北朝鮮は22日、東海(トンヘ)上に短距離弾道ミサイルを発射した。慶州(キョンジュ)アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議(10月31日〜11月1日)の開幕を9日後に控えてのことだ。慶州に集結する米日首脳に向けた「計算された行動」と言える。
韓国合同参謀本部はこの日、「午前8時10分ごろ、黄海北道中和(チュンファ)一帯から東北方向に短距離弾道ミサイルの数発を発射したことを把握した」とし、「北朝鮮のミサイルは約350キロメートルを飛行した」と述べた。今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射で注目されるのは「発射の時期」。北朝鮮は今年上半期だけで4回弾道ミサイルを発射したが、李在明(イ・ジェミョン)政権が発足(6月4日)してからは、8月23日に地対空ミサイルの発射実験を行っただけで、弾道ミサイルは発射しなかった。ところが、北朝鮮が今回、「APEC首脳会議開幕9日前」という時期を選んで弾道ミサイルを発射したのは、慶州で開かれる韓中首脳会談と韓米首脳会談など大型政治イベントに向け「存在感を誇示」した側面が強い。
弾道ミサイルの射程距離が短いことからも、北朝鮮の思惑がうかがえる。北朝鮮が米国本土まで脅かす大陸間弾道ミサイル(ICBM・飛行距離5500キロメートル以上)など中・長距離弾道ミサイルの代わりに、飛行距離350キロメートルの短距離ミサイルを発射したのは、米国を刺激しないためとみられる。朝鮮半島情勢に大きな影響を及ぼす大陸間弾道ミサイルの発射は、2024年10月31日の火星砲19型の発射実験を最後に行われていない。北朝鮮は今年1月のドナルド・トランプ大統領就任以降、これまで4回弾道ミサイルを発射したが、いずれも飛行距離が1000キロメートル以下の短距離ミサイルだ。
発射場所と飛行方向も目を引く。これまで北朝鮮は、大半のミサイルを西部地域では西海(ソヘ)上に、東部では東海に向けて発射してきた。機体に問題が生じて墜落しても、民間の被害がなく、視野を遮る障害物がないため、飛行軌跡を観測しやすいからだ。しかし、今回ミサイルが発射されたのは、平壌(ピョンヤン)の下の黄海北道中和郡で、内陸を貫通して東北方向に飛行した後、東海(トンヘ)に落ちた。内陸飛行の危険を冒したのは、ミサイルの正確度を示すためとみられる。
韓国大統領室は緊急安保状況点検会議を開いた。大統領室は北朝鮮のミサイル発射後、報道資料を出し、「国家安保室は発射状況をリアルタイムで把握し、関連状況を大統領に報告して状況を注視してきた」とし、「特に緊急安保状況点検会議を通じて安保室と国防部および軍の対応状況を確認し、朝鮮半島状況に及ぼす影響を分析した」と述べた。
この日、大統領室の報道資料には「挑発」や「糾弾」のような言葉は見当たらなかった。合同参謀本部のメディア向け公示には「挑発」という言葉だけが登場した。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権時代、北朝鮮の弾道ミサイル発射と関連した大統領室報道資料には「朝鮮半島の平和と安定を深刻に脅かす明白な挑発行為であり、強く糾弾する」という表現が繰り返し使われた。