彼が日本から飛んで来て、ソウルで繰り広げようとしたパフォーマンスのタイトルは「平和のおじさん」だった。
真っ赤な太陽の周囲に日差しが広がる様子を描いた日本帝国主義の象徴「旭日旗」。この旗を展示場の壁に貼り付け、韓国の観客が青いマジックで旭日旗から連想した単語やメッセージをハングルで書くたびに、会田氏が観客を向かいの椅子に座らせ、書いた内容について対話する。旭日旗の表面にマジックの文字がいっぱいになるまで、観客との対話を続けていくということを意図していた。しかし、パフォーマンスは取りやめに。日本政府につらなる外部による圧力が働いたのだ。
「今回、私はパフォーマンスしません。いや、できなくなりました。それで代わりに説明しようと思います」。
今月25日夕方、ソウル龍山区梨泰院洞(ヨンサング・イテウォンドン)に位置する新しい文化複合スペース「多世代アートサロン」の地下室に設置されたパフォーマンスの舞台に、日本の作家の会田誠氏(54)が立った。日本の成人漫画の典型的な少女のイメージを異形の、あるいは怪物のような姿に変形させる作品により、日本の現代社会の病理を痛烈に告発する芸術作業で、韓日美術界に広く知られる芸術家だ。
会田氏は前日の24日から韓日の50代の芸術家12人が連続で繰り広げる「50/50」パフォーマンスリレーの一部として準備し挫折した「パフォーマンス失敗談」を語った。「50/50」展は2005年に韓日国交正常化40周年を迎え、オルタナティブスペース「ループ」で開かれた「40/40」展に続き、14年ぶりに開かれた韓日芸術家交流展だ。
「主催である韓国のループ側が『とても敏感な案件』と断ってきてから、パフォーマンスを修正しようとも考えた。しかし、むしろできなくなったパフォーマンスについてさらに多くのことを考えるようになり、その経緯についてお客さんに説明した方がよいと気を取り直した」。壁面に投射されたそもそもの旭日旗パフォーマンスの概念図や、自分が考える作家や市民、世界、民族の関係網を整理した図表などは、2カ月前のあいちトリエンナーレの作品撤去問題を思い起こさせた。
「旭日旗パフォーマンスはそもそも、実はあいちトリエンナーレで韓国の民衆美術家の少女像展示が中止されたことで起きた騒動につながっています。全世界の芸術家は民族を超えて仲の良い仲間ですが、一方で民族主義や国家に縛られている人々を真の平和とヒューマニズムに目覚めさせる社会的役割と責任もあると思います。あいちトリエンナーレ事件はそんな使命に目覚めさせてくれたし、同じ脈絡で今回のパフォーマンスを企画したのですが…」。
彼は旭日旗パフォーマンスが取りやめになった事情と当初の構想の背景説明をした後、ビリー・ジョエルの歌『オネスティー』を歌いながら舞台を降りた。主催した「ループ」の企画者ソ・ジンソクさんとヤン・ジユンさんは、「旭日旗は韓国では非常に敏感な政治的素材であり、行事を金銭的に後援した日本国際交流基金が政治的表現を絶対しないという条件をつけたため、取りやめの意見を述べた」と説明した。しかし、昨年までは芸術イベントへの支援に特別な条件をつけなかった日本国際交流基金側が、今回のイベントに圧力をかけるような異例の条件をつけたという点で、パフォーマンス中止は批判を呼びそうだ。
しかし今回の行事は、最近の韓日対立を圧倒する連帯意識と一風変わったコンテンツを披露し、関心を集めた。やはり25日夕方に舞台に上がったチョン・ヨンドゥ氏のパフォーマンス『少女たちの対話』では、韓国の俳優と交換留学生として来た日本の大学生が並んで座り、AI翻訳機を用いてお互いの生活文化、最近の両国の政治・経済的な対立について対話を行った。生活・文化については円滑な通訳が行われたが、敏感な政治的対立については翻訳機が頻繁にエラー。韓国の中堅作家イ・スギョン氏は24日、日本の芸術家、小沢剛氏が持ってきた石に鍍金をした後、布に包んで返すパフォーマンスを繰り広げ、イ・ヨンベク氏は洗濯物パフォーマンスを通して、作品の華やかさの裏にじめじめした芸術家の苦悩と労働があるということを語った。イベントを見て回った弘益大学芸術学科のチョン・ヨンシム教授は、「芸術家が両国の民族的・社会的な懸案について、どのような方法で問題提起しうるのかを示した」と評した。作家たちのパフォーマンスの映像と痕跡は来月24日まで展示される。