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「今の状況は第一次世界大戦直前と類似」…デタントの主役キッシンジャー氏の警告

登録:2023-05-19 06:27 修正:2023-05-19 08:18
英誌「エコノミスト」とのインタビューで 
「AIが米中衝突を促進する」 
ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官//ハンギョレ新聞社

 米中デタントの主役であるヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が、世界が現在、第一次大戦前夜のような危険極まりない状況に置かれており、人工知能(AI)が米中の全面戦争勃発の可能性を高めていると診断した。

 キッシンジャー氏は17日、英誌「エコノミスト」とのインタビューで、米国と中国が覇権争いを加速化させ、「どちらも政治的譲歩の余地がほとんどないため、世界は今や均衡をめぐるどんなかたちの撹乱でも災いに近い結果をもたらしかねない、典型的に第一次世界大戦直前と類似した状況にある」と述べた。

 キッシンジャー氏は、米中衝突によって第三次世界大戦が勃発する可能性があるとみる背景には、双方の「戦略的誤解」があると分析した。また、中国には米国が衰退の道に入ったため、中国が代わりにその地位に就くべきであり、米国は決して中国に平等に接する意思がないと考える人々がいる一方、米国では中国が世界制覇を目指しているという誤解が広がっていると述べた。しかし、「中国は強くなろうとしているが、ヒトラーのように世界を支配しようとはしていない」と強調した。

 キッシンジャー氏は、米中戦争が全面戦争に突き進まず共存する可能性もあるが、今は台湾が戦略的対決意図と戦略的誤解を試す舞台になっていると語った。そして、1972年にリチャード・ニクソン米大統領と中国の毛沢東主席が台湾問題について話し合ったことを思い出す必要があると強調した。同氏は、毛沢東主席が台湾について「彼らは一握りの反革命分子だ」としながらも、「我々は100年を待つこともできる」と述べたと伝えた。

 しかし、ドナルド・トランプ元米国大統領が2018年に貿易問題で中国を圧迫したことで、互いに譲歩しようという趣旨の100年の合意が50年に半減したとし、台湾問題でもこれを繰り返してはならないと主張した。また、米国の一部では、中国が敗北すれば民主的で平和的な国家になると期待しているが、中国共産党の崩壊は内戦と激しい理念闘争をもたらし、世界の安定を脅かすと指摘した。さらに、「中国が解体されるのは私たちとっても望ましくない」と述べた。

 今月27日、100歳の誕生日を迎えるキッシンジャー氏は、人工知能(AI)が国際政治に及ぼす影響に関する本を出す予定だとし、AIが米中衝突を促進する手段になるとも警告した。勢力均衡と技術が戦争に対して持つ意味が急速に変わっていく中、世界がこれに対する「合意された原則」を持っていないという理由からだ。AIは人間の統制を受けない自律兵器の開発につながり、それに伴い戦争開始の可否や作戦決定もアルゴリズムに依存するようになり、戦争の破壊力と非人間的側面が強化されかねないという懸念の声もあがっている。

 これと関連して、米国務省は2月、韓国とオランダが共同主催した「AIの責任ある軍事的利用に関する高官級会議」(REAIM・以下高官級会議)で、AIの軍事的利用と関連して各国が守らなければならない「政治的宣言」の草案を発表した。同案には、AIの能力は国際人権法に符合しなければならず▽核兵器の使用と関連した決定ではすべての段階ごとに人間の統制と介入を維持しなければならず▽AIの能力を発展させるのに高官級当局者の監督が保障されなければならないなど、12の原則が盛り込まれた。キッシンジャー氏はAIが5年以内に安保領域で核心的役割を果たすことになるとし、米中が5~10年内にAIの軍事化問題に対する合意を見出せなければ災いのような結果につながる恐れがあると語った。そして、破滅的衝突を防ぐ方法は「冷静な外交」しかないと強調した。

 キッシンジャー氏はさらに、日本が5年以内に核開発に乗り出す可能性があると予想した。北朝鮮と中国による核の脅威にさらされている日本は、約6千発の核弾頭を製造できるプルトニウムと製造技術、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に転用できる高度なロケット技術を保有している。ジョー・バイデン米大統領は、副大統領時代だった2016年6月、中国の習近平国家主席に「日本は1日で核を作る能力がある」と語ったことを明らかにしている。 日本のように完璧な核潜在力(Nuclear Latency)があるが「非核三原則」などによって核を保有しない選択を「日本オプション」(Japan Option)と呼ぶ。

ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1092301.html韓国語原文入力:2023-05-19 02:45
訳H.J

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