「米国3.2%、韓国3.8%」
先月、米国と韓国の消費者物価上昇率(対前年同月比)が逆転した。2017年8月以降、長期間韓国を上回っていた米国の物価上昇幅が、6年2カ月ぶりに韓国より低くなる逆転現象が現れたのだ。米国など主要国に比べ低い物価上昇率を主な成果として掲げていた韓国政策当局も困惑せざるを得なくなった。
15日に確認した米国労働部の資料によると、米国の先月の消費者物価は昨年同月に比べて3.2%上がった。昨年6月に9.1%まで高騰した米国の物価上昇率は、今年6月3.0%で底を打ってから、7月には3.2%、8・9月には3.7%と上昇幅が再び大きくなった。ところが、10月に入って上昇傾向が明らかに鈍化した。
国際金融センターはこの日発表した分析報告書で、「米国はこの2カ月間物価上昇を主導してきたエネルギー価格が大きく下落した中で、住居費上昇の鈍化、自動車価格の下落などで(需要側の物価圧力を示す)コアインフレの下方硬直性も緩和した様子」だと指摘した。ユーロ圏(ユーロ使用20カ国)の先月の消費者物価上昇率も2.9%で、2年3カ月ぶりの最低値を記録した。
これは韓国の物価状況とは対照をなしている。韓国の消費者物価は今年7月の2.3%から8月は3.4%、9月は3.7%、10月は3.8%と3カ月連続で上昇幅を広げている。韓国銀行物価動向チームのイ・ドンジェ課長は「米国は昨年の今頃、エネルギー・食料品価格があまりにも大幅に上昇したため、そのベース効果で前年に比べ物価上昇率が鈍化している」と説明した。米国や欧州などは昨年エネルギーなど主要品目の物価上昇幅が大きかった分、下落幅も大きいという説明だ。
企画財政部など韓国政府も当惑している。これまで韓国の物価は他の国よりはやい安定傾向を示しているとし、政策効果を強調してきたためだ。企画財政部は、国内の物価上昇率が2%台に下がった6~7月までは「経済協力開発機構(OECD)38カ国と主要20カ国・地域(G20)のうち、2%台の物価(上昇率)を記録した国は韓国を含め少数に過ぎない」と述べていた。
昨年の就任当時「物価安定」を経済運用の最優先課題に掲げたチュ・ギョンホ副首相兼企画財政部長官も、10月には物価が安定するとの見込みが外れて困難な状況に置かれた。チュ副首相は統計庁の「10月物価」発表前の先月19日、国会国政監査で「韓国の物価と経済成長率は先進国に比べて良好な水準」だと述べた。
企画財政部や農林畜産食品部など政府省庁は、物価の現場管理に力を入れている。この日も農食品部のクォン・ジェハン農業革新政策室長は食品メーカーの「農心」ソウル本社を訪れ、「代表品目であるラーメン、スナック菓子などの価格安定化と体感物価の緩和に積極的に協力してほしい」と述べた。企画財政部のホン・ドゥソン次官補もこの日、消費者団体代表らとの懇談会で、「小細工・便法の値上げ、過度な値上げなど不合理な部分があるならば、積極的な声をあげてほしい」と要請した。
経済省庁のある局長級官僚は「局長たちも現場に行けと言われているが、一体どこに行けば良いのか悩んでいる」と打ち明けた。このような動きを「足踏み」に喩える人もいる。現場を訪問しても物価安定の効果は不透明であることは官僚たちも十分承知しているが、上層部に圧迫され何かしなければならないというムードになっているという。