サムスン電子の今年第1四半期の営業利益は6兆6000億ウォン(約6500億円)だった。サムスンが今年初めに披露した「ギャラクシーS25」シリーズの好調が相次ぐマイナス成長を食い止めたと分析される。ただし半導体技術競争力の不振が続いているうえに「関税戦争」で業況にも暗雲が立ち込めているため、第2四半期の実績に向けた懸念は消えない。
サムスン電子は今年第1四半期(1~3月)の売上高79兆ウォン(約7.8兆円)、営業利益6兆6000億ウォンの暫定集計を8日発表した。直前四半期に比べ売上高は4%、営業利益は2%増えた値だ。昨年の営業利益が2四半期連続でマイナス成長し、第4四半期には6兆4927億ウォンに下がった末に、小幅ながら反騰した。
低くなった市場の期待値も十分に上回った。昨年末まではサムスン電子の第1四半期の営業利益が7兆ウォンを超えると予想していた証券街は、今年に入って5兆ウォン前後まで予想を急激に下げてきた。「半導体危機」の溝がこれまでの予想より深いと判断したのだ。この10日間のあいだにサムスン電子の報告書を出した証券会社の予測値平均は5兆1千億ウォン。
市場は主にスマートフォン「ギャラクシー」の新作発売効果が善戦を牽引したとみている。今年初めに公開した「ギャラクシーS25」シリーズの第1四半期の出荷量が前作(約1350万台)をはるかに超え、モバイル(MX)部門の営業利益が4兆ウォン台中盤に上がったという分析だ。これには、最近深化する傾向のギャラクシーの販売量の初期集中現象と人工知能(AI)マーケティングなどが影響を及ぼしたものと分析される。
関税を控えて一種の「先行確保需要」が発生したとの分析も多い。米国の関税賦課前にスマートフォンなどの在庫をあらかじめ確保しておこうとする業界の動きが、サムスン電子の実績を一時的に押し上げた可能性が高いということだ。そのため、第2四半期の業績に向けた懸念も少なくない。メリッツ証券のキム・ソンウ研究員は「米国の関税賦課など(による)先出庫要求もやはり一部存在しただろう」とし「結局『ギャラクシーS25』の販売量は、第2四半期には800万台以下への減少が避けられないように思える」と話した。
第2四半期の実績を下支えしなければならない半導体事業の危機が「現在進行型」である点も懸念要因だ。証券界隈は、先端技術競争で劣勢の半導体(DS)部門が第1四半期に1兆ウォン未満の営業利益を出すに止まったと見ている。「伝統強者」であるメモリー事業部の営業利益は3兆ウォン台に減り、非メモリー半導体を設計・生産するシステムLSI・ファウンドリ事業部は2兆ウォン台の損失を出したという分析だ。SKハイニックスが第1四半期に6兆ウォン台の営業利益を出すという見通しと対比される。
特に、半導体業況を巡る不確実性が拡大している点がカギだ。最近、トランプ発の関税戦争が可視化し、全世界の景気が萎縮する可能性が論じられているためだ。景気に敏感に反応するメモリー半導体業況に「黄信号」が点ったわけだ。
それでもAI半導体は業況の影響を受けにくい方だが、サムスン電子は技術競争力の不振でこの領域でこれといった実績を出せずにいる。昨年3月「AIチップの第一人者」であるNVIDIAに第5世代高帯域幅メモリー(HBM3E)を供給し始めたハイニックスとは異なり、サムスンの場合は最近まで納品のニュースは聞こえていない。サムスン電子株は同日、韓国取引所で前日より0.6%値上がりした5万3500ウォンで取引を終えた。