本文に移動
全体  > 経済

「韓国、閉鎖的な『技術主権』では生き残れない…ドイツが最適な協力パートナー」

登録:2022-10-14 06:20 修正:2022-10-14 07:26
ソウル大学のイ・ジョンドン教授インタビュー 
「現代の技術開発はいかなるものも一人ではできない」 
「韓国、協力の価値を先頭に立って訴える必要ある」 
「最適な協力パートナーはドイツ…相互補完性高い」
ソウル大学のイ・ジョンドン教授が13日、ソウル冠岳区のソウル大学の研究室で、本紙のインタビューに応じている=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 産業政策復興期とでもいうべきかもしれない。政府は干渉せず、企業の自律に任せるべきという声はいまや聞こえなくなった。国家間の産業政策競争が繰り広げられているといわれているほどだ。サプライチェーンの安定化や技術主権、経済安全保障などを名分に「自分が使うものは自分で作る」と言わんばかりだ。米国のCHIPSおよび科学法(8月施行)、インフレ抑制法(IRA・8月施行)がその先頭に立っている。

 韓国も産業政策競争に足を踏み入れた。国家先端戦略産業法(通称「半導体特別法」・8月施行)を制定したのに続き、半導体事業場に大々的な支援をする策も用意している。「産業政策の大転換」の加速化を図るという産業通商資源部のイ・チャンヤン長官の発言も同じ脈絡だ。

 韓国産業の未来に対するソウル大学工科部教授26人の提言を盛り込んだ本『蓄積の時間』の著者、イ・ジョンドン教授(技術経営経済政策)は本紙とのインタビューで、国家間の競争的な産業政策の展開が「我も我もと子どもを有名塾に行かせるような劇場効果につながりかねない」と懸念を示した。イ教授は『蓄積の時間』に続き、産業革新の道を模索した『蓄積の道』と『最初の質問』を相次いで出版した。

 「多くの国が類似した分野に競争的に参入すると、似通った技術を開発する羽目になる。劇場で前の席の人が立ち上がると、みんな立ち上がって観なければならなくなるように、誰かが子どもを大峙洞(テチドン:有名塾が集まっている江南の一角)の塾に通わせたら、みんながそれを真似し、結局はそのメリットがなくなるのと同じだ」。インタビューは7日と13日の2回、ソウル大学の研究室で約2時間にわたって行われた。

-産業政策の競争ムードの中で、経済安全保障とともに技術主権が浮き彫りになっている。

 「技術主権というものは、ドアを閉めてカギをかける方向に進んではいけない。一昨日(10月5日)、国際フォーラムを開いたが、(ここに参加した)米国の専門家も心配しているようだった。米国が自分だけ生き残ろうとしているから『リーダー国』としての資質を疑われはじめており、いつか『いろいろな国の中の一つ』と認識されて、未来技術の標準を導いていくリーダーとしての力を失うのではないかと懸念している。どの国も技術主権を掲げて門戸を閉じてしまうと、(国内の)『二流クラス』に資源が流れる。一種のレントシーキング効果が生まれる。技術主権(の概念)が汚染され、保護主義に傾くのは懸念すべきことだ」

-皆が乗り出しているのに、手を拱いているわけにはいかないのでは。

 「人口や土地の大きさから見て、米国や欧州は自国の領域、ブロック内でサプライチェーンの安定化や完結型の技術主権を実現することが可能だ。中国もそれなりの方法でできるかもしれない。しかし、韓国や日本、台湾は違う。門戸を閉じてしまうと生き残れない。技術主権、技術独立が叫ばれているから、それを名分に掲げ、待ち構えていたかのようにあちこちで政府の補助金を要求する。補助金があれば技術独立ができると訴える。『クッポン』「(「国」と「ヒロポン(覚せい剤)」の合成語で、国家に対する自負心に陶酔することやそのような人のこと)で深刻な歪曲現象が起きかねない」

ソウル大学のイ・ジョンドン教授が13日、ソウル冠岳区のソウル大学の研究室で、本紙のインタビューに応じている=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 イ教授は「現代の技術のどんなものも『スタンド・アローン』(一人)でできることはない」として、「技術開発では協力の価値が何より重要だ」と語った。新型コロナウイルス感染症の大流行を抑えるのに大きく貢献したと評価されるメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの開発に「全世界のあらゆる人々の知恵が集まった」ことを一例に挙げた。パンデミックの克服、気候危機への対応同様、技術開発でも一国の力だけでは問題を解決できないという説明だ。

 「韓国を含め、産業競争で自国の利益を追求するのは当然だが、科学技術の革新においては国際的に協力すべきという声を韓国が主導してあげる必要がある。皆が閉鎖的な態度を取る中で、韓国がグローバルな視点でイシューを提起していかなければならない。今やそれができる地位になる。かつての貧しい国ではない。先進国の一員として世界に向けた韓国独自の『ストーリー』を示さなければならない」

 イ教授は「人類が共有する知識を創出するのに協力がさらに必要だという我々独自の声をあげるのは、対米交渉のテコを作るのにも重要だ」と指摘した。中国牽制用と言われる米国主導のインド太平洋経済枠組み(IPEF・5月発足)、米インフレ抑制法をめぐり交渉が行われている状況を指す部分だ。鎖国する技術開発ではなく、「力を合わせて協力の価値に基づいて革新を成し遂げよう、第3の代案がある、という風に呼びかける必要がある」と、イ教授は強調した。

 「現代的な意味での技術主権は15世紀の時とは違う。一人で成し遂げるのは難しく、相互依存的ないし相互連携的な技術主権の概念でアプローチしなければならない。同じ船に乗るということだ。二人三脚で足を縛れば、支え合うしかない。このような状態を作るのが真の現代的な意味での技術主権だ。韓国の立場では特に、もっと開放して手を携えていく方式でなければならない。国家間の競争ムードを完全に無視することはできないが、協力に基づいた革新政策を構想しなければならない。国別に立場が違うのに他国が進めるから我々も手を出すという『MeToo』では困る。特に、米国と欧州の自己完結型の産業革新政策をそのままベンチマーキングするのは失敗につながる道だ」

 イ教授は相互連携的な技術主権を追求するにあたり、韓国にとって良い協力パートナーとして欧州、特にドイツを挙げた。持っている技術からして、相互補完性が最も高い国だからだ。ドイツは機械分野、韓国は情報通信技術(ICT)分野で強みを持っており、未来の技術のパズルを合わせるのに最善のパートナーだと説明した。

 「当然、米国と積極的に手を携えながらも、代案として協力の新たな枠組みを増やしていかなければならない。産業政策、科学政策、革新政策で他の国々と競争を繰り広げるためには我々も同じものが必要という『MeToo』では、産業政策ゲームで勝てない。第3の道を模索しなければならない。画期的かつ驚くほど協力的で、世界で最も開放的な国になるのが生き残る道だ。我々にも与えられるものがある。他の国々が持っていないものを提供する余地がある」

キム・ヨンベ先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1062558.html韓国語原文入:2022-10-14 02:48
訳H.J

関連記事