カンボジアから送還されるやいなや拘束の岐路に立たされた韓国人被疑者58人は、カンボジア現地で株式リーディングルーム、ロマンス詐欺など各種犯罪を犯した疑いが持たれている。彼らが「監禁など強要により犯罪に巻き込まれた」と主張する可能性が高いだけに、このような主張が「客観的証拠」と合致するかが今後の捜査のカギとなる。
18日にカンボジアから韓国に送還された被疑者らは、関連の詐欺事件を集中的に捜査してきた忠清南道警察庁、京畿北部警察庁などに押送され取り調べを受けている。警察は7〜9月、カンボジアで現地警察の取り締まりにより捕まった人々の名簿を(現地警察から)通知された。ただ、彼らの身柄を確保できず、韓国内の被害者を対象に制限的な調査のみ行った。警察関係者は20日、「今回の送還で現地犯罪組織の被疑者の身柄を確保したため、捜査に弾みがつくと期待している」と述べた。
彼らはカンボジアの「ウェンチ」(園区:犯罪団地)と各種不法フィッシングコールセンターで、ロマンス詐欺、リーディングルーム、ノーショー詐欺、ボイスフィッシングなど典型的なフィッシング詐欺を犯した容疑が持たれている。リーディング投資詐欺は「高収益保障」を広告する捏造されたサイトに加入するよう勧誘した後、投資金を振り込ませる金融詐欺。ロマンス詐欺は被害者と恋人のような親密な関係を形成し、金銭の貸与や投資を名目に金を横取りする。「ノーショー詐欺」は飲食店に予約を口実に高価な食べ物・酒類を購入するよう誘導した後、姿を消す新たな犯罪で、昨年からカンボジアを拠点とした犯罪組織が流行させ近隣国家にまで広がった。カンボジアの犯罪組織で働く韓国人たちは、この過程で主に中国人総責任者の指揮を受け、組織員を募集し、犯罪に使う他人名義の口座開設を担当する。作られた台本を基に振り込みを誘導する虚偽の電話相談員の役割も果たす。
捜査・裁判過程で被疑者が「監禁・暴行・脅迫でやむを得ず加担した」という論理を前面に出す可能性もある。警察は「調査過程で3、4人の被疑者が詐欺団の組織員から監禁や暴行などを受けたという陳述を確保し、事実関係を確認している」と述べた。この日、大田地裁洪城支院で拘束前被疑者尋問(令状実質審査)に出席したある被疑者は記者団に「電気拷問を受けた」、「殴られた」、「本当に死ぬかと思った」と主張した。
結局、犯行過程での「自発性」と「積極性」が彼らの容疑の認定と刑量まで分けるものとみられる。裁判所は被疑者が監禁・脅迫を主張しても、自由意志により犯罪組織から抜け出せる状況だったかどうかという「客観的根拠」を綿密に調べた後、量刑を決めてきた。特に「犯行の意志」が確実な場合には強圧的な環境にいても比較的重刑が宣告されてきた。今年1月、大田地裁は犯罪団地の組織員だったA氏が「パスポートを奪われ、外出が自由ではなかったという点」を認めつつも、韓国に帰国した後、再びカンボジアに戻り、他の韓国人も組織に引き入れた点などを根拠に、懲役6年を言い渡した。ソウル東部地裁も4月、リーディング詐欺組織員に対し、「自発的に出国し、暴行・脅迫に遭ったという客観的資料が見当たらない」として、懲役4年を言い渡した。
法務法人「オンガン」のイ・ゴウン代表弁護士は「継続的な虐待の痕跡があったり、犯罪組織から抜け出すために努力した具体的物証などが提示されない限り、送還された人たちも処罰される可能性が非常に高い」と語った。