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「ビニール袋に排泄」の最悪は回避したが…アルテミスの月の旅「ロマンではなく実戦」

登録:2026-04-06 06:56 修正:2026-04-06 09:26
[クァク・ノピルの未来の窓] 
ミニバン2台分の空間に4人が10日間同居 
トイレ・運動施設・簡易キッチンなど完備 
189種類の食品を搭載…加熱は可能
宇宙船「アルテミス2号」の出入口近くの床に固定されたトイレには、ドアと手すりがある=ジェレミー・ハンソン飛行士のYouTubeより//ハンギョレ新聞社

 2日、地球の軌道を抜けて月に向かい始めた宇宙船「アルテミス2号」の宇宙飛行士たちが宇宙船に付けた名は、「インテグリティ」(Integrity、「完全さ」という意味)だ。インテグリティは、4人の宇宙飛行士が滞在する10日間、操縦室、実験室、食堂、トイレ、運動室、寝室の役割をすべて同時に担う多目的空間だ。

 高さ3.3メートル、直径5メートルの円錐型の内部空間の大きさは9.3立方メートル。天井の高さが2.3メートルの2メートル四方の小さな部屋、あるいはミニバン2台分の空間と考えればよい。3人が搭乗したアポロ宇宙船(6立方メートル)の1.6倍になる。

 6個の窓があるこの空間には、トイレ、簡易キッチン、簡易ジム、放射線遮蔽シートとしても使用可能な収納スペースが用意されている。睡眠は壁に固定された寝袋でとる。

 宇宙飛行の初日に宇宙船が軌道に突入した後、宇宙飛行士たちは宇宙服を脱ぎ、普段着姿で、トイレ、浄水器、食料保温機などの生活や任務遂行に必要な機器を再配置した。続いて、操縦機能試験や軌道調整などの任務を遂行し、4時間と4時間30分の2回に分けて短い「分割睡眠」をとることで、1日の日程を終えた。宇宙での1日は起床時間に合わせ、地上管制センターから送られる音楽を聞いて始まる。

宇宙飛行士は壁に固定された寝袋で寝る=NASA提供//ハンギョレ新聞社

■正式なトイレを設置…排泄物は空気で吸引

 宇宙飛行は驚異的な体験だが、宇宙船での生活はそれほどロマンチックなものではない。

 宇宙船の生活で最も不便な点として挙げられるのは、排泄の処理だ。半世紀前のアポロ宇宙船の飛行士たちは、専用のトイレなしに、ビニール袋とロートを使って排泄物を処理した。当時の宇宙飛行士たちは米国航空宇宙局(NASA)に、排泄物の処理方式は非常に不快であり、嫌悪感を催すと報告した。

 アルテミス2号には、サイズは小さいとはいえ、ドアと手すりがあるかなり本格的なトイレが設置された。「汎用廃棄物管理システム」(UWMS)という名称のこのトイレは男女共用で、大小便も同時に処理できる。排泄物は空気で吸引され、大便は密封保管し、小便は宇宙空間に廃棄する。宇宙飛行士は飛行初日、トイレの動作に異常が発生し、問題を解決するのに数時間を要したとNASAに報告した。

 出入口の近くにあるフライホイールでは、ローイング、スクワット、デッドリフトなど、さまざまな筋力トレーニングを行える。宇宙飛行士たちは午前と午後のグループに分かれ、2人ずつ運動をする。運動初日の午前のグループは、船長のリード・ワイズマン飛行士と操縦士のビクター・グローバー飛行士、午後のグループは任務スペシャリストのクリスティーナ・コック飛行士とジェレミー・ハンソン飛行士だ。

 座席の下には放射線遮蔽シートがある。飛行中に太陽嵐が強まり、放射線被ばく量が増加することが予測されると、宇宙飛行士たちは遮蔽シートの下に身を隠すことができる。

■決まった時間に1日3食の食事

 宇宙飛行士の最も重要な日常の一つが食事だ。宇宙飛行士は決まった時間に1日3食の食事をとる。

 宇宙飛行士に提供される食品は、主に衛生、栄養、個人の好み、多様性、宇宙空間の環境の5つの観点から選ばれる。宇宙船内部は狭いうえ、冷蔵設備がなく、無重力状態であるため、すべての食品は調理しやすく食べやすいうえ、常温保管が可能で、空中に漂う破片が発生しないものでなければならない。

 アルテミス2号の宇宙飛行士に提供されるメニューは189種類。1960年代に初めて月に行った宇宙飛行士に提供された食品数が50種類ほどだったのに比べると、3倍以上多様化した。宇宙飛行士が試食し、メニューの選別作業に参加した。それぞれの好みを考慮した5種類のチリソースやメープルシロップ、マスタード、イチゴジャム、バター、チョコレートスプレッドなどの調味料もある。

宇宙船に搭載された冷凍乾燥食品のサンプル=NASA提供//ハンギョレ新聞社

■破片が出ないトルティーヤが人気

 食品のタイプは、そのまま食べられるもの、水に浸して食べられるもの、熱処理したもの、殺菌処理したものに分かれる。しかし、生鮮食品はない。国際宇宙ステーションには定期的に生鮮食品が供給されるが、アルテミス2号のような短期のスペースシャトルでは不可能だ。

 NASAは「アルテミス2号に搭載した食品は、賞味期限、食品の安全性、栄養価、乗務員の好み、宇宙船の質量、体積、電力の条件を考慮して選定した」と明らかにした。

 宇宙飛行士たちは好みに応じ、朝食では野菜キッシュにソーセージとコーヒー、昼食ではナッツ類を添えたクスクスやマンゴー、ピーチスムージー、夕食のメニューとしては、ビーフバーベキュー、マカロニ・アンド・チーズ、グリーンピースなどを選べる。NASAは、宇宙飛行士に人気の食品の一つが、パンのように破片が発生するおそれのないトルティーヤだと説明した。アルテミス2号には58個のトルティーヤが搭載されている。1人あたり1日1.5個ずつ食べることが可能な量だ。

食品を温めて食べられるようにするアタッシュケース型の保温機=NASA提供//ハンギョレ新聞社

■飲み物は1日2杯まで

 飲み物は、コーヒーを含む10種ほどから選んで飲めるが、1日2杯までに制限されている。飲み物を収納するスペースが不足しており、液体類は重量もあるため、種類と摂取量を制限した。ただし、飲料水は別だ。コーヒーは43杯が準備されている。10日間の飛行の間、1人あたり毎日1杯ずつ飲める量にあたる。アポロ宇宙船の時代とは違い、簡単な調理が可能だ。冷凍乾燥食品は水に浸して戻して食べることができ、冷たい食品はアタッシュケースのような保温機で温めることができる。ただし、発射日と着陸日には即席食品しか摂取できない。宇宙飛行士1人ごとに2~3日分の食料をまとめて一つの箱に入れ、そのなかから選べるようにしている。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1252493.html韓国語原文入力:2026-04-03 20:47
訳M.S

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