米国のドナルド・トランプ大統領が13日(現地時間)に署名した覚書に「不公正な貿易慣行」や「非関税障壁」を相互関税の課税対象として明記したことで、韓国も射程圏内に入った。覚書の内容は、米国と相手国の関税率の差だけを問題視するのではなく、貿易慣行全般について取り上げることができるというものであるため、韓国をはじめ対米貿易黒字が多い国は、よりいっそう緊張を強いられる状況にある。
トランプ大統領は「相互貿易と関税」についての覚書で、関税▽不公正かつ差別的な税金▽補助金や規制などの非関税障壁▽為替レートに関する調査を通じて、相互関税を課すことを明らかにした。また、「市場へのアプローチに対するあらゆる不公正な制限や、米国の市場経済との公正な競争に対するあらゆる構造的障害」についても、相互関税で報復しうることを明記した。
トランプ大統領が、同じ品目に対して自国が輸入する場合より高い関税を適用するケースだけでなく、内国税、補助金、為替レートなどの非関税障壁を問題視する意思を公に表明したことで、韓国をはじめとするあらゆる国が相互関税の脅威から逃れられなくなった。韓国は米国との自由貿易協定(FTA)によって、98%以上の品目に対して相互無関税を適用している。しかし、非関税障壁を問題視する場合、米国製品の輸出に不利な制度や政策に対しても、広範囲に相互関税の脅しをかける可能性がある。ホワイトハウスの高官が会見で「貿易赤字が最も多く、問題が最も深刻な国から先に調査する」と述べたのも、韓国など対米貿易黒字が多い国を緊張させる発言だ。韓国は昨年の米国との貿易で、8番目に多い557億ドル(約8兆5000億円)の黒字を計上した。
トランプ政権は、対象とする国ごとに関税と非関税障壁の調査に着手することを明らかにしたが、韓国に対してどの点を問題視するのかは、米国の要求を聞いて協議した後に初めて判明するものとみられる。米国通商代表部(USTR)は「2024年国別貿易障壁報告書」で、位置情報データの移転制限、自動車の排出ガス関連の部品規制、医薬品ベンチャー企業の認証制度、遺伝子組換え生物関連の法令、30カ月以上の月齢の牛肉と一部の加工肉の輸入禁止などを非関税障壁だと指摘した。米国側は、市場を支配する事業者の不公正な行為を制御するために韓国が制定しようとしているプラットフォーム規制法の動きにも反対している。
既存のルールを無視するトランプ政権が、この程度の指摘や要求では済ませず、さらに無理のある攻撃的な要求をする可能性も排除できない。トランプ大統領は覚書で、米国製品に対する「いかなる不公正な制限」にも対応する方針を明らかにした。付加価値税(VAT)などの関税ではない内国税や国内政策まで、広範囲に非関税障壁のカテゴリーとして扱うというものであるため、これまでの貿易秩序を揺さぶるだけに留まらず、内政干渉との議論も予想される。
相互関税導入の方針は、すべての貿易相手国に同率の関税を課すという普遍的基本関税とは違い、国別に関税・非関税障壁を調査して対応するものであるため、「個別撃破」になるものとみられる。韓国の産業通商資源部は、早ければ4月から課されるものと予想される相互関税について、米国が韓国に対して提起する可能性のある非関税障壁の問題を点検し、協議に乗りだす方針だ。
韓国政府の関係者はハンギョレに「米国が付加価値税、為替レート、各種政策などを問題視し、これをどのように関税化するかはわからない」とし、「このような問題をどのように取り上げるのかは、米国と話し合わなければならない」と述べた。トランプ政権が非関税障壁に報復関税で対応するのか、同レベルの貿易障壁で対応するのかなどについても、観察する必要があるとみられる。同関係者は「トランプ政権の根本的な意図は、特定の貿易障壁を除去することよりは、貿易赤字の縮小にあるという点も念頭に置かなければならない」と補足した。
産業通商資源部のパク・チョンウォン通商次官補は14日、米国の相互関税の動きによる影響を点検し対応を協議するために、業種別団体と経済団体が参加する会議を開いた。パク次官補は「韓国は米国が貿易赤字を記録している国のうちの一つであるため、韓国の非関税措置によって相互関税が課される場合、韓国の産業に及ぼす影響を最小化するために関係官庁や業界と緊密に連携を取り、対応戦略を模索して対米協議を進める」と述べた。パク次官補は17日に訪米し、トランプ政権の関係者らと韓米貿易の懸案を議論する予定だ。