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尹錫悦はどうしてあのように見苦しい言い訳ばかりするのか【コラム】

登録:2025-01-24 23:30 修正:2025-01-25 00:18
パク・ヨンヒョン|論説委員
尹錫悦大統領が23日午後、ソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷で行われた弾劾審判の弁論に出席し、メモを見ている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 『孟子』にこのような話がある。中国の歴史で暴君の代名詞となっている夏の最後の王、桀と、商の最後の王、紂は、いずれも臣下である諸侯に追われて死を迎えた。このことについて斉の宣王が孟子に問うた。「臣下が自分の王を殺してもよいのですか」。王権思想が支配していた時代においては当然の問いだった。孟子は答えた。「仁を害する者を賊と言い、義を害する者を残と言い、残賊の者を一夫(一介の男)と言います。一夫に過ぎない紂を殺したという話は聞いていますが、王を殺したという話は聞いたことがありません」。仁と義で統治することなく暴政をなす王は、その資格がないのだから、たとえ王の座にいたとしても一介の男として扱うべきだ、との回答だった。

 王政時代に王の問いにこのように答えた孟子の気迫と洞察に思わず膝を打つ。孟子の先見の明は、それから2千年もたってから生まれた現代大統領制民主国家において、弾劾制度として具現化された。国会による弾劾訴追と憲法裁判所による弾劾審判(多くの国では国会が弾劾訴追と審判をいずれも担う)は、国家元首である大統領を一介の自然人にすることができる。仁と義という価値の代わりに、憲法と法律を順守するかどうかが暴政の判断基準となる。

 大統領尹錫悦(ユン・ソクヨル)がその弾劾の審判台に立たされている。12・3内乱が反憲法、違法であることは明白過ぎるのだから、尹錫悦はすでに大統領ではなく一介の男と言うべきだろう。だが弾劾審判の過程で見られる態度は、「一介の男」という呼称さえ過分なほどお粗末だ。うそと卑怯さは平均的な人間の枠をはみ出している。

 二つの場面を見るだけで十分だ。

 尹錫悦が出席した21日の憲法裁判所の公開弁論。

ムン・ヒョンベ(憲法裁所長権限代行)「イ・ジヌ首都防衛司令官、クァク・チョングン特殊戦司令官に戒厳宣布後、戒厳解除決議をあげるために国会に集まった国会議員を引きずり出すよう指示したことがありますか」

尹錫悦「ありません」

 すでに首防司令官、特殊戦司令官、警察庁長らが直に聞いたと公に証言した自らの指示を、顔色ひとつ変えずに否定したのだ。

 翌22日の国会聴聞会。

クァク・チョングン(前特殊戦司令官)「大統領の(国会議員たちを引きずり出せという)発言については、はっきりと事実だと改めて申し上げ、必要な事実はすべて申し上げなければならないと思い、私の意志どおりに申し上げたのです」

 国家情報院のホン・ジャンウォン前第1次長も同日の聴聞会で、尹錫悦が国会議員らの逮捕を指示したと明らかにしている。

ホン・ジャンウォン「(戒厳当日の尹錫悦との通話について)フルテキストを直説話法でご希望であれば、そのまま申し上げます。…強い口調なので申し上げにくいのですが、『この機に全員ひっ捕らえてきれいさっぱり片付けろ」とおっしゃいました。…『防諜司に資金なら資金、人員なら人員、無条件で支援しろ』とおっしゃいました」

 ホン前次長は、その直後のヨ・インヒョン防諜司令官(当時)との通話で、政治家ら14人の逮捕対象者リストを聞いたと改めて証言している。

ホン・ジャンウォン「防諜司と国情院が(政治家に)手錠をかけてバンカーに連れて行って監禁するなどということは、大韓民国で起きてはならないことではありませんか。そんなことが毎日起こる国が一つあります。どこ? 平壌! そんなことをする機関はどこ? 北朝鮮の保衛部! 以上です」

 大統領だという者が全国民に向けて中継される憲法裁の法廷で、またもうそを繰り返し、たった一日で軍の将官と国情院の高官によってはっきりと反論された。そのうその内容も、一様に責任を部下たちに押し付けるものだ。救国の志から戒厳を宣布したと主張する大統領が、なぜこのように見苦しい言い訳ばかりするのか。一般庶民も自身の行為に責任を取らないことを恥とするのに。

 加えて、尹錫悦は警護処職員を「逮捕状執行の阻止」という違法行為へと追いやり、その背中に隠れた。物理力による法執行の拒否は、ソウル西部地裁に乱入した暴徒と変わりのない行為だ。全身に入れ墨を入れた組織暴力団でも想像できない法治の否定だ。髪を整え、きっちりスーツを着こんだ格好で、そのような無道な行いをしている。

 検事時代、今の自身のように証拠が明白なのに、堂々と法秩序を無視する犯罪者に、検事尹錫悦はどのように対しただろうか。容易に想像がつく。その通りに今の尹錫悦を扱えばよいのだ。

 23日の憲法裁の公開弁論では、このような場面もあった。

 尹錫悦は証人として出廷したキム・ヨンヒョン前国防部長官に、戒厳布告令を共に検討していた当時のことについて質問した。

尹錫悦 「『専攻医』、これはなぜ入れたのかと笑いながら言うと、『これも啓導するという側面から、そのままにしておきました』と言うので、私も笑ってそのままにしておいたのですが、覚えていらっしゃいますか?」

キム・ヨンヒョン「今おっしゃったから思い出しました」

 「布告令5号」は、「専攻医をはじめ、ストライキ中あるいは医療現場を離脱しているすべての医療人は、48時間以内に本業に復帰して忠実に勤務し、違反時は戒厳法により処断する」という内容だった。

 布告令に接した医療人たちの心情はいかばかりか。医療人だけではない。布告令は「以上の布告令の違反者に対しては、大韓民国戒厳法第9条(戒厳司令官特別措置権)に則って令状なしに逮捕、拘禁、家宅捜索でき、戒厳法第14条(罰則)に則って処断する」と国民を脅している。この恐ろしい布告令を、2人は笑いながらもてあそんだということだ。

 民を苦しめるだけで残忍な行為を事とした桀と紂もやはり、一介の男とも呼べない「平均以下の人間」であったことは間違いない。孟子はそこまでの表現は用いていない。後代にさらにお粗末な残賊の者が現れることを予見して残しておいたのだとしたら、今がまさにその時だ。

//ハンギョレ新聞社

パク・ヨンヒョン|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1179506.html韓国語原文入力:2025-01-23 17:48
訳D.K

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