ先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1051015.html韓国語原文入力: 2022-07-15 02:30
訳H.J

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