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米国に告げ口する人々【コラム】

登録:2025-09-17 07:53 修正:2025-09-17 09:47
イ・ボニョン|経済産業部先任記者
李在明大統領と米国のトランプ大統領が8月25日(現地時間)、米ワシントンのホワイトハウスでの首脳会談中に握手を交わしている/聯合ニュース

 米国の情報機関は北朝鮮のことを、自分たちにとっての「悪夢」と呼ぶ。世界最高の諜報力がさっぱり通じないことに対する無力感を表現したものだ。先日、ニューヨーク・タイムズは、2019年の2回目の朝米首脳会談を前に、米軍の特殊部隊が金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を標的とした通信傍受装置を北朝鮮に設置しようとしたが発覚し、民間人を殺害して退却したと報道した。事実かどうかをめぐって議論もあるが、米国の情報機関にとって北朝鮮は最悪の相手だということを改めて教えてくれるエピソードだ。

 韓国はどうか。北朝鮮とは極端に対照的だ。米国は韓国に数多くの「人間盗聴器」を有している。雇用され、情報交換のために、政治的利益を得るために、単に米国が好きだから、情報を渡す人々が数え切れないほどいることだろう。いかなる大国も相手の内部協力者なしには一抹の影響力も発揮できない。言葉も通じず、文化も異なる人々を扱うためには、多くの協力者が必要だ。何よりも、影響力行使の源泉である情報力を裏で支える人々が必要だ。

 だから、大国に囲まれた韓国の地政学は親元派、親明派、親清派、親ロ派、親日派、親米派などを絶えず作り出してきた。しかし、国と社会は外部と上手にコミュニケーションを取りつつ、親しく過ごす人々を必要とする。そのような人々一般に対して「親○派」というレッテルを貼って後ろ指を差すのは不適切だ。問題は、自分の利益のために共同体の利益を害したり、外部勢力の力を借りて内政を左右しようとしたり、仲違いさせたりするケースが多いことだ。

 韓国社会の主流集団だといえる親米派の一部も、そのような伝統を受け継いできた。先月の韓米首脳会談の直前にトランプ大統領が「韓国で何が起こっているのか? 粛清または革命のようだ」とSNSに投稿し、波紋が広がった。誰がそのような認識を注入したのかは確認されていない。一部のプロテスタント勢力などの仕業ではないかと推測されている。

 李在明(イ・ジェミョン)政権を引きずり下ろしたり、一泡吹かせたりする方法が国内にはないと考える人たちは、トランプを最後の希望とみなしているようだ。さらに大きな問題は、うそと誇張を混ぜて韓国の状況を伝えてまで、米国を誤導していることだ。不正選挙を主張する韓国の団体がワシントン近郊で最近開催した行事に参加したチョン・ハンギル氏は、自分は弾圧されていると強調した。亡命も勧められたという。このような人々が米国の介入を期待して公然とワシントンをうろつく様子は、もはや見慣れた風景になっている。「国民の力」の前身である「未来統合党」から出馬したミン・ギョンウク元議員は、2020年の4・15総選挙は中国が介入した不正選挙だったと主張して、ホワイトハウスの前で1人デモをおこなってもいる。チョン・グァンフン牧師は、米国の政治家や在米韓国人に向かって不正選挙論を熱心に説いている。

 実のところ、このような現象は氷山の一角に過ぎない。自分たちと対立する人々は反米集団だという認識を広める広範な勢力が、その底辺に存在する。彼らは政界、政府、学界に広く布陣しているため、いちいち指摘するのも難しい。「国民の力=親米、共に民主党=反米」という公式を米国人に熱心に注入する人々も多い。韓国の状況にあまり精通していない米国人には、それを批判的に分析することはできない。自分たちに非常に従順な韓国人がそうだとささやけば、そうだと思ってしまうのだ。

 このような構図は、米国にとっても便利な面がある。伝統的に分割統治は、帝国にとって非常に有用な手段であった。このような状況が作り出したコンプレックスは、韓国の進歩的政権の手足を縛る効果がある。李在明大統領が訪米中の演説で、「安米経中」(安保は米国、経済は中国に頼る)について韓国は「過去のような態度が取れない状態」だと述べたのも、米国の「疑念」を気にした発言である可能性がある。かつて盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は、戦闘兵も送るべきだという政府内の親米派の要求までは受け入れなかったものの、イラク戦争への派兵を決めているが、今回の演説はこれと似た脈絡からのものだとも考えうる。

 徹頭徹尾親米でなければ反米ではないかという人々、自分たちだけが親米だという「帝国の模範生」による告げ口の伝統は根深い。解放直後、親日の大地主などが中心となって結成された韓国民主党は、ヨ・ウンヒョンと彼が建てた人民共和国は親日派勢力だと米軍政に告げ口した。親米派に変身したばかりの自分たちの過去はすっかり忘れて、恥ずべき売り渡し行為に手を染めたのだ。反民主勢力が民主勢力を害する今と似ている面がある。

 多くの米国人が自国の民主主義の危機を懸念している。そんな国に行って、他国の民主主義の面倒を見てくれと言わなければならないのか。昨年冬、韓国の親衛クーデターが鎮圧されるのを印象深くみつめた米国人は戸惑うだろう。

//ハンギョレ新聞社

イ・ボニョン|経済産業部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1219043.html韓国語原文入力:2025-09-16 17:29
訳D.K

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