「世界本部から提出された資料にないのなら、おそらく韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁の秘密資金から出た資金だろう」
尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領側と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の癒着疑惑を捜査しているミン・ジュンギ特別検察官(特検)チームが、旧統一教会のユン・ヨンホ元世界本部長の側近と面談調査をして作成した捜査報告書の一部だ。ある旧統一教会上層部の関係者は「(韓総裁の)自室の金庫に保管された現金は、300億ウォン(約32億円)ほどが常時置かれていたという」と述べた。
この金庫から資金が出し入れされることを知っている人物は、教団の最上位層にいる旧統一教会の韓鶴子総裁、チョン・ウォンジュ前総裁秘書室長、ユン元本部長、金庫の管理人であるK氏など、ごく限られており、「金庫事情」は極秘情報だとみなされている。この金庫の管理人は、資金の用途を帳簿に手書きで記録していると言われている。K氏は17日に旧統一教会の政界ロビー疑惑を捜査中の警察庁国家捜査本部の特別専担捜査チームに参考人として出頭し、調査を受けた。警察はK氏に対して、個人の金庫から発見された280億ウォン(約30億円)という現金束の流れを調べる一方、財政などを総括する世界本部の会計資料と韓総裁に報告される各種文書およびスケジュールを細かく確認している。
警察は16日、韓総裁の自室がある天正宮と、ソウル市龍山区(ヨンサング)の韓国本部(ソウル本部)の事務室などを家宅捜索した。7月に特検チームは尹錫悦前大統領夫人のキム・ゴンヒ女史と保守系野党「国民の力」のクォン・ソンドン議員の金品授受疑惑を念頭に家宅捜索を行ったが、最近になって「国民の力」はもちろん、与党「共に民主党」の議員に対する金品ロビー疑惑まで拡大しており、旧統一教会の資金の流れ全般を探るためのものとみられる。
旧統一教会が数千万ウォンの金品を渡した政界関係者として名指しされたチョン・ジェス前海水部長官とイム・ジョンソン元議員、大韓石炭公社のキム・ギュファン社長が天正宮を訪問し数千万ウォンを受け取った疑惑を解明するためには、まず彼らの訪問したかどうかを調べる必要がある。
ユン元本部長は、普段から自身のスケジュールを手帳に詳細に記録して管理していたという。2014~2019年ごろの総裁秘書室事務総長在任時には、韓総裁に特別報告を行うチョン元室長のそばで業務を管理しながら随行し、2020年から世界本部長に就任してからは、韓総裁に直に特別報告を行った。特別報告は、地区別(地域別)のイベントや招待などの特記事項だけでなく、外国支部から上がってきた報告などを総合したものだ。特検チームは以前、ユン元本部長の手帳と特別報告書などを押収したが、警察も特検チームから関連資料を受け取り、追加で天正宮などに比較分析が可能な文書があるかどうかを調査するものとみられる。
また、「布教活動費」名目の資金が違法な政治資金に転用された状況があるかを把握するためには、会計データの解析作業も必須だ。これに先立ち、ユン元本部長がキム・ゴンヒ女史に手渡したシャネルのバッグとグラフのネックレスは、個人資金で購入した後、世界本部財政局に「布教活動費」として請求し、出所を隠した。
旧統一教会の内外では、布教という名目で旧統一教会の上層部や外部の人物(政治家ら)に高価な贈答品が上納されているという話が広がっている。ある旧統一教会関係者は、ユン元本部長の裁判で「信者が納めたお金なのに、デパートに行って上層部の人間がブランド品を買うのをみて、憤慨せざるを得なかった」と告白した。
ユン元本部長が「国民の力」のクォン・ソンドン議員に渡した1億ウォン(約1100万円)の出所についても議論があったが、韓総裁側は、ユン元本部長が別途秘密資金を持っており、クォン議員に与え、財政局から用途を隠して補てんを受けたという疑惑を主張した。こうした点からすると、過去に世界本部の会計資料から出所と用途が不透明な「黒い金」の流れを追う手がかりが出てくる可能性がある。
旧統一教会韓国本部の関連団体である天宙平和連合(UPF)も捜査の核となる。ソウル市龍山区(ヨンサング)に事務室がある同団体は、主に政治家や外部の要人を管理する役割を担っているとされる。天宙平和連合は、民間の肩書である「平和大使」を任命するが、これは、旧統一教会が政界など社会の各分野の影響力を持つ人物たちとの関係網を築くための中心的な窓口として活用されてきた。これに先立ち、特検チームも、旧統一教会による「国民の力」に対する大統領選資金支援と党員加入疑惑をめぐり、天宙平和連合の各支部の事務室を家宅捜索した。
ある旧統一教会の内部関係者は「選挙の時期になると、地域に出馬したいわゆる『平和大使』の家族を管理し、少しずつ『寸志』を与えることが非公式に行われてきた」とほのめかした。ユン元本部長は一時、天宙平和連合を直接管理し、「韓半島平和サミット」などのイベントを進めてきた。天宙平和連合のイ・ヒョニョン韓国会長との録音記録で明らかになったように、これらのイベントは政治家たちを招待して管理する窓口になってきた。
警察は旧統一教会などに対する家宅捜索で確保した押収物の分析と同時に、中心的な被疑者と参考人を幅広く呼んで取り調べる方針だ。旧統一教会の内外では、「国民の力」と「共に民主党」側をそれぞれ担当して管理してきた人物が、主な捜査対象として挙げられているとされる。各地域の教会を担当する教区長だけでなく、天宙平和連合の支部長を務めた人物も参考人調査は避けられない。