韓国の野党「国民の力」のチャン・ドンヒョク代表は、6月3日の統一地方選挙を翌日に控えた2日、記者会見を開き、「在韓米軍を外国軍と呼び、戦時作戦統制権(戦作権)の早期返還を推進して、結局は韓米同盟の解体へと向かうだろう」と述べ、李在明(イ・ジェミョン)政権を攻撃した。戦作権の返還に反対する保守派は、戦作権の返還について「『われわれが我が国の軍隊を指揮すべきだ』という軍事主権の回復という『感情に訴える戦略』で韓米同盟を破壊し、安全保障(体制)を崩している」と主張する。しかし、戦作権の返還の主な目的は「戦争できる軍隊づくり」だ。むしろ「強固な安全保障」を強調する保守派こそが歓迎すべきものだ。
韓国は1994年12月、平時作戦統制権を取り戻した。
しかし、戦時作戦統制権は依然として韓米連合軍司令部にある。
作戦統制権が平時と戦時で分かれるという奇妙な韓国軍の指揮構造が32年間続いていることで、韓国軍は本来軍隊の存在目的である戦争の予防・備えからますます遠ざかっている。軍関係者は「米軍の将校たちが集まると作戦を議論するのに、韓国軍の将校たちが集まると昇進や配置の話題ばかりになるといわれている」「これは、戦争は戦作権を持つ連合軍司令部任せだと考えているからだ」と語った。
軍が戦争を遂行できる本来の姿から遠ざかっているという声は、過去には保守派からもあがっていた。
「強固な韓米同盟は、朝鮮半島の平和維持における最大の功労者だ。だが、韓米連合防衛体制に依存しすぎた結果、戦闘型軍隊というより行政・管理型軍隊の姿になってしまうという副作用が生じたのも事実だ。わが軍が戦闘型軍隊ではなく、管理型軍隊へと変質する可能性に警戒しなければならない」。李明博(イ・ミョンバク)政権時代の2008年4月、当時のイ・サンヒ国防部長官は、全軍主要指揮官会議でこのように述べた。
もし韓国軍の将軍たちが(陸軍・海軍・空軍の)参謀総長になるか、合同参謀議長になるかどちらかを選べと言われたら、十中八九は参謀総長を選ぶだろうというのが、軍内部の事情に詳しい人々の共通した見解だ。
現役軍人のトップである合同参謀議長は、陸・海・空軍および海兵隊の作戦を指揮し、平時の作戦統制権を行使する。合同参謀議長は軍事境界線(休戦ライン)、北方限界線(NLL)など、朝鮮半島のすべての平時作戦を指揮するため、作戦失敗の責任に24時間さらされている。
ところが、朝鮮半島の危機が高まりデフコン(防衛準備態勢)3が発令されると、韓国軍の作戦統制権は連合軍司令部に移る。合同参謀議長は、朝鮮半島が戦争局面に入ると権限が大幅に縮小される。一方、各軍の参謀総長は作戦に対して責任を負うことなく、人事や軍需などの軍政権を握っているため、大きな権限を持つ。軍関係者は「合同参謀議長は、合同参謀本部で勤務する少佐以上の将校や将軍たちに対する人事権もない」とし、「各軍は人事権を握る参謀総長を中心に動いている」と語った。
現在のように軍の関心がすべて人事に集中している状況で、連合軍司令部が戦作権を行使すれば、「生死にかかわる問題」の戦争を委託することになる。
現在の連合軍司令部の作戦指揮体系においては、朝鮮半島の緊張が高まると、戦争状態へと悪化するのを防ぐために危機緩和と戦争抑止に焦点を当てた「連合危機管理」へと切り替わる。連合軍司令官は、危機管理に失敗し北朝鮮の攻撃が差し迫っていると判断した場合、戦争開始時刻(Hアワー)の発令権限を韓米両政府に要請する。これを両国政府が承認すれば、連合軍司令官が特定の時刻を定めてHアワーを発令し、戦争を開始する。
韓国の憲法は大統領に宣戦布告の権限を与えているが、朝鮮半島で戦争が起こる兆候があるか▽いつ朝鮮半島が戦争段階に移行するかについて判断し決定する権限は、事実上連合軍司令官にある。アン・ギュベク国防部長官は先月26日、「第1回未来国防戦略委員会」で、「(韓国は)世界190カ国余りのうち、作戦指揮権を持たない唯一の国」だとし、「米国と同盟を結んでいる36カ国のうち、大韓民国だけが戦作権を保有していない」と述べ、作戦指揮権の返還の必要性を強調した。
戦作権の返還後の指揮構造の中核となる骨組みは単純だ。
現在は連合軍司令官を米軍が、副司令官を韓国軍が務めている。戦作権が返還された後は、連合軍司令部に代わる未来連合軍司令部において、韓国軍が司令官、米軍が副司令官を務めることになる。これは、戦争を委託していた状態から脱却し、「韓国が戦争の決定権を持つ」ことを意味する。
韓国が戦争決定権を行使するには、まず独自の戦争計画能力を備えなければならない。
現在は、連合軍司令官が朝鮮半島の戦区(単一の軍事戦略目標達成のために地上、海上、空中作戦が実施される地理的概念)を想定し、地形を把握し、作戦を構想して連合作戦計画を策定している。
戦作権が返還されれば、韓国が主導して戦争の企画から連合作戦計画の策定と実施、さらには連合訓練の計画と実行までを担うことになり、実戦的な作戦能力と指揮能力が高まる。戦作権の返還は、韓国軍が「戦争できる軍隊」へと向かう近道だ。
イム・ミョンス梨花女子大学特任教授(予備役海軍大佐)は、「戦作権の移管は韓米同盟を弱体化させるものではなく、すでに十分な能力を備えた韓国軍が米国と共に安全保障の責任を分担する、同盟の現代化の出発点だ。今や残されているのは能力の問題ではなく、意志の問題だ」と語った。