韓国で所得上位10%の世帯(生計を共にする世帯)が1年に稼ぐお金はいくらだろうか。 正解は昨年基準で平均1億9042万ウォン(約2千万円)だ。彼らが保有している不動産などの資産は平均15億5475万ウォン(約1億6300万円)に達する。一方、所得下位10%世帯の1世帯当たりの年平均所得は昨年基準で897万ウォン(94万円)、保有資産は1億2407万ウォン(約1300万円)だ。
上位10%と下位10%の所得格差は約21倍、資産格差は約13倍だ。特に、彼らの所得格差は昨年、政府の低所得層支援縮小などで拡大傾向に転じた。貧弱な老後のセーフティネットを考えると、所得下位10%世帯の大半を占める「高齢者貧困」問題に警告灯が灯ったわけだ。
13日、本紙が統計庁の「2022年家計金融福祉調査」の所得10分位現況を分析した結果、昨年の国内所得上位10%世帯の年平均所得を下位10%世帯所得で割った「所得10分位倍率」(世帯所得基準)は21.2倍だった。上位10%世帯が下位10%世帯より21倍多い所得を得ているという意味だ。統計庁が国内すべての世帯を所得水準によって10%ずつ10区間に分けた10分位統計を公開したのは今回が初めて。
所得10分位の倍率は、国税庁課税資料などを統計に反映し始めた2016年の25.4倍から2020年には20.2倍へと毎年着実に緩和されてきた。基礎年金の引き上げ、高齢者雇用の拡大など低所得層の高齢者に対する支援が拡大した影響だ。昨年この指標が再び悪化したのは、上位10%世帯の勤労所得が下位10%より大幅に増えた一方、政府の低所得層支援はむしろ縮小したためだ。昨年、政府の新型コロナ支援金は中産層以上の自営業者まで支給対象が拡大したが、下位10%世帯は所得の半分以上を占める政府支援金(公的移転所得)が世帯当り年529万ウォン(約56万円)から523万ウォン(55万円)に減った。上位10%世帯の公的移転所得が490万ウォン(約51万円)から512万ウォン(約54万円)に増えたのとは対照を成している。
目を引くのは、韓国政府が家計に支給する移転所得がここ5年間、毎年平均12%前後に急速に増えているという点だ。ベビーブーム世代(1955~1963年に生まれた世代)の引退が本格化し、国民年金など公的年金受給者が大幅に多くなっているためだ。実際、新型コロナ発生時期を除いた2017~2019年、所得上位20~50%世帯の年平均公的移転所得の増加率は10%を越えた。同期間中の下位10%世帯の移転所得増加率(9.5%)を上回る。
問題は今後、低所得世帯と中・上位所得世帯間の所得格差がさらに広がる可能性が高いという点だ。下位10%世帯の多数を占める低所得高齢者層の場合、国民年金など公的年金未加入者が多いためだ。年金をもらえない高齢者貧困世帯と公的年金をもらえる中産層世帯の間のギャップがさらに広がりかねない。
韓国開発研究院(KDI)のチョ・ドンチョル院長は12日、記者懇談会で「高齢者貧困問題を解決するためには(高齢者が)もっと長く働ける環境を作らなければならない」とし、経歴を積むほど賃金が上がる号俸制など既存の硬直した賃金体系を改善しなければならないと語った。企業の賃金負担を減らして高齢社の働き口を維持しようという提案だ。
しかし、「私が作る福祉国家」のオ・ゴンホ共同運営委員長は本紙の取材に対し、「高齢者貧困問題の核心は65歳以上の高齢者で、55~65歳を対象とする号俸制改革とは直接的な関連性も弱い」としたうえで、「今の高齢者貧困問題を改善するには、貧困が深刻な75歳以上の高齢者のために、需要に比べて供給が少ない『公共型高齢者雇用』を増やさなければならない」と指摘した。政府は来年、公共型高齢者雇用を今年より6万1千件(60万8千件→54万7千件)減らした予算案を提出したが、現在拡大を検討していると明らかにした。
国内所得上位10%世帯の保有資産額を下位10%世帯の資産額で割った値も、2017年3月末の11.8倍から今年3月末は12.5倍に上がった。上位10%世帯の資産は同期間10億7745万ウォン(約1億1300万円)から15億5475万ウォンへと44%(4億7730万ウォン)増えたが、下位10%世帯の資産は同期間中、9159万ウォン(約960万円)から1億2407万ウォンへと35%(3248万ウォン)増加した。