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「米中外交のバランスを」「女性の副首相を選ぶべき」…韓国の元経済官僚たちの苦言

登録:2023-05-22 09:31 修正:2023-05-22 13:46
歴代経済副首相など31人のインタビュー
ヒョン・ジョンテク元大統領府政策調整首席(企画財政部ユーチューブ)=企画財政部提供//ハンギョレ新聞社

 「中国と仲違いせず、気候変動への対応に向けた政府の産業政策を大幅に強化せよ。…女性を育児・家事負担から解放し、不平等問題にきちんと対応せよ」

 歴代の経済副首相や長官などこの60年間韓国経済を率いた元経済官僚ら31人が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に向けて呈した苦言だ。企画財政部と韓国開発研究院(KDI)が25日に開く「経済開発5カ年計画樹立60周年」記念行事を控え、企画財政部のユーチューブに公開された31人の93分のインタビュー映像発言録には、先輩官僚らの経験と洞察が収められている。主に朴槿恵(パク・クネ)、李明博(イ・ミョンバク)保守政権で長官級経済官僚を務めた人々だ。今はかつてのような政府主導成長がもはや有効ではないが、依然として国家経済政策で不平等や気候変動対応などにおいて新しい役割を模索しなければならないという助言が出た。

 朴槿恵政権時に大統領府で働いていたヒョン・ジョンテク元大統領秘書室政策調整首席は、今回のインタビューで「米中サプライチェーン分断に現実的に適応する方法は、米国と中国の生産体制をある程度維持し、調和して進むこと」だとし、「米国との協力を維持し、中国とも経済関係を活用して柔軟に衝撃を減らすことが必要だ」と述べた。ヒョン元首席は「ドイツ首相とフランス大統領が中国を何度も訪問し、日本も(表では)中国と戦っているようだが、韓国よりもさらに(緊密な)関係があるともみられる」とし、「彼らの政治を参考にして(中国と)共有・協力をする必要がある」と述べた。米中関係で経済的実利を考慮して一方に偏らない柔軟な対処が必要だという注文だ。

 チェ・ギョンファン元副首相兼企画財政部長官も「過去のように我々が中国経済特需に依存して韓国経済を運営していくことは限界に達した」としつつも「サプライチェーンの転換過程で脱中国する企業を我々が誘致し、消費財市場として中国市場を攻略する戦略を樹立すべきだ」と主張した。中国を世界の工場として製造業の中間財を輸出していた従来の貿易構造を、中国独自市場を狙った消費財中心に変えようという勧告だ。

 現政権の「小さな政府、民間主導成長」基調に反論する見解もあった。ヒョン・オソク元副首相は「最近、国際経済の大きな変化の一つが(政府レベルの)産業政策の復活だ」とし「米国をはじめとする多くの先進国が、かつては反対していた産業政策を導入している」と指摘した。国際安保の面での重要性が大きくなった半導体をはじめ、脱炭素、デジタル、主要資源産業分野などで、政府が政策をリードし国益を優先して整えなければならないという話だ。

チェ・ギョンファン元副首相兼企画財政部長官(企画財政部ユーチューブ)=企画財政部提供//ハンギョレ新聞社
チョ・ウォンドン元大統領府経済首席(企画財政部ユーチューブ)=企画財政部提供//ハンギョレ新聞社

 特に気候変動への対応は、政府のリーダーシップが欠かせない分野だ。チョ・ウォンドン元経済首席は「ビル・ゲイツも著書で、自分は今まで政府の介入がなければこそ民間の創意が蘇ると主張していたが、気候変動問題は政府の役割がなければ解決が不可能だと書いた」として「気候変動に関しては政府の役割が非常に重要だ」と述べた。チョ元首席は「米国のインフレ抑制法(IRA)などで、いま米国だけでなく世界経済が揺れている」とし「(気候変動への対応の投資を)民間に任せて放っておいたら、我々はとんでもなく大きな新産業を失うことになる」と強調した。政府が炭素転換政策の明確な方向を提示し、市場にインセンティブを与えて民間の投資拡大を誘導しなければならないという意味だ。

 最近の韓国の労働時間制度改編をめぐる乱脈ぶりも指摘した。ノ・デレ元公正取引委員長は「ドイツはヒトラーの時代に週何時間働くというのを定めたことがあり、その後は『労働時間法』に変わった。我々もMZ世代の要求に合わせ、週に何時間働かなくてはならないというのをしきりに決めるのではなく、休息時間を保障することを検討しなければならない」と話した。ドイツが韓国の「週52時間制」のように別途の週単位の法定基準労働時間規定を置かず、延長労働(2時間)を含む一日10時間まで仕事ができるよう法で制限したことを参考にして「ワークライフバランス」(仕事と生活の均衡)をきちんと保障しようという意味だ。

 元官僚たちは、一致して少子高齢化を韓国経済の最大問題と指摘した。「第4次経済開発5カ年計画」当時、家族計画事業を担当したチョン・ジェリョン元統計庁長は「1970年代末~1980年代初め、デンマークで経済協力官として勤めていた当時、西欧の主要先進国は軒並み出生率1%以下に下がり、人口の壁を経験した」とし「当時、多くの先進国が財政支援で出生率を解決しようとしたが失敗した。財政で出生率を上げるという発想は100%失敗する」と強調した。さらに「韓国の優秀な女性人材を育児の負担と家事労働から解放し、生産可能人口に切り替えなければならない」とし、「内閣の構成から変えなければならない。経済副首相や韓国銀行総裁などは男性より女性の方がうまく務める」と述べた。尹錫悦政権内閣の女性長官は、女性家族部(キム・ヒョンスク)、中小ベンチャー企業部(イ・ヨン)、環境部(ハン・ファジン)の3人のみ。

 サ・ゴンイル元財務部長官も「移民は難しい問題であり、限界がある」とし、「女性、60~65歳で退職した高齢人口など、既にある労働力を活用すべきだ」と助言した。

チョン・ジェリョン元統計庁長(企画財政部ユーチューブ)=企画財政部提供//ハンギョレ新聞社
イ・ヨンタク元国務調整室長(企画財政部ユーチューブ)=企画財政部提供//ハンギョレ新聞社

 経済政策の根幹を見直すべきだという重い話題も投げかけた。1969年に入職して盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の長官級に至るまで35年間の公職経験を持つイ・ヨンタク元国務調整室長は「民主主義と資本主義という実は合わないカップルが、もう限界に来ているようだ」とし「最近、マイケル・サンデル(米ハーバード大学)教授も、能力によって補償される能力主義こそ不平等を深化させ、民主主義と資本主義市場経済を破壊していると述べている」と説明した。生まれながら親から受け継いだ財産と外部環境、個人の能力および経験値などが異なる状況で、能力によって補償する現行体制が、階層間の格差を広げ不平等もますます深刻化させているという指摘だ。イ元室長は「問題提起は随所でするが、能力があって富のある者が配慮して周りに気を配るべきなどの抽象的な答えしかないようだ」として「社会的合意を集めるために、知識層がもっと深みのある研究をしてほしい」と注文した。

 チュ・ヒョンファン元産業通商資源部長官も「我々は多くの発展を遂げたが、国民の立場からみて生活の機会や生活の質の良い社会を作れたのかという部分では、反省する必要があるのではないかと考える」とし、「社会全体的に、失業や社会のセーフティネットを果敢に高めなければならない。市場経済は(人の)温かさなしには生きられない」と話した。

パク・チョンオ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1092597.html韓国語原文入力:2023-05-22 02:42
訳C.M

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