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犬の品種は「外見ではなく用途」で分かれた

登録:2022-12-20 08:18 修正:2022-12-20 09:34
[アニマルピープル] 
160年間に350品種が作られた土台は、古代の犬の10系列 
系列ごとに行動特性が違い、共通の遺伝的変異 
牧羊犬は子連れの母親の本能に類似
犬の品種は数百種類あるが、根本的な差異は外見でなく行動の特性だとする研究結果が公開された=ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 山岳地帯の救助犬として知られるセント・バーナード品種の犬は90キログラムに達する一方、成長しても2キログラムにも満たないチワワがいるなど、350種類の犬の品種はそれぞれ形態が違う。

 しかし、犬の品種の起源は、過去160年間に主に外見を中心になされた育種ではなく、数千年前に様々な用途で犬を活用するために行動特性を選択したためだとする研究結果が公開された。

 米国国立ヒトゲノム研究所のポストドクター研究員のエミリー・ダトロー博士をはじめとする米国の研究者らは、科学ジャーナル「セル(Cell)」最新号に掲載された論文で「犬の多様な行動は、現代の品種形成のはるか以前にすでに形成されていた」とし、「脳の発達に関連した遺伝的変異が、特定の任務に適合した品種に区分されるようになった」と明らかにした。

1880年に出版された生活百科事典に出てくる様々な品種の犬のイラスト=ウィキペディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 共著者である米国国立ヒトゲノム研究所のエレーヌ・オストランダー博士は「人類が成し遂げた最も規模が大きく成功した遺伝子実験は、犬の350種類の品種を創造したこと」だとしたうえで、「人類はヒツジを追いたて、家を守り、狩猟に用いるために犬を育てたが、実は私たちの生存は強く犬に依存していた」と述べた。

 しかし、犬を飼う際には、犬の行動的な特性だけでなく美的・形態的な形質も考慮するため、犬の特定の行動を遺伝的に調べることはかなり難しい。

約4000匹の遺伝子解読による犬の10系列。1嗅覚ハウンド、2ポインターおよびスパニエル、3テリア、4レトリバー、5牧羊犬、6そり犬、7アフリカ・中東犬、8スピッツ、9ディンゴ、10視覚ハウンド=エミリー・ダトローほか(2022)=セル提供//ハンギョレ新聞社

 今回の研究で研究者らは、200種類以上の品種の犬と野良犬、オオカミなど4000匹以上の動物の遺伝子を分析し、犬は根本的に似た任務をするよう改良された10系列に分けられることを明らかにした。これには、ネズミなどを狩猟し殺すために開発されたテリア系列をはじめ、レトリバー、ポインターおよびスパニエル、牧羊犬、嗅覚ハウンド、視覚ハウンド、そり犬、アジアのスピッツなどが含まれる。

 研究者らは「各系列は歴史的に、臭いや視覚で狩猟し、家畜を守ったり追いたてる任務に使われた特定の品種のカテゴリーと一致する」とし、「似た任務に適合した共通の遺伝子があることを示している」と明らかにした。これを調べるために研究者らは「自分の犬の行動に関することに限っては最高の専門家」である犬の飼い主4万6000人が純血種の犬を観察した結果を活用した。

 10系列の犬は、独特の行動傾向を示した。たとえば、牧羊犬とテリア、嗅覚ハウンドは、いずれも騒音や見慣れぬ物体を恐れた。研究者らは、こうした特性はこれらの犬が環境の刺激に非常に鋭敏に反応するよう育てられたためだと明らかにした。

1919年の絵本に出てくる様々なテリア品種。小さく勇ましい犬で害になる動物を捕らえて殺す用途に開発された=ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 害となる動物を捕らえて殺す用途に開発されたテリアは、牧羊犬より追撃し攻撃する性向が明確だったが、訓練性は落ちた。嗅覚ハウンドも訓練性が低かった。これは、獲物を独自に臭いを通じて追跡する性向が強化され、人間が提供する手がかりよりも直感に依存し行動するためだと研究者らは明らかにした。

 研究者らは、品種特有の行動が最も目立つ牧羊犬を集中的に調査した。牧羊犬は攻撃性が低く訓練もうまくいき、本能的に家畜を集める。さらに、おもちゃや子どたちも1カ所に集めようとする。

 研究者らは牧羊犬の脳からニューロンの連結性を高める遺伝的変異を発見した。また、社会的認知と学習された恐怖反応に関連した脳の領域が発達するよう助ける遺伝子が豊富だった。

 興味深いことに、牧羊犬の行動は、子どもが散らばらないよう引き寄せたりするネズミの母親の不安関連の神経経路に似ていた。研究者らは「これを通じて、牧羊犬が与えられたことに高度に集中し、エネルギーを多く必要とすることを理解できる」と明らかにした。

ヒツジの群れの上に乗って群れをまとめるオーストラリアの牧羊犬ケルピー=マーチン・ポット氏、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 研究者らは、10種類の犬の系列は、異なる遺伝子を持つのではなく、特定の遺伝子が発現するよう調節する変異によって、別の行動をとるようになることを明らかにした。幼い時期の脳の発達が最も重要だという話だ。

 ダトロー博士は、国立ヒトゲノム研究所の報道資料で「最も驚くべきことは、主要な犬の系列に現れる遺伝子の変化の相当数が、現生のオオカミにそのまま入っているという事実」だとしたうえで、「人類は、犬の野生の先祖からこのような変異を再利用し、特定の任務に適合した独特の品種の犬を作りだしたのだろう」と述べた。

引用論文: Cell, DOI:10.1016/j.cell.2022.11.003

チョ・ホンソプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/ecology_evolution/1072183.html韓国語原文入力:2022-12-19 23:17
訳M.S

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