原文入力:2010-12-07午後08:17:15(2795字)
停電・断水 寒風の籠城場
空腹で3人 栄養失調 失神
イム・ジソン記者
←現代自動車非正規職労働者らが6日午前、電気と水道が止められた蔚山北区、楊亭洞の現代自動車第1工場2階の籠城場で背を丸くして寝ている。会社が籠城場へ向かうすべての出入口を封鎖し海苔巻き一本で一日を持ちこたえている。 蔚山/イ・ジョンチャン先任記者 rhee@hani.co.kr
三日前、会社側がフォーククレーンを動員し破ってしまった東側窓からは夜通し寒風が吹き込む。占拠籠城23日目の7日明け方、非正規職労働者400人余りは固く強張ったからだを容易には起こすことができないまま夜明けをむかえた。彼らが籠城中の蔚山現代自動車1工場3階は出入りが遮断され、電気と水道まで切られ‘冷たい冬の島’だった。
"元請けですか、下請けですか?" キム・某(28)氏は工場の片すみにビニールをかけて横になり、このうんざりする話を思い起こした。未婚男性である彼が蔚山で女性を紹介される度に受けた質問だ。キム氏は籠城20日目にトイレに行き失神した。しばらくして目覚めた彼に同僚たちは大切にとっておいたチョコパイを一つ食べさせた。巨済島で生まれた彼は造船所非正規職が嫌で蔚山に逃げたが、結局 現代車でも6年7ヶ月を非正規職として働いた。キム氏は「7月22日 ‘現代車社内下請け労働者も2年以上仕事をしたら直接雇用とみるべきだ' という最高裁判決を見て労組に加入した」として「卑怯に見えるかもしれないが、これ以上逃げる所がない」と話した。
籠城場のあちこちで労働者たちは‘非正規職差別’の実体をぶちまけた。差別はコンベヤーベルトが回るように日常的に反復されたと言った。篭城場中央の‘ドア脱着工程’で足掛け6年 仕事をしてきたキム・某(40)氏は「同じライン8人の中で4人が非正規職だが、つらくて危険なことはいつも私たちの役割」 と話した。彼は「扉を外す仕事やプライマーなどの化学物質を車体へ塗布する仕事までする」として「化学薬品の臭いでいつも目がくらみそうだ」 と言った。キム氏は去る7月、手首の軟骨が破裂し手術を受けたが、労災処理も受けられなかったという。
籠城中の彼らにとって孤立と寒さより大きな恐怖は、腹がへるということだ。 7日までに3人が栄養失調で倒れ、100人余りが籠城をあきらめた。食べものを準備する間もなしに籠城が始まったためだ。先月15日、下請け会社の廃業に抗議した同僚非正規職労働者らが集団殴打に遭い連行され、これに抗議する非正規職支会組合員らが作業服姿で1工場3階を奇襲占拠した。工場には装備があるだけだった。一日に一回だけの給食は苦痛な瞬間だ。400人余りの中で唯一人の女性労働者であるキム・ミジン(31)氏が給食を引き受ける。6日午後6時、一日中飢えをこらえた労働者2人に3本の海苔巻きが配られた。「正規職労組が午後3時に届けてくれた海苔巻きだが、その時に食べてしまえば夜中にあまりに腹がへるので、この時間に分ける。海苔巻きはみな冷たくなっていた。」 キム氏が涙ながらに話した。
キム氏にとって‘非正規職’という単語は、彼女と家族を固く締めつける鎖のようなものだった。彼女は蔚山現代車非正規職の両親の下で長女として育った。1998年人文系高等学校に進学し大学に合格したが、外国為替危機の余波で入学をあきらめた。彼女も両親のように現代車2工場で非正規職の人生を始めた。契約職から1年で解雇され、2001年に再び入社した。4年前には非正規職の夫に会い結婚した。
去る6月、共に品質管理の仕事をしていた女性労働者5人が解雇され、彼女にも再び‘雇用不安’が襲ってきた。7月に非正規職支会に加入し、先月には金属労組代議員に選出された。篭城場に踏みとどまっているただ1人の女性であるキム氏は「私がここにいるという理由だけで外にいる女性労働者たちが団結している」として「非正規職の中で女性非正規職はさらに弱者であるだけに、女性非正規職の名を連ねて最後まで戦うだろう」と話した。
だが、現実は容易ではなかった。現在も現代車下請け業者で働く父親に対し会社側は "娘の籠城を止めさせなさい" と圧迫したという。父親は腹立ちまぎれに娘に電話し "お前が初めて恥ずかしい" と怒った。それからしばらくして "申し訳ない" という携帯メールが届いた。一生を非正規職として生きてきた父女は苛酷な越冬をしている。
ストライキが長期化するにつれ籠城場はますます孤立している。会社は工場正門を16ヶのコンテナで遮断した。籠城場である1工場に入れば数百人の正規職管理者らが3階の座込み場へ向かう階段の下にびっしりと立ち監視している。 6日から1階の生産工程の一部が再稼働され、非正規職労働者たちは「非熟練労働者を導入して手作業をしているが、結局 不良がどれほど多くなるか」と言い地団駄を踏んだ。
ところが籠城場は23日目の占拠籠城中だというのが信じられないほどきれいだった。寝床のためにあちこちにボックスとビニールが敷かれているだけで、生産ラインには手を付けなかった。イ・サンス金属労組現代自動車非正規職支会長は「組合員たちが大部分5年以上 現代車で仕事をしてきた人々なのでラインに対する愛着が強い」として「直ちに明日からでも再びラインを動かすことができるほどきれいに維持している」話した。組合員らは組をつくり、トイレ清掃までしている。
籠城場に入れない非正規職支会組合員らは正門前のコンテナ壁の横に20ヶ余りのテントを張っている。テントごとに所属派遣業者の名前が貼られている。テント間ではまだよそよそしい。この間、砂粒のように散らばっていた非正規職労働者たちが初めて集まったのだ。イ・サンス支会長は「互いに異なる業者に所属していて顔もよく知らなかった非正規職たちが共に座り込みできる動力はこの間 差別を受け無視されてきた記憶を共有しているため」と話した。
籠城場で会ったイ・某(38)氏は「2005年から現代車で仕事をしてきたが、いつ家に帰れと言われるか分からない現実が最も恐ろしい」として「下請け会社が廃業すれば新たに営業を始める会社に新入として契約しなければならないのが私たち」と話した。イ氏の背中で‘私は正規職だ’、‘早く終わらせよう’等の希望が書かれたメッセージが工場の壁にたわわにかけられている。
蔚山/イム・ジソン記者 sun21@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/452606.html 訳J.S