米国や韓国、日本、中国など主要6カ国が、原油価格の高騰に対処するため石油備蓄の放出に協力することにした。原油価格と食糧価格の引き上げなど世界的なインフレ傾向を抑えるための「前例のない」国際協力だ。
米国のジョー・バイデン政権は23日午後、記者会見で「本日、(コロナ)パンデミックからの回復に必要な供給を提供するため、米国が保有する石油備蓄を過去最大規模で放出する。この解決策にインド、日本、韓国、英国なども同意した。中国も(石油を)より多く供給する。この調整された行動が供給不足への対処を後押しし、また物価上昇の勢いを緩和するのに役立つだろう」と述べた。
米国はこれまで、1991年の湾岸戦争や2005年のハリケーン「カトリーナ」による被害拡大、2011年のリビア内戦の3回にわたって石油備蓄を放出した。当時は国際エネルギー機関(IEA)が放出を主導したが、今回は世界的なインフレ圧力に共に対抗しようという米国の呼びかけに、中国を含む主要国が応じて協力が実現した。ウォールストリート・ジャーナルは「米国が中国、インドとともに石油備蓄の放出を進めるのは初めて」とし、今回の決定の意義を説明した。
バイデン大統領は「我々の総合的な措置がガソリン価格の高騰問題を一晩で解決することはできない。しかし、状況は変わるだろう」とし、「時間がかかるかもしれないが、近いうちにガソリン価格が下がり、注油タンクを満たす日が来るだろう」と述べた。米国は同日、過去最高水準の5000万バレルの放出を決定し、英国は150万バレル、インドも500万バレルの放出計画を発表した。韓国と日本は具体的な放出規模を明らかにしなかった。ただし、日本経済新聞は日本政府が「余剰分のうち1~2日分の消費量に相当するおよそ420万バレルを目安に放出する」と報じた。中国はまだ詳しい計画を明らかにしていない。
市場では、主要諸国の今回の決定が石油価格高騰の抑制に決定的な影響を及ぼすことはないとみている。6カ国が放出する備蓄量は全体的に6500万から7000万バレル程度になるものと推定される。米国エネルギー省の推算によると、ここ3カ月の世界の一日の消費量は1億バレルを超える。厳密にいうと、一日分にも満たない量だ。これを反映したかのように、23日の国際原油価格は大幅に上昇した。米ニューヨーク商業取引所で来年1月引き渡し分の米国産標準油種(WTI)の終値は、前日より2.28%高の1バレル=78.5ドルだった。ロンドン先物取引所の1月生産ブレント原油価格も3.3%上昇の1バレル=82.31ドルを記録した。ブレント原油の価格上昇率は今年8月以来最高値を記録した。
しかし、全世界を襲ったインフレに対処するため、国際社会が協力を始めたことに少なからぬ意味がある。ウォール・ストリート・ジャーナルは、今回の措置は30年ぶりに最大水準のインフレを制御するために、あらゆる手段を動員するというホワイトハウスの決意を示すことに目的があると報じた。特に、激化する米中戦略競争の中で、米国が要請した動きに中国が加わったことは、今後、米中の利害が合致する事案においては国際協力が続くという期待を抱かせる。人類が直面した最大の問題である「気候変動」に続き、経済分野でも協力の共通項を見出したわけだ。
原油価格の動向と関連し、カギを握るのは産油国が増産に協力するかどうかだ。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどはこれまで米国の増産要求を一蹴してきた。アラブ首長国連邦(UAE)のアル・マズルーイ・エネルギー相は「一部の国の石油備蓄の放出は個別国家の問題」だとし、「12月の会議で『供給と需要のバランス』に基づいて生産量を決定する」と述べた。